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March 22, 2021

在庫情報を可視化すれば、商品チーム、販売チームが自走組織に変わる

Ministry-of-supply-pos何度かオンラインセミナーに登壇させていただいている、在庫問題を解決するクラウドサービスを提供する「フルカイテン」さんのシステム導入事例セミナーを視聴させていただく機会がありました。

3月11日のその回は通販大手フェリシモグループでhaco!を運営する株式会社cd.社の葛西社長が
同社のシステムを導入して半年で会社の在庫への取り組み姿勢がどう何か変わったのかを語る内容でした。

システム導入前までは、担当者が商品の売上・在庫判定データをExcelで加工するのに
朝から夕方まで、ほぼ丸1日かけていた作業が・・・

導入後は、データ出力が1時間程度でできるようになり、営業時間の多くが、資料の作成業務ではなく、判断とアクションを中心に時間が割けるようになった、という話から始まりました。

帳票づくりに半日以上かけている企業さんって結構あると思います。

同社によれば、
以前は当シーズンに仕入れた商品在庫こそ見ていたものの、

前シーズン以前に仕入れて売れ残った在庫は、わざわざ出力努力をしなければ、見ることができず、いわゆる塩漬けになっていたそうです。

これに対して、全在庫データが稼働状況に応じて分類された上で、販売と在庫に関わっている担当者たちに見えるようになって、
何が変わったか?というと・・・

「奥にしまってあったものが手前に出て来た」イメージで

そうすると、担当者たちに、何とかこれも販売できないか、在庫を減らせないか、という気持ちが芽生え始め、

今シーズンでも十分に着ることができる旧在庫商品を積極的にコーディネート提案に使うようになったり、

また、そんな思いと活動が、お客様への商品出荷を担っている倉庫で働く方々にも伝わり、

倉庫スタッフの発案で、倉庫発信で売れ残り在庫を売り切るためのユーザー向けライブコマース(オンラインの即売会)が開催されるようになったとのことです。

その結果、会社としては、仕入れを減らした年であったにもかかわらず・・・売上は減らず、在庫がみるみる減って行ったそうです。

今では、仕入担当者の在庫に対する意識が高まり・・・

毎年、売り逃しをしないように、ただ、たくさん仕入れるという考えたではなく、
必要な仕入れのありかたを考えるようになった。

とのことです。

haco!の葛西社長はシステムを導入すれば問題が解決する、という話ではなく、

●システムには面倒な計算をしておいてもらって、
●人がそのデータを活用してどんな判断をするか?

の役割分担だ、と話を結びます。

そして、在庫を売り切って、増えた現預金を今後、何に投じるか?に触れ、

経営陣の頭は損益計算書(P/L)から貸借対照表(B/S)に移り・・・

お客様のための場をつくり、場を改善するためのシステム投資(無形固定資産)に使いたい、と意気込んでおられるようです。

これからの時代、在庫をしっかりキャッシュに換え、システム投資を行う企業が増えることを期待しています。

実際、多くの世界の大手ファッション流通企業のB/Sを分析していると、そういうビジネストレンドが起きていることに気づきます。

見えないものは、行動に移せない。

状況が手に取るように可視化すれば、現場は工夫を始め、現状の改善が進み始めるもの。

というのは、筆者も多くの現場でビフォア/アフターを体感してきたことです。

少し、筆者の昔話をさせて頂くと・・・

筆者のアパレル小売業でのキャリアの始まりは、服飾雑貨や靴を扱う雑貨バイヤーでしたが、

着任当初は、いきなり、前任者が残した靴の過剰在庫に苦しめられ、新規仕入を全くすることができない「買えないバイヤー」の苦労から始まりました。

そんな状況の中で、週末には全店を巡回して、実際に自ら販売をしながら各店の在庫状況を確認し、

時間をかけて、各店から全店の全商品のサイズ別在庫状況が確認できるようにデータの整備を行ったところ・・・

その後は、各店のスタッフたちがお取り寄せ(客注)を活発化させ、在庫が売上に変わり、過剰在庫がみるみる減り始めたものでした。

要は、各店は在庫を減らすことに協力してくれなかったのではなく、

お客様は欲しがっていても、在庫がどこにどれだけあるかが、わからないため、やみくもに在庫照会の電話をかける訳にもいかず、取り寄せ販売ができなかっただけだったのです。

そんな過去の経験も思い出しながら、haco!さんの事例を聴いていました。

会社の在庫のことを心配しない従業員はいないでしょう。

そして、在庫量やその在処(ありか)が手軽にわかるような環境に置かれれば・・・

社員の中から、考え始め、行動に移すスタッフが出て来るものです。

これは、筆者のその後の事業会社勤務時代でも、また、

独立後に、お手伝いさせていただいた多くのコンサル現場でも・・・

在庫状況の実態の現場担当者への可視化が、変革のきっかけになることを感じて来たものでした。

これから、更に、オムニチャネル時代になって・・・

ECだけでなく、店舗、倉庫を含め、全在庫のデータが可視化され、
在庫のステイタスが、販売チーム全員に手に取るようにわかるようになると・・・

まずは、チーム全員がお客様のお買い物を手伝う情報として在庫情報を活用し始め、続いて過剰在庫の消化方法も考え始める。

オムニチャネル化(販売と在庫のデジタルシフト)の本当のメリットは、

ECという新しい販路ではなく、そんな環境が構築されることではないでしょうか?

業界全体がそんな方法に向かってゆくビジョンを持ち、そんな環境づくりが行われることを、引き続き応援して行きたいと思います。

参考:今回触れさせて頂いた、フルカイテンさんとhaco!さんのオンラインセミナーの内容は、レポートとして、こちらからダウンロードしてお読みいただけます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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