デザイナーズコラボの取り組み精度が高まった、ユニクロ+J(プラスジェー)成功の舞台裏
5月17日の日経MJ紙面にファーストリテイリングのユニクロの外部デザイナーとのコラボの立役者 勝田R&D統括責任者インタビュー記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。
ジル・サンダーさんとの+J(プラスジェー)を筆頭に、クリストファー・ルメールとのUNIQLO U(ユー)など、ここ数年は、こういったプロジェクトが、実にうまくユニクロのイメージアップ、ステージアップに貢献しているなと思っています。
記事の中から、気になった箇所を少し、引用、紹介させていただきますね。
まず、勝田氏は、今回の+Jの取り組みを
09年から11年の1回目の取り組みと比べ
「より良いものを分かりやすく」
「チョイスが増えるとお客様が迷ってしまうので」
「(ジルさんの抵抗と闘いながら?かなり)商品を絞り込んだ」
とのこと。
「今回は絞ってメッセージ性を明確にしたことが
ビジネス的に成功した結構大きな要因だと思います。」
と全体を振り返っておられます。
これは、筆者の印象ですが、
09年~11年のころは・・・
+J(プラスジェー)に限らず、他の東京コレクションのデザイナーさんたちとの取り組みもそうでしたが、
それまでデザイナーコラボの連発で世界的に成果を上げていたH&Mに負けじ、と
後追いみたいに焦ってやっている感じがして・・・
デザイナーとの付き合い方が、
定まっていなかった、活かせていなかった、もったいない、
と思うことも少なくありませんでした。
当時の+Jは、
当然、オリジナルのジルサンダーのラインよりは価格は安かったのですが、
(セレクトショップのセカンドライン並み)
ユニクロよりも高い価格帯であり、
「わかる人には、わかる」域を超えておらず、
なおかつ、その割に、作り過ぎていたため、
計画通りに売れずに、過剰在庫を抱えてしまい、
販売間もなく、値下げとなり・・・
実にもったいないな、と値下げされた店頭在庫の山を眺めていたものでした。
今回は、その時のその反省も活かし、
商品を絞って、
オンライン販売と一部店舗限定販売にして、
無理に作り過ぎなかったのが
よかったのでしょうね。
また、10年前とも環境が全く違います。
ユニクロのブランドステージは高まり、
SNS時代にもなったことで、
発売までのストーリーづくりも伝え方も上手く、功を奏し、
また、期待するファンがSNSで盛り上げてくれたのも大きいでしょう。
発売と同時に、ほとんどの商品が値下げをせずに即完売だったようです。
やはり、ファッションビジネスは、何ごとも、適量、腹八分目以下の方が
お後がよろしいようで、ということですね (笑)
記事では、マーケティングや販売の側面だけでなく、
「一流のデザイナーたちとの協業の中で当社の人材も彼らと直接ガチで仕事をしてきました。これは財産です。知識としても能力としても、個人としても組織としても力が蓄えられました。」
と、ものづくりをする現場でも、デザイナーたちから、多くを得たとおっしゃっています。
確かに、プロジェクトにかかわった方々の、それぞれのデザイナーからの学び体験は、
今後のユニクロのレギュラーラインのプロダクトの質の向上にもつながって行く、貴重な未来への投資の役割も果たしていたに違いありません。
最後に、
勝田氏が一流デザイナーと交渉する時の口説き文句が紹介されていたので
引用させていただきます。
「あなたがやっているものの安物バージョンは死んでもやらんよ」
「あなたの才能をユニクロというインフラで発揮して欲しい」
と創造意欲に訴えかけるようにしている。
とのこと。
それだけ、ユニクロという「インフラ」が、グローバルでも説得力をもつようになった、自信あふれる言葉ですね。
今回の+Jの成功もきっと、これから取り組みを行おうとするデザイナーたちに対して、説得力を高めることにつながるでしょう。
今後も、ユニクロには、双方のステージアップにつながるデザイナーコラボを楽しみにしています。
ちょっと蛇足的な話ですが・・・
ファッションビジネスの「適量」在庫の話をすると、
筆者の在庫コントロールセミナーに参加された方に
「売れ筋商品と死に筋商品の違いは何ですか?」
という質問をさせて頂くことがあるのですが・・・
答えは、多くの方々がお答になる、
たくさん売れている商品が売れ筋で、あまり売れない商品が死に筋
ではありません。
期末に残った在庫を見て、反省すればよくわかりますが、
答えは、
どんなに数がよく売れる商品、売上ランキング上位の商品でも・・・
販売力を超えて、つくり過ぎて、大量値下げをせざるを得なくなり、損をもたらす過剰在庫分は
死に筋商品です、とお答えすることにしています。
さまざまな制約のあるアパレルビジネスでは、適量管理を肝に銘じたいところです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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