「経費」を、粗利を稼ぐための「投資」に置き換えて考える、「分配率」という指標のススメ
WWDJAPAN本紙に毎月1回連載させて頂いている
ファッション流通企業の決算書の読み解き方をテーマにした「ファッション業界のミカタ」
おかげさまで、連載スタートから3年目に入り、昨年、今年と関連オンラインセミナーにも登壇させて頂いております。
この度、筆者が業界企業の決算関連書類を読むようになったきっかけや、実際に決算書を読む上で、大切にしているポイントをWWDJAPANの記者の方に以下のインタビュー記事にして頂きました。
実は、これは、「店舗視察の着眼点」にも共通していることなのですが、
まずは、自社やクライアント企業などで「解決したい課題」が特定されていること
次に、その課題解決にあたって、うまくやっていると思われる企業はいったい、どんなアプローチをしているのか、関心と好奇心を持つこと
そして、そんな問題意識をもって、実際にその部分を集中的に見に行くかどうか
で収穫は全く違ったものになって来るものです。
つまり、「自分ごと」にして、アンテナを立てて見るとことで、情報収集力、吸収力は格段に増すという話です。
さもなければ、
決算書であれば、
増収増益、すごいね!とか
店舗視察であれば、
入店客数がどうだったとか、どんな商品を打ち出しているのか?とか、スタッフの接客アプローチがよかったとか、悪かったとか、・・・
せっかく時間をかけても、表面的なことしか見えて来ず、もったいない話です。
一方、自社の課題に基づく、何かを解決したいという「問題意識」さえあれば、
小難しい数字の羅列のような公開企業の決算書の中からも、課題解決のヒントにつながる糸口が見つかるもの。
ズバリは掲載されていない数値も、掲載されている数値から独自に計算した数字に置き換えれば、見えて来る情報がたくさんあることにも気づきます。
さて、前置きが長くなりましたが、今回のテーマは、「経費」を「投資」に置き換えて考えるための数字の見方、発想転換の話です。
このインタビュー記事の中でも触れていますが・・・
筆者は、小売業勤務時代、
自分にかかる人件費の3倍以上の粗利額を稼ぐように、
と教えられました。
これは、労働分配率という発想から来るもので、
当時の勤務先の
人件費÷粗利額=労働分配率が33%くらいだったので、
固定費である人件費の3倍の粗利を稼いで、会社の粗利額予算トントン、
それ以上稼げば、会社の営業利益は増えるし、
その33%の分配率の範囲であれば、増益分をボーナスの原資にしても、会社の営業利益も目標以上に残すことができるため・・・会社と従業員の利害が一致するという発想からでした。
実は、同じことが販売管理費の他の費用にも当てはまると思っています。
一般的に、販売管理費、つまり、人件費、家賃、物流費、広告宣伝費、外注委託費などは、「経費」として見なされ、必要経費ながら、経費は少ない方がよい、その方が利益が増えると、抑えられがちなものでした。
管理部門が、ムダな経費を見つけて、削減する分には歓迎ですが、とにかく削れるものに目を光らせて、経費を減らすことが自分たちの仕事、目的になってしまっていたら、始末が悪いです。
企業によっては、売上に対して経費率をいかに下げるか?がその部署の評価基準の場合もありますからね(汗)。
怖いのは、利益低迷が、値下げによる薄利多売が原因なのに、
利益を増やすために良かれと、ある経費を無理に押さえたり、下げようとして・・・
ますます、粗利が取れなくなる悪循環です。(特に人件費はモチベーションに影響します)
これに対して、
販売管理費の各項目を粗利高を分母にして考える、
労働分配率(人件費÷粗利高)
販促分配率(広告宣伝費÷粗利高)
不動産分配率(地代家賃÷粗利高) など
分配率(費用の粗利高対比)という数字があります。
分配率で考えると、より粗利額にフォーカスした発想ができるようになります。
予算設定に基づく、分配率をキープすることを前提に、
粗利の増減に対して、費用を調整できるとしたら、
もっと粗利額を稼げるチャンスがあるなら、費用を使って、それ以上の粗利額を取りに行こう、という前向きな発想も出て来ます。
その時点から、費用は予算額内で使うもの、減した方がよいもの、という「経費」的な発想から、
粗利を増やすのに使う「投資」、およびどれだけ回収できるか?という「投資回収」的な発想に変わって来ます。
近年であれば、ECの売り上げが増えている折、
物流費に対する考え方がこれに当たると思っています。
以前は、物流関連費はコストセンターとして考えられ、減らせるものは減らそうと、物流担当者は、コストカッター的に動くケースが多かったようですが・・・
今や、EC事業の販売管理費の最も大きなウエイトを占める項目のひとつである物流費は、今後、戦略的に考えるために、分配率という観点から見るべきではないか、と考えます。
つまり、チャンスを逃さずにモノを備蓄したり、タイムリーに動かすことによって、多くの粗利額が稼げるなら、物流費は抑えるべき経費ではなく、戦略的、積極的に使う、投資すべき費用に換わると。
だから、これからは、筆者の造語ですが、「物流分配率」という、新しい視点も必要なのではないでしょうか。
そもそも、社員全員が、それぞれが受け持つ費用を認識して、有効に使うことで、予算通り、あるいはそれ以上の粗利を稼ぎ、営業利益を増やす=投資回収することが、各人の明確なミッションとなれば、
「経費」が「投資」という発想に換わり、全員参加の経営に向かえるはず。
それを可能にするのが、粗利を分母にした「分配率」という視点であり、その前向きな運用です。
分配率は、古くから存在する経営効率指標ではありますが、
売上至上主義から、生産性向上がテーマの昨今、あらためて見直されるべき、販売管理費の管理指標であると信じています。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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