パタゴニアのWORN WEAR(ウォーンウエア)プロジェクトに見る、今後「ブランド」が取り組むべき自社販売商品の循環とライフサイクル管理
8月30日の日経MJにパタゴニア日本支社が渋谷店1階で8月20日~9月26日に期間限定で行っているWORN WEAR(ウォーンウエア)のポップアップストアに関する記事が掲載されていました。
このプロジェクトは、顧客が購入したパタゴニア製品を長く大切に着てもらうために、リペアを行ったり、着なくなった服を買い取って、リペアした上で古着として販売することで製品寿命を延ばす試みで、アメリカでは何年か前から始まっていました。
右の画像は2018年夏にアメリカ カリフォルニア州サンタモニカのパタゴニアのお店で見かけたWORN WEARのカウンターです。
リペア(修理)については以前も日本でもやっていましたが(期間限定だった?)、今回は、日本でも本国同様に本格的に取り組むにあたり、まずは、古物商の認可を取り、アメリカ本社から仕入れた古着の販売から始めているようです。
但し、古着の買い上げ点数2点までの制限ありというのは同社らしい。「必要ないものは、買わないで。」というのが同社のポリシーですから。
日本ではまだ買取は行っていないようですが、アメリカのサイトに同社が顧客から着なくなったパタゴニア製品を買い取る時に渡すクレジット(パタゴニアの新品、古着を購入する時に使えるクーポンのようなもの)の価格リストが出ていました。
アイテムによって、10ドル~100ドル アイテムの元の単価や耐久性によって分類されているようです。ちなみにおなじみのシンチラフリースは20ドル、レトロフリースジャケットは40ドルが買取価格(付与するクレジット)のようですね。
日本支社の社長さんによれば、パタゴニアの新品の中心顧客は40代、古着を販売することで、20代から馴染んでもらえれば、長いお付き合いができるのでは、と期待をされているようです。
新品をつくって、売るだけではなく、
新品販売+リペア(修理)+自らメンテした古着販売で企業収益と顧客の関係性をつくるのが同社の目標。
今後、ファッションブランドは、そのブランドらしく、そういった取り組みを拡げて行く時代だと思っています。
そんな切り込み隊長であるパタゴニアの、今回インタビューを受けられた日本支社社長さんも
アパレル業界の中で、そんな流れをつくるきっかけになれば、と期待をしているようですね。
ファッションではありませんが、先行事例があります。
それは自動車業界。
外車ブランドには、中古車は自分たちで買い取り、自ら、車種にふさわしいメンテナンスをして、
中古車販売まで、流通全般を自ら手掛けているところがいくつもあります。
そして、中古車を購入した顧客には、新車を購入した人と同じ●●か月点検みたいな、メンテナンスプログラムに合流してもらい、新車販売店を窓口にして対応する。
一度生み出したプロダクトには、まだ走る、動く、使える、製品寿命があるうちは責任をもってメンテナンスするメーカーの責任。
そして、ユーザー側も、中古で安く買ったにもにも関わらず、メーカーが十分なメンテナンスを施し・・・
新品を買ったのと同じように、利用年数に応じたユーザーサービスを提供してくれるブランドクオリティの体験をすれば・・・
顧客はいずれは、乗り換える時に、またそのブランドを選ぶ、中古じゃなくて、新車を選ぶ、なんてことも十分考えられる、
ある意味生涯のお付き合いを前提とした、そんな取り組みが素敵だと思います。
ファッション業界の話に戻って、
ブランドバッグも、ラグジュアリー・ハイブランドと呼ばれるブランドも、顧客と一生付き合って行く覚悟のある、あるいは志のあるファッション「ブランド」は、そんな外車のような顧客との付き合い方ってありだよね、って思います。
2019年に出版した「アパレル・サバイバル」の結論部分では、同様の持論も披露させていただきました。
パタゴニアの「ウォーン・ウエア」プロジェクトが日本のファッションブランドにどんな波及効果をもたらすか?
ブランド自らは重い腰をなかなか持ち上げられない、と考えているうちに、若い消費者がそんなブランドの背中を押すのではないでしょうか?
楽しみに見守って行きたいと思います。
関連エントリーー着なくなった衣服の廃棄を減らすためにできること~環境省の「ファッションと環境」レポートから
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
【オススメ本】 これから10年先のファッション消費の未来のカギになるのは、顧客のクローゼットのワードローブ。つくって売るだけではなく、その循環にどうかかわることができるか、がサバイバルのカギです。
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