経済産業省2020年度 EC市場調査報告書とこれからのファッション専門店の構造改革
経済産業省が7月31日にリリースした電子商取引に関する市場調査報告書に目を通しました。
毎年の業界の市場規模やEC化率を知る上で参考にしています。
これによると、物販系分野BtoC-EC市場全体は
12兆2333億円 前年比 121.7% で市場のEC化率は8.08%(前年が6.76%)になったようです。
気になる衣類・服飾雑貨カテゴリーは
2兆2203億円 前年比 116.2% で市場のEC化率は19.44%(前年が13.87%)
伸び率は全物販市場に比べて下回りますが、
物販EC市場の中の金額規模では家電に次ぐ2番目に大きな規模になります。
EC化率も
書籍・ソフト(42.97%)
家電(37.45%)
生活雑貨インテリア(26.03%)に次ぐ
4番目(19.44%)にEC化率が高いマーケットです。
資料の金額、EC化率、前年比から実店舗、ECを合算した業界市場規模や
実店舗だけの前年比が計算できるので、実際に算出してみると・・・
物販BtoC市場全体は
151兆4022億円 前年比101.8%と伸びており、
実店舗物販だけとっても100.4%とコロナ禍でも物販消費は横ばいだったことがわかります。
カテゴリー別に見ると
食品、家電、化粧品・医薬品、生活雑貨・インテリア、自動車関連
は実店舗、EC共に市場規模(消費)が増えており、
衣類・服飾雑貨、書籍・ソフトのふたつのカテゴリーが
実店舗の落ち込みをECでカバーできなかったカテゴリーになります。
前年比(2020vs2019)
実店舗 EC 合計
衣類・服飾雑貨 77.6% 116.2% 82.9%
書籍・ソフト 86.0% 124.8% 99.2%
ということで、衣類、服飾雑貨が最もコロナ禍の影響を受けた物販カテゴリーのひとつであることが、
表されています。
さて、こんな数字を見て業界各社はどう考えるのか?
〇 売上が2019年度の8掛けでも儲かるしくみをつくるのか?
それとも
〇 こんな環境でも伸びている上記カテゴリーの品揃えを行ってカバーするのか?
実際、コロナ禍で堅調だったと言われるユニクロやしまむらですら
アパレルの落ち込みをグッズ・その他やインテリアなどでカバーしているのが実態です。
ちなみに衣類・服飾雑貨の市場規模の年間のマイナス分は
食品、飲料、酒類以外の
・生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等
・書籍、映像・音楽ソフト
・化粧品、医薬品
・生活雑貨、家具、インテリア
・自動車、自動二輪車、パーツ等
すべての年間増額分を合算してもカバーできません。
唯一、衣料・服飾雑貨の減額分をカバーできるのは・・・
食品、飲料、酒類の年額増額分だけです。
緊急事態宣言が延長される日本において、
ファッション専門店の抜本的な損益構造改革が求められています。
ちなみに右上の画像は、事業ドメインシフトを果たしたLブランズのバス&ボディワークスです。
アパレル祖業でSPAの元祖と呼ばれる彼らは・・・
2000年代にはアパレル事業を売却し、ランジェリー・インナーウエアのヴィクトリアズ・シークレットに軸足を移し、
2020年の今はもう、ヘルス&ビューティ専門店で企業の大半の利益を稼ぐ企業となりました。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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