分社化が完了し、ヘルス&ビューティー企業となったLブランズ(エル・ブランズ)
おくればせながら、8月2日づけで、年商1兆円を超えるファッションチェーンであり、世界アパレル企業売上高ランキング5位をキープしていた米Lブランズ(エル・ブランズ)社が、ここ15年ほどメイン事業だったランジェリー&インティメイトウエアのヴィクトリアズシークレット事業(PINK含む)を分社化し、
社名をバス&ボディーワークスに変更し、ヘルス&ビューティー企業になっていた件について。
業界に長年いらっしゃる方はご存知かと思いますが・・・
同社は1963年、婦人服を販売する専門店として創業、THE LIMITED STOREという屋号で、アパレル専門店を拡大し、GAPよりも先にSPAのビジネスモデルを実践していた、「SPA(アパレル製造小売業)の元祖」と言ってもよいアメリカ代表するファッション小売業の一社です。
GAP社が90年代に年商世界一のアパレル専門チェーンになるまでは、同社が世界一だったんですよね。
一部の店舗で試験販売を行った商品をアジアでQR生産し、的中率を高める芸当も同社の十八番だったもので・・・
事業会社時代は、同社のオペレーションを大いに参考にさせて頂いたものでした。
EXPRESS(エクスプレス)も同社が開発したSPAチェーン、
アバクロンビー&フィッチを買収し、磨きをかけて分社化したのも同社、
ヴィクトリアズシークレットも買収し、ピーク時はアメリカ最大の売上を誇るアパレルチェーンブランドに育てました。
残念ながら、廃業しましたが、百貨店のヘンリ・ベンデルも買収後、長年、同社の傘下だったものです。
同社の転機は2000年代のアメリカでのファストファッションブームです。
H&Mとフォーエバー21のレッドオーシャンなトレンドファッションの低価格化戦争に嫌気がさし、2007年に祖業であった「リミテッド」と「エクスプレス」のアパレル事業の2本柱をファンドに売却し、「ヴィクトリアズ・シークレット」事業に軸足を移します。
売上規模を維持しながら、利益V字回復を果たし、世界の中でも英NEXTやZARAのインディテックスに次ぐ、最も高い収益率を誇るアパレルチェーンストア企業のひとつになります。
2010年代後半になると、ヴィクトリアズ・シークレットの派手さが時代に合わなくなると見るや・・・
自ら開発して、磨き上げてきた、スキンケアアイテムをメインとするバス&ボディーワークス事業に軸足を移し、
そこに独自のアパレルサプライチェーンマネジメントのノウハウを注入し、高収益な事業として拡大を加速します。
一旦は、ヴィクトリアズ・シークレット事業の売却に動きますが・・・
2020年、コロナ禍で交渉破綻、しかし、自ら、果敢にヴィクトリアズ・シークレットのリストラをして、バス&ボディーワークスの収益性に支えられ、Lブランズ社としてV字回復。
そして、この度、ヴィクトリアズシークレットを上場企業として分社化しながら、自らは高収益なヘルス&ビューティー事業企業になったわけです。
長年、同社をウォッチしてきた筆者からはブラボーの一言に尽きます。
なぜ、祖業のアパレルに固執しなかったのか?
その後、なぜ、ランジェリー、インナーウエアに固執せず、ヘルス&ビューティー事業に転換できたのか?
それは、過去にこだわらずに、顧客の未来とマーケットの変化を見ていたから、の一言尽きるのではないでしょうか?
アパレル市場は縮小し、ヘルス&ビューティー分野が伸びているのは、日本でも同じこと。
日本ではなぜアパレル業界から、そんな英断ができる経営者が生まれないのでしょうか?
ファッションマーケットの変化とLブランズのビジネス転換はファッションビジネス史に残る、未来を考える上でのケーススタディになるはずです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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