初級者、中級者マーケットを狙う、ワークマンの目のつけどころ
10月の後半に作業服チェーン、ワークマンの大型チラシが新聞に折り込まれて来ました。
今年ならではの流行を追ったとは、けっして言えない、
むしろ機能性をうたった安価な冬物アウター中心のラインナップ
用途を果たすなら、「これでいい(十分)」と思う客層を大きく取り込みそうな紙面でした。
ここ1年半、ワークマンが力を入れている、アウトドア用途にも使えるウエアマーケットは、
コロナ禍でキャンプやアウトドア系活動に向かった人達や、
子供が大きくなって手離れしたことにより増加した、親が一人で出かけるソロキャンパーなど、
初級者の裾野を広げつつ、中級者、上級者にステージアップして行く
さまざまな客層が増え、今後も一定の伸びが期待できるマーケットです。
一方、ちょっと興味を持ってキャンプなどアウトドア活動を始めようとすると、
スポーツ用品チェーンの店頭にはメーカーが競って機能や耐久性を追求した
初心者にはオーバースペックなギアや・・・
かっこいいけど、高価なウエアがブランド単位で並ぶ中級者以上の売り場になっている
のが実情です。
そんなメーカーやスポーツ量販チェーンの現実に対し、
そこまで本気じゃない、できるだけお金をかけたくない、
という消費者の方が、実は大多数を占めているのが実際ではないでしょうか?
11月10日の繊研新聞によれば、
ワークマンは来年の2月からオンライン販売で、
PB(プライベートブランド)のキャンプ用品をNB(ナショナルブランド)と合わせて100品目以上を加えて本格的に販売を開始するとのこと。
記事によれば、一人用テント5000円以下、などかなりの安価なキャンプ用品のラインナップを揃えるようです。
ご存じの通り、ワークマンはプロ向けの作業服チェーンとして創業、拡大し、
近年、販売している同じウエアや関連アイテムが一般ユーザーが日常にも使えるという需要があることに消費者に気づかされ、
彼らのSNS発信をうまく活用して、大衆マーケットに発信し、潜在需要を掘り起こすことで売上を伸ばして来ました。
そんな、今となっては、知名度の高まったワークマンが、ブレイク前夜から、海外で注目し、お手本にしていたのが
フランス本社のスポーツウエアチェーン、デカトロン(グローバル年商1兆3000億円規模)です。
2020年の東京オリンピックを日本市場攻略の足がかりにすべく、2019年に日本に上陸を決めていた、デカトロンは
あいにくパンデミックによる東京オリンピックの延期によって、日本市場での拡大の出鼻を挫かれ、現在、出店は西宮と幕張の
たった2店舗に止まっておりますが・・・
彼らが教えてくれたのは・・・
すべてのスポーツはアスリート(上級者)のためだけのものではなく、
大衆(初級者、中級者)のものでもあること。
そして、
著名グローバルブランドだけでカバーできない、巨大な大衆潜在市場があるという、
あらゆるスポーツの民主化(大衆化)
によるビジネスチャンスでした。
そう、ワークマンも正しく、
NBメーカー主導で上級者志向のアウトドア市場やキャンプ市場の隙間=初級者または中級者向けの潜在市場を狙いに行って
成長中、更なる成長を掴もうとしているわけです。
一般的に市場の導入から成長段階では、
上級者志向のブランドがけん引して市場を形成するものの、
成長期から成熟期にあたっては、初心者や中級者向けが市場を盛り上げるもの。
市場のライフサイクルのステージにもよりますが、
商売をするにあたって、
その商品が大好きでお金をかける人のマーケットだけに絞って商売をするのか、
そこまでお金は掛けられないけど、楽しみたいという、より多くの人、より大きなマーケットに向けて商売をするのか、
この問いは、どんな業界にもある話だと思います。
ファッション業界においても、業界関係者が大いに見落としがちなのは・・・
消費者の多くは作り手同様にファッションが好きである、
従って、良いものさえつくれば、高くても買ってくれるだろう
という思い込みです。
右肩上がりの時には通用したかも知れない業界のそんな常識は・・・
もう、過去のものであることを意識して商売をしなければならない。
あらためて
ワークマンは「価格が安いから売れている」という表面的なことではなく、
ワークマンが「話題だから、彼らの真似をすればよい」という短絡的な話ではなく・・・
同社が顧客目線で、市場の対局を見て取り組んでいる、その背景にあることを理解した上で
自分たちの商売にも置き換えて考えないと、ビジネスチャンスを逃すだけでなく、これから生き残れるかどうかもわからない、
と肝に銘じるべきでしょう。
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最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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