EC発人気レディースブランドのキーパーソンたちが語るSNS時代の顧客目線
12月22日、23日の繊研新聞にEC発の3つのレディースブランドのキーパーソンへのインタビュー記事が連載されており、楽しく読ませていただきました。
3ブランドとキーパーソンとは、アメリのCEOの黒石奈央子さん、エトレトウキョウのクリエイティブディレクターのJUNNAさん、トゥデイフルのライフディレクター兼デザイナー吉田怜香さん。
記事の中で、なるほど、と共感した部分を引用しながら、顧客と共につくるブランディングの視点について考察してみたいと思います。
まずは、アメリの黒石さん
10月に定額制会員サービスを始めたそうで、社内で定額課金(サブスク)サービスを「アメリ」らしく行おうと話し合った結果、設けた特典のひとつが、
「人気商品は即完売することがあり、会員が欲しい商品を発売前日に購入できる」
というサービス。
これ、いわゆるファストパス的なサービスですよね。
アメリのサイトによれば、その他に限定アイテムの発売、購入時の送料無料、ポイント2倍、会員限定Instagramへの招待があるようです。
世の中のポイント還元を中心とした「会員制」は年間購買額に応じて沢山買ってくれる人ほど、たくさんの割引を受けることができる、というしくみが圧倒的に多いですよね。
筆者はその「常識」(?)に、少々違和感を持っていましたが、
ファンが高額購入または定額課金でブランドの利益と事業の継続を支える、ブランドは支えて下さるファンに割引だけに頼らない「特権」で報いる。
そんな定額課金に基づく会員制によるファンづくりが・・・
これからリテーラーに広がって行くような気がしていたので、いい顧客育成アプローチだな、と思いながら読んでおりました。
次に、エトレトウキョウのJUNNAさん
インスタライブでいつも「愛を持って服を育てることは人生を豊かにするよ」と話している、という話。
「例えばニットを売るときも、商品の話ではなく、手入れの方法を伝え長く着てもらう知恵を共有します。」(「」内引用)
「できる限り、数年前に売った服を今も着ているとも伝えています。好きな服をずっと着てもいいんだという安心感は信頼につながっています。」(「」内引用)
とのこと
今年の服を売る、新しい服に着せ替えるのがアパレル企業にとっての「常識」ですが・・・
一方で、お気に入りを長く、賢く着たい、そこに上手く新しいものを取り入れたい、というのが顧客側の「常識」です。
これまで、店頭接客(ECも)はそのギャップの葛藤の連続だったと思います。
売り手が、販売する時に、「長く大切に着てね、こうすれば長持ちする」とか、「(私も)数年前のものも大事に着ている」と伝えることは、買い手に優しい、共感を生むコミュニケーションではないか、と、とても共感したものでした。
最後にトゥデイフルの吉田さん
「前シーズンに出した服を翌年に売ることもあります。
私は数年前の服でもお気に入りはインスタグラムに載せるのですが、それを見た顧客から「怜香さんも3年愛用しているんですね」との共感もある。2年目とか3年目に売れる服もあります。」(「」内引用)
「SNSに強いから自分が前に出て新しい服をすすめないといけない。
けれど、「これ可愛いです。長く着られます」って毎年新作を見せることには違和感がある。私は良い服を長く着る提案をしていきたい。」(「」内引用)
これが、顧客目線の等身大的な発想だと思うのですよね。
新しい服を売り込まなければならない企業
以前買った服を大切に、上手に今年風に着たい顧客
売り手の都合を押し付けてばかりいたらギャップはますます広がることでしょう。
サステナブル(持続可能)って、別に環境に優しい素材でつくればよいって話だけではなく、
売り手の都合だけでなく、買い手の購入や入替をストレス少なく、持続可能にすることが大事なことだと思っています。
この記事に登場したご本人たちはファッションリーダーであると共に、こういった顧客目線、等身大的発想のできる方々。
そんな視点が、ますます共感を生み、事業を持続可能にするキーワードのひとつなのではないか、とあらためて感じたものでした。
追伸 舞台が店頭からオンライン、SNSコミュニティにも広がっただけで、実は昔から同じ話です。
最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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