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January 31, 2022

Amazon(アマゾン)が解決しようとするファッションストアの課題とは?

Amazon-go

アマゾンが初のリアルファッションストア、amazon style (アマゾンスタイル)を今年の年末までにロスアンゼルス北部のグレンデールにあるオープンモール型ショッピングセンター、アメリカーナ・アット・ブランド内にオープンするそうです。 

The AMERICANA at Brand

amazon styleの売場面積は848坪、同SCのHPにあるダイレクトリーを見るとH&Mの隣になる模様。

同ショッピングモールはノードストロームがアンカー(核)テナントになっていて、
ハイブランドは入っていませんが、J.CrewやLulu LemonやAnthropologieやNike Community Storeなど中の上くらいのブランドが多いようなので、だいたい客層は想像できるでしょう。

ここ、以前「ライフスタイルセンター」というキーワードが話題になったころ、10年近く前でしょうか、
一度、視察に行ったことがあるところです。

品揃えは、メンズ、ウィメンズ、靴、アクセサリー

基本セルフ販売で、程よくコーディネート提案をする売場の中で、

・気になった商品のQRコードをショッピングアプリでスキャンして詳細を知り、

・試着したい場合は、試着予約をして試着室に用意ができればアプリにお知らせが来る

・試着室内のタッチスクリーンで他の色、サイズ、商品をもって来てもらうことも可能

・試着不要であれば、注文後、ピックアップカウンターからそのまま持ち帰ることもできるようです。

また、

・オンラインで見つけたものをアマゾンスタイルに取り寄せ、試着することも可能。

・店舗で一度スキャンした商品は、帰宅後に再考できる。

という オン↔オフを行き来する顧客のシームレス体験も可能とし、

過去に購入したり、閲覧したり、スキャンしたりした商品からAI(機械学習)による商品のレコメンドもしてもらえるそうです。

amazon styleがどんなイメージになるのか?のビジョンはこちらの動画ではっきり紹介されています。

amazon style

 

amazon go(アマゾンゴー)でコンビニの

amazon books(アマゾンブックス)で書店の

顧客の店舗でのお困りごと(ペイン)を見事に解決したamazonが・・・

果たして、ファッションストアにおいて固有のどんなお困りごとを解決しようとしているのか?

ニュース記事で読んだり、この動画を観る限り、

さすが、顧客の「ナラティブ」から発想するアマゾン、

かなり、現在、顧客の立場になったら考え得る、ファッションストアにおける顧客ソリューション型の

OMO(Online merges with Offline)のビジョンを実現しようとしていますね。

そして、そのビジョンは、

アパレルの世界王者である、ZARAが

2018年に六本木で行ったONLINE POPUPストアの試みにかなり近いものがあるというのが筆者の見立てです。

そして、あの時のZARAの試みよりも、更に優れているのは・・・

・多くのブランドの中から選べること、

・オンラインで見た商品を店舗に取り寄せて試着できるところ、

そして、

・購入した商品をその場から持って帰ることができるところでしょうか。

(ZARAの場合は、当時、午前中注文したら、夕方以降に店舗で受け取れる、あるいは宅配の選択肢でした)

どうぞ、みなさんも動画を観て、未来のファッションストアを想像してみてください。

年末のオープンが楽しみですね。

筆者もいずれ、海外渡航に自由に行けるようになったら、

いの一番に体験しに行きたい店舗のひとつだと感じました。

関連エントリーー【アメリカ西海岸リサーチその1】 ストア側からのデジタル化が進むアメリカ amazon books、 amazon go 、そしてNikeが実現しようとしていること

関連エントリーーナラティブ(顧客を主人公にした物語)から考える

 

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 これから10年先のファッション消費の未来のカギになることは何? 世界で進む、顧客の購買行動の変化に合わせたオン・オフ問わないオンラインの活用、そして顧客のクローゼットを起点としたサステナブルな取り組みとは?いずれにせよ、カギとなるのはお客様のストレスの解消しようとする情熱とそれを実現するイノベーションです。

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January 24, 2022

「豊かさ」を超える、選択肢のワナ

Photo_202201291849011月24日の日経新聞、インサイドアウトというページに良かれと増やす、多すぎる品揃えは逆効果で、購入率を下げるという研究結果に関する記事が掲載されていました。

学生を対象にしたある調査では、
目の前に並んだ人気スイーツ12種の中から3つ選ぶ場合と、4種類の中から3つ選ぶ場合、
多い選択肢から選んだ場合の方が、「後悔」や「選び直したい」という思いが多かったそうです。

また、ジャム売場で行った試食から、試食した人の中からどれだけの人が購入に至ったかの調査では

6種類で試食を実施した際は 3割が購入に至ったのに対し、
24種類に増やした場合、たった3%しか購入に至らなかったそうです。

これ、「選択のオーバーロード現象」というそうです。

多くの選択肢がもたらす必要以上の情報を負担に感じ、
決断や行動が乱れてしまう状態を指すようで、

似たようなものに感じ、明確な区別がつかないまま選んだ結果に、
納得できない感情が募る、ということも起こるようです。

思い起こすと、学生時代(1980年代)、
経済学を学んだころ、「豊かさ」とは「選択肢の豊富さ」だと教えられました。

時を経て、競争下の企業努力もあり、今や、種類も価格も豊富過ぎる選択肢に溢れ、
店頭のみならず、オンライン上も加えれば、選び切れない品揃えが現実。

従って、一番安いのか、一番有名なのか、
あるいはランキング上位、はたまたレビューが多くてよいものから選ぶ
というのが購買心理でしょう。

似寄り品を増やしてしまったり、色数を増やしてしまうのは、

お客様を迷わせるだけでなく、商品管理が難しくなり、残在庫の要因となる
仕入担当者の改善すべき「クセ」のひとつ。

黙っていても、売り切る力があるのなら別ですが・・・

 

期末余剰在庫を検証すると、売れ筋商品の売れない色がごそっと残っているというのも多くの現場で上位に上がって来ます。

適度な選択肢の提供、絞り込みはお客様のためであると共に・・・
企業利益のためでもあることを、あらためて肝に銘じたいものだと思いました。

関連エントリーー色展開よりサイズ展開を増やした方が顧客層は広がる

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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January 17, 2022

ZARA(ザラ)のインディテックスが2四半期連続で過去最高益を更新、次の一手はアプリによる顧客の店舗体験の拡張

1WWDジャパンの月イチ連載中「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の見方)。

今週発売のvol.33(1月17日号)のタイトルは、「ザラ アプリの新機能から店舗体験の未来を考える」。

でした。

第2四半期(5-7月)、第3四半期(8-10月)と続けて、過去最高売上と最高益を叩きだし・・・

もはやコロナ禍を脱け出した言えるZARAのインディテックス。

第3四半期の仕入れや期末在庫を見る限り、第4四半期も強気ですので、きっと第4四半期もよい結果を残すでしょう。

さて、世界でいち早くECと店舗ストックルーム在庫の一元化を完了した同社が、

その次に取り組むオムニチャネル施策が顧客アプリによる店舗体験価値の拡張です。

 

スペイン、イギリスと共に世界3か国、アプリの新機能の実験場所に選ばれた日本。

その実験を通じて、ZARAがファッションストアで、これからどんな革新を目論んでいるのかがわかります。

アプリに実験的に搭載された「ストアモード」には

CLICK&FIND という 訪問店舗での商品検索機能と陳列場所ナビゲーション機能

CLICK&TRY という 混雑時の試着室順番待ち予約機能

CLICK&GO  という 店外からでも、近隣店舗を指定して、あるいは店内においても、その店舗の在庫の中から、オンライン上で商品を選び、オンラインで注文すると2時間程度で店舗で商品受取ができるという機能

が搭載され、店舗でスキャナー機能を使えば、後からオンラインで再検討をする上で便利な、履歴保存機能もついてます。

また、ZARA IDの名の下、オンライン購入と店舗購入を顧客のアカウントの中で統合する、顧客ID化の試みも始まりましたね。

今年は、日本においても、企業の顧客のスマホアプリの活用が

プッシュ通知やクーポン配信のOtoO的な販促目的から、

顧客自身が能動的に店舗で使うことが話題になる新しいステージに入る1年になると思っています。

世界最先端の1社であるZARAがどんなことを考えてるのか、まだ実験中ではありますが、

試してみると、いろいろな気づきが得られます。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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January 11, 2022

ユニクロ、総額1000億円規模の自動倉庫向け投資に見る、流通企業の設備投資戦略の分岐点

Uq-tokyo-2_202201251807011月11日の日経新聞によれば

ユニクロを展開するファーストリテイリングが
世界のEC向け自動物流倉庫に総額1000億円の投資を行っているとのこと。

18年にスタートした日本の有明プロジェクト(東京)においては、

入庫から検品、保管や仕分けなどほぼ全作業について自動化が図られて、
作業員が当初と比べて9割削減出来るなどの成果が上がったそうです。

続いて、20年秋には大阪でも西日本向けの自動倉庫が、

21年夏には米国、欧州、豪州で、そして今期中には中国においても
自動倉庫を広げて行くとのことです。

この自動倉庫の目的は、まずは各国で拡大するEコマースの向けの倉庫において
人手不足による人件費の高騰や増えるEコマース需要へのスピード対応のようですが、

同社のような低価格を扱う小売業にとっては、もうひとつ大きな理由があります。

それは、小売業にとって、売上利益を稼ぐために使う
販売管理費の主な項目は

かつては人件費と地代家賃が中心でしたが、

ECビジネスにおける販管費のトップ2/3は

・荷造運賃
・物流関連費(アルバイト業務委託含む)
・人件費(社員、業務委託) 

でそのうち、圧倒的に運賃と物流費が多くを占めます。

その結果、ファストリの決算書の主な販管費項目には
かつては、記載のなかった物流費と業務委託費が浮上して来ています。

Eコマースは店舗販売と比べて
固定費が少なく、変動費が多く
リスクが少ないビジネスと思われがちですが、

その落とし穴は、変動費と言われる
荷造運賃と物流関連費というものは

一回あたり、いくらの商品を出荷しようが、
同じくらいかかるという事実です。

つまり、
商品を10,000円分出そうが
1,000円分出そうが、

「出荷一件あたりコスト」は
同じようにかかるという点です。

つまり、ユニクロやGU(ジーユー)など
そもそも単価が安いブランドは、

百貨店やセレクトショップなどのブランドと比べ
ECでは売上を伸ばしやすくても、
利益は残しづらい、というわけです。

※実際は出荷単価(売上)よりも
1件あたりの出荷粗利によります。

そのため、

ユニクロはEC拡大にあたって

クリック&コレクトつまり、
オンライン注文の店舗受取りを推奨して、

送料を負担したがらない顧客側および
送料無料ラインを超えて、企業側が負担する送料
の双方を軽減し

※国内ユニクロ事業のクリック&コレクト比率は約40%

倉庫内での人による仕分け作業を
限りなく減らす手段としての
倉庫作業の自動化に取り組んでいるわけです。

ECが拡大すると、
投資に対する考え方が明らかに変わって来ます。

物流やシステムにどう取り組むか?
すべてアウトソーシング(販管費)のままでいいのか?

描く経営ビジョンと経営者の采配で、
未来の流通業の優勝劣敗の明暗がわかれるでしょう。

ファブレス、アウトソーシング派だったユニクロが・・・

多くの流通企業がそんな分岐点に立たされていることを示唆する
ニュースのひとつだと思います。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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January 03, 2022

謹賀新年 2021年のアクセスランキングご紹介

Photo_20220111194401あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

今年初めのエントリーは昨年アクセスの多かった記事のご紹介から。

 

第1位 世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

    毎年一番アクセスを頂く記事です。

    トップ10の損益動向を見ているだけでもファッション流通のグローバルトレンドが感じ取れます。

 

第2位 越境ECに特化して急成長を続ける中国新興アパレル企業、SHEIN(シーイン)の勢いと中国アパレルEC市場の事情

    昨年、最も話題になった海外企業ではないでしょうか?

    昨年は3兆円に迫る勢いだったとか?

    中国の越境専業ファッション企業という新しいビジネスモデルであり、

    同社の動向には早くから注目していましたが、その急拡大ぶりに目が離せません。

 

第3位 ファッション小売業の在庫は在庫日数(週数)で考えよう

    一昨年のエントリーでしたが、引き続きアクセスを頂きました。

    小売業は在庫日数(週数)経営が基本ですが、公式通り過去の売上を分母にするのではなく、

    未来の売上予測(または予算)で計算するのが筆者流です。

 

第4位 ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

    コロナ禍でも、しっかり利益を出している世界一企業の動向。

    今期は、第2四半期と第3四半期は過去最高の売上と利益を上げています。

 

第5位 着なくなった衣服の廃棄を減らすためにできること~環境省の「ファッションと環境」レポートから

    サステナブルの文脈で私たちが最も取り組めることは、着なくなった服との向き合い方でしょう。

    消費者のクローゼットのワードローブの循環を、企業がどうお手伝いできるか、がこれからのファッション企業のテーマです。

 

本年も、ファッション流通業界の話題のニュースを独自の視点で取り上げ、解説します。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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