ユニクロ、総額1000億円規模の自動倉庫向け投資に見る、流通企業の設備投資戦略の分岐点
ユニクロを展開するファーストリテイリングが
世界のEC向け自動物流倉庫に総額1000億円の投資を行っているとのこと。
18年にスタートした日本の有明プロジェクト(東京)においては、
入庫から検品、保管や仕分けなどほぼ全作業について自動化が図られて、
作業員が当初と比べて9割削減出来るなどの成果が上がったそうです。
続いて、20年秋には大阪でも西日本向けの自動倉庫が、
21年夏には米国、欧州、豪州で、そして今期中には中国においても
自動倉庫を広げて行くとのことです。
この自動倉庫の目的は、まずは各国で拡大するEコマースの向けの倉庫において
人手不足による人件費の高騰や増えるEコマース需要へのスピード対応のようですが、
同社のような低価格を扱う小売業にとっては、もうひとつ大きな理由があります。
それは、小売業にとって、売上利益を稼ぐために使う
販売管理費の主な項目は
かつては人件費と地代家賃が中心でしたが、
ECビジネスにおける販管費のトップ2/3は
・荷造運賃
・物流関連費(アルバイト業務委託含む)
・人件費(社員、業務委託)
でそのうち、圧倒的に運賃と物流費が多くを占めます。
その結果、ファストリの決算書の主な販管費項目には
かつては、記載のなかった物流費と業務委託費が浮上して来ています。
Eコマースは店舗販売と比べて
固定費が少なく、変動費が多く
リスクが少ないビジネスと思われがちですが、
その落とし穴は、変動費と言われる
荷造運賃と物流関連費というものは
一回あたり、いくらの商品を出荷しようが、
同じくらいかかるという事実です。
つまり、
商品を10,000円分出そうが
1,000円分出そうが、
「出荷一件あたりコスト」は
同じようにかかるという点です。
つまり、ユニクロやGU(ジーユー)など
そもそも単価が安いブランドは、
百貨店やセレクトショップなどのブランドと比べ
ECでは売上を伸ばしやすくても、
利益は残しづらい、というわけです。
※実際は出荷単価(売上)よりも
1件あたりの出荷粗利によります。
そのため、
ユニクロはEC拡大にあたって
クリック&コレクトつまり、
オンライン注文の店舗受取りを推奨して、
送料を負担したがらない顧客側および
送料無料ラインを超えて、企業側が負担する送料
の双方を軽減し
※国内ユニクロ事業のクリック&コレクト比率は約40%
倉庫内での人による仕分け作業を
限りなく減らす手段としての
倉庫作業の自動化に取り組んでいるわけです。
ECが拡大すると、
投資に対する考え方が明らかに変わって来ます。
物流やシステムにどう取り組むか?
すべてアウトソーシング(販管費)のままでいいのか?
描く経営ビジョンと経営者の采配で、
未来の流通業の優勝劣敗の明暗がわかれるでしょう。
ファブレス、アウトソーシング派だったユニクロが・・・
多くの流通企業がそんな分岐点に立たされていることを示唆する
ニュースのひとつだと思います。
最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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