Amazon アメリカでのプライム会員年会費値上げで考える ECの送料負担
Amazonが2月から(既存会員は3月末から)アメリカでプライム会員の年会費を20ドル上げて年139ドルにすると発表しました。
4年に一回20ドルずつ上げて来て、今回も前回の値上げからちょうど4年目にあたる年でした。
プライム会費はミュージックやビデオなどのサービスがついたサブスク会費ですが、基本的には注文商品を早く、確実に商品を顧客に届けるための送料の原資であり、
物流コストの高騰(人件費含む)を、今回値上げの理由に上げていますから、今後も物流費が年会費のカギを握ることでしょう。
ちなみに日本においては2019年に3900円から4900円(月額500円)に値上げし、今回、日本では値上げはありませんが、アメリカと3倍以上もの開きがありますから、物流費高騰の日本においてもいずれは値上げとなるのでしょうね。
多くのアマゾンユーザーにAmazonはあたかも送料が無料?のように感じさせているマジックがこのプライム会員制
ちなみAmazonのプライム会費含むサブスクサービス部門の売上は同社の売上全体の6%を占めているそうです。
しかし、AmazonUSが物流費用の高騰を値上げの理由にしているように、私たちが支払っている年会費が送料の原資になっていることは忘れてはいけません。
Amazonは、自社の短期的な儲けではなく、市場における顧客体験のハードルのバーを上げ続けることを是とする、明文化された社内の行動指針が存在するので、追随他社から見ればクレイジー、過酷と言えるほどのサービスリーダー的存在です。
そして日本においても、競合たちはAmazonがリードする送料や配送スピードの基準を意識せざるを得ない「呪縛」に囚われてしまっています。
しかしながら、冷静に見つめれば、宅配を前提にしたECビジネスにおいては、送料こそが最大の販売管理費であり、これをどう扱うか、つまり顧客に負担してもらえるか、企業側が負担することになるのがビジネスの損益を決することは言うまでもありません。
世の中を見渡すとECの送料体系にはいろいろあります。
・いくら購入しても送料は◯◯◯円
と、その企業が業者に払うであろう送料をそのまま顧客負担にするパターンもあれば
・初回会員登録で送料無料(その後は基本有料)
・一回あたり5,000円以上のご購入で送料無料
このあたりが一番多いパターンでしょうか?
また
・いくら買っても一律210円、一律396円など、送料の一部を顧客に負担してもらうパターンや
・送料無料の原資として年会費を徴収するなど
さまざまな設定があります。
今のところの勝者は、
もともと送料込みで一律価格設定が出来ているサブスク的な専業(食品など)や
そもそも送料が含まれている宅配ピザのような、双方宅配前提、承知の上で価格設定がなされ、そんなビジネスモデルでPLが組めているところ
はたまた
ZOZOTOWNやEC専業のように、少額で、高く感じられない一律送料を顧客に一部負担してもらっているところ、
あるいは
出荷あたりの粗利額がしっかり取れていて出荷一件あたりの送料や個数あたりの物流関連単価のインパクトが損益にさほど影響がない企業
のように思います。
ちなみに勝者って売上だけを伸ばしていところではなく、しっかり利益も残しているところを意味しています。
一方、単価が低かったり、粗利が薄利なところで
お買い上げ5,000円以上で送料無料にしているのところは、
例え売上は伸ばせても、正直、あまり儲かっていないのではないのが現実ではないでしょうか?
そういったところは、アマゾンのようにサブスク形式で原資(固定費)を確保するのも手かも知れませんが、
会費を払うかどうかは、購買頻度や得した感の演出にもよるでしょう。
服だけを販売しているところは、そうしょっちゅう同じブランドで買うわけじゃないので、年会費を頂くのは結構ハードルが高いかも知れません。
そう、EC時代の勝者は、何らかの工夫で企業側が送料をもろかぶりしないところ、それがキーワードのひとつではないかと思っています。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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