ショールーム店舗から3層構造で利益を得る、丸井(マルイ)の収益構造
1月26日の日経MJに「売らない店」と称して、ショールーム店舗の入居に積極的な
丸井グループの記事が掲載されていました。
丸井はその昔、アパレルを中心に販売する百貨店の1社とくくられていましたが
(実際は月賦百貨店)、
現在の丸井グループの決算書を見ると、
セグメント別売上収益は 小売 4割 フィンテック 6割
同売上総利益(粗利)は 小売 3割 フィンテック 7割
同営業利益は 小売 2割 フィンテック 8割
の構成比で、
小売セグメントの粗利の6割強が家賃収入から得られ、フィンテックと呼ばれる事業セグメントのマジョリティは
エポスカードなどのクレジットカード事業であり
クレジットカード手数料、キャッシング、賃料の3つで粗利の75%を稼いでいる のが現実で
従って、同社は小売業(リテール)ではなく、金融・不動産会社と言った方が適切かも知れません。
この転換は、かつての「百貨店」の生き残り方の1つの答えだと思っています。
そんな丸井グループの子会社である株式会社丸井の社長の青野さんのショールーム店舗に対する取り組みに関するコメントの中で
興味深いコメントがあったので取り上げてみたいと思います。
以下「 」内は記事からの引用です。
「売らない店のような体験型のテナントもアパレル(に貸すの)も、
とれる家賃は一緒。それだけでは成長戦略にならない。」
「丸井は小売りだけで利益を出すのではなく、
フィンテック、共創投資と3層構造で利益を得られるのが特徴だ。」
「他の商業施設はQRコードを付けて在庫を持たないような「売らない店」をすることはできても
収益を3層構造にできるかというと難しく参入障壁が高い。」
「まず「売らない店」がテナントとして入れば家賃として小売の収入が上がる。
次に丸井グループが発行するエポスカードにテナントから入会する人が増える。
テナントのファンがカードを丸井の外でも使えば加盟店手数料が入る。
さらに、共創投資先がBASEや駿河屋など30社以上あるが、
それらがリアル店舗で顧客を拡大して成功すると株価が上がったり、
IPOしたりして投資収益を得ることができる。」
とのことです。 コメント引用は以上です。
多くの商業施設が、空きスペースを埋めるために、
流行りの未来型テナントとしてDtoCを標ぼうする企業たちのテナント誘致をしていますが、
そのトレンドに乗るだけでは、今までと変わらない、儲からないだろう、
と自信を見せているコメントです。
丸井の場合、正直、自己資本比率は高くありませんが、
ある意味、「金融会社」なので、資金調達力があります。
これで、まずは高利回りの稼ぎ頭である、
金融(フィンテック)事業を回す。
逆に言えば、ここが回っていれば、心配はありません。
世の中で最も強いビジネスのひとつですから。
そして、かつては自前でも商売していた自社物件(館)を活用しながら、
今は自社販売ではなく、家賃収入を得る。
他人資本を上手く活用して金融と不動産を回しながら、
積み上げる自己資本で未来型企業に投資をするという
投資会社になろうとしているわけですね。
正直、現在投資されている先が思うように収益化するか、
また、出口が見つかるかどうかはわかりません。
しかし、金融事業という強い事業の後ろ盾を持ち、
未来に向けて投資会社として変化しようとする姿には
力強さを感じたものでした。
話は変わりますが、ここのところメディアで目につく
「売らない店」という表現には違和感を感じています。
日本で開業するショールーム店舗は、なぜか頑なに、
売らないとか、在庫を持たないとか、購入はオンラインで、とか・・・
寸止めというか、小売業の役割を放棄して、企業の都合を押し付けている感じがしてしかたありません。
商売なんだから、売ったらいいんじゃないでしょうか。
買った商品を持って帰れるのも、大きな顧客満足のひとつです。
お手本にされている海外のショールーム店舗の多くはある程度在庫を持ち、持って帰りたい顧客にその場で売っていますよ。
在庫が切れている時はオンラインで買ってね、と薦めて来ますが。
なんか、カタチだけではなく、顧客の立場で考える覚悟も 是非、見習って欲しいものです(笑)
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
【オススメ本】 これから10年先のファッション消費の未来のカギになることは何? 世界で進む、顧客の購買行動の変化に合わせたオン・オフ問わないオンラインの活用、そして顧客のクローゼットを起点としたサステナブルな取り組みとは?いずれにせよ、カギとなるのはお客様のストレスの解消しようとする情熱とそれを実現するイノベーションに他なりません。
| Permalink | 0