製品原価高騰時の価格戦略再考~今こそ体質改善、新しい体質づくりの時
ここのところメディア取材や投資家勉強会でこのテーマでの依頼が増えています。
今年の秋冬ものの仕入れ以降
アパレルの製品原価がFOBベースで前年比1.2倍以上
円安で為替インパクトが同1.2倍超の水準となり
単純に掛け合わせると、仕入原価が1.5倍になりそうな勢いですから・・・
足元の売上が19年並みに戻って来た!と浮かれることなく
新しい価格政策にしっかり向き合いたいところです。
これまでの仕入原価率をそのままにしてその分価格を上げてしまうと・・・
3~4割の値上げ、いわゆるワンランク上の次のプライスラインになってしまう状況。
同じ商品の価格を上げれば、明らかに買上客数は減り、売上数量は減ることは・・・
小売業に携わるものは、誰でも痛いほど経験しているはずです。
安易に値上げしても売れず、その後、売れないからと安易に値下げをするようでは・・・
お客様を迷わせ、価格の信頼性が損なわれることは言うまでもありません。併せて店の売変作業も大変です。
では、どんな心構えで価格政策に臨むべきかを、
考えられることを少し、まとめてみたいと思います。
結論を先に言えば・・・
プライスポイント(最多価格帯)を上げずに、
商品のクオリティも明らかに落ちたと感じられないように維持することを前提にしながら
つまり、「明らかに高くなった」と感じられないように、
いかに合わせ技で、結果的に、平均売価が上がる努力をするか?の耐え時と言えましょうか。
いくつか要素がありますが、メジャーな対応策をいくつか上げてみましょう。
1)プライスポイントより高価格帯の構成比を増やす
ただ高い商品の品ぞろえを増やすわけではありません。
上層マーケットで販売されている商品を対象に、クオリティを落とさず、自社らしくトレードオフ(マストでない要素をそぎ落として)でつくることを心がけることです。
キープした先のプライスポイントと価値の差が明確なほど、それら、高い商品の価格が高い理由は伝えやすいはずです。
そして、買い上げ単価の高い顧客の新規獲得を目指しましょう。
ニトリは過去にこの策で客数を減らさずに客単価を20%上げました。
2)中間プライスラインをつくる
プライスラインは1,000円刻みがお好きなところが多いですが・・・
無理せず500円刻み、200円刻みの中間プライス設定も検討する時でしょう。
今までやったことがなかったり、あるいは過去に中途半端にやって失敗したり、
違和感のある方は、ZARAやしまむらのお店を見てみてください。
3)できる限りプロパーで売り切る
在庫コントロールを緻密に行い、
値下対象になってしまうような、売上のバラツキに起因する機会損失、滞留在庫を最大限に減らす努力を。
確実に余剰在庫になりそうなものを我慢して値下げ販売しない、という意味ではありません。
早期判断、早期対処は必須です。
これは、時期にかかわらず、長年、筆者がお伝えして来た粗利捻出術のひとつです。
4)値下げする際の価格帯(プライスライン)も刻んで、粗利高の確保に執着する
安易にこれまでと同じ値下のしかたをしない。
つまり、値下げする時はすぐに1,000円オフ?なんでもかんでも30%?などのクセを止め
期限までに売り切れるものはあえて値下をせず、あるいは、大ざっぱな値下で利益を摩らないよう工夫をしてみたいところです。
ユニクロは値下価格を1,290円から1,490円にするだけで販売単価を15%上げました。
上記の他、
販管費の中にも、高く払っている家賃や生産性など、モチベーション下げずにメスを入れることができるところがないか知恵の絞りどころです。
コロナ禍で経費総額は十分絞ったとおっしゃる企業も多いと思いますが、今度は、コストカットではなく、新しい体質づくりを考える時です。
過去にもブログに書いた
昨年、フルカイテンさんのセミナーでもお伝えした
客単価を上げる方法とは? ユニクロ・ニトリの決算書から読み解く。
在庫管理を起点に考える 値引きと粗利益をコントロールする方法
などの内容も参考にしていただければと思います。
最後までお読み頂きありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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