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May 31, 2022

アパレル販売の需要予測とは?

2_20220607170601先日、所属する日本オムニチャネル協会のサプライチェーン部会のセミナーで
需要予測をテーマに食品とアパレルの違いをディスカッションする機会がありました。

筆者はアパレルの「需要予測」が語られる時、多くの誤解があると思っています。

多くの場合、例えば、

シーズン毎にヒット商品を当てること、
そして、それがどれだけ売れるかを事前に予測して、
ドーンと計画生産することが需要予測であると思わている方が少なくないようです。

半期やシーズン単位で考えるメーカーの場合はそうかも知れません。

しかし、少なくとも、アパレル小売業の場合は・・・

シーズン中の需要の高まる実売期(ピーク週と呼びます)が何時で、
その時に何をどれだけ販売して目標を達成するか?という

品揃え計画と商品販売計画の仮説を立てることが
「需要予測」に当たるのです。

この計画を立てる上で第一に前提にすべきは、

顧客購買行動です。

気温と共に装いを変える生活者は

わかりやすいくらい、季節の最高気温や最低気温に反応しますし、

そして、連休やイベントに連動した行動をとることがわかっています。

過去20年間、たくさんのブランドの「売上週波動」というものを見て来ましたが

同じ立地で商売をするブランドであれば、
コロナの影響を受けた20年と21年を除いては

毎年ほぼ変わらない波を描くもので、それは、まさしく「顧客購買行動」そのものの現れと見ても差支えありません。

では、その需要の波が高まる
実売期=ピーク週周辺にどんな商品を販売するか?

こちらもビジネスでよく用いられるパレートの法則のように、

面白いように、売上上位商品に大多数の割合が集中するのが常です。
(これには理由がありますが、またの機会に)

そこまで販売機会と枠組みがわかっていれば、あとは、

「生活者はコーディネートして着用する」

その真理を前提にして、その枠組みにどんな商品を当て込むのか?

という仮説と議論になります。

当て込めさえすれば販売目標に対する計画数はある程度、ほぼ自動的に計算することができるものです。

これがアパレル小売業の「需要予測」にあたるものです。

しかしながら、中長期的な需要予測が当たらないことは
多くのビジネスパーソンなら知っている通りです。

一方、そんな市場の中で

当初の仮説が需要とズレていることにすぐ気づくことができるのは
生活者最前線で日々販売に当たっている小売業最大のメリットです。

ですから、一旦は仮説(計画)を立ててシーズンを迎えるものの、

シーズン中の実需要にあわせてできる限り軌道修正すればいいのです。

それが出来たか、出来なかったかで利益が決まるのが、
小売ビジネスというものです。

ユニクロにしても、ZARAにしても規模が大きいからではなく、

軌道修正力があるからこそ日本一、世界一になっていること

を忘れてはいけません。

とても興味深いのは、その反対に

「規模が小さかったころの方が軌道修正力があった」

と振り返る経営者さんが結構いらっしゃるのも現実です。

規模が大きくなって、スケールメリットを出せるようになったはずなのに・・・

むしろ軌道修正力が落ちているとしたら

それは、いったい、なぜでしょうか?

思い当たるようであれば、是非、オペレーションを見直してみてください。

「販売計画は外れることを前提にシーズン販売に臨む」

規模に関わらず、それが小売業にとって基本的な考え方であると、
キモに銘じたいものです。

関連して、話は少し変わりますが、

リアルでも、オンラインでも、直営店だけで商売をしていれば、

ある程度は需要波動に基づく、リズムを持った読めるビジネスができるものですが、

悩ましいのは、そのリズムを乱すイベントの数々です。

商業施設の期間限定プロモーションはまだしも・・・

昨今、ECモールなどでの

突発的なセールによってつくり出される需要波動=異常値

は実に頭が痛いです。

確かに、スタートアップ期に急速に一定の規模に拡大するためには
それが必要な時もありますし、その一定規模までは対応可能でしょう。

しかし、この異常値を当たりまえに自転車操業的なビジネスを続けていると
操業リズムが崩れ、

売上が上がっても経費ばかりが掛かり過ぎて、利益が残らない

そんなことが社内の身の回りで起こって全体が混乱してはいないでしょうか?

まずは、生活者の需要がつくり出す、自然な需要波動に忠実に。

それを踏まえた上で、意図的に作り出した二階建ての二階部分の異常値なら
まだ許容範囲と言えるでしょう。

 

食品業界の需要予測の話を聞いて、アパレル業界の需要予測の話をした上で、

その後パネラーの皆さんと行ったディスカッションがとても面白かったです。

そこで気づいたことは・・・

食品のような日販品を扱う小売業では
商品を仕入れる人と販売する人の業務サイクルが近いこと。

なぜならば、

毎年、品揃えが大きく変わらない商品を
共に短期間で調達して、短期間で売り切ろうとしているからです。

ですから、仕入担当も販売担当も息を合わせやすいのです。

一方、

アパレルのような専門店では

商品を仕入れる人は
主に次のシーズンの仕入れのこと、つまり、数か月先のことを考え

販売する人は
今日、今週、今月のことを考えているため、

両者の業務のリズムと重きを置いているスコープは大きく異なります。

専門店の場合、

季節ごとに変化するたくさんの商品をたくさんの仕入れ先から仕入れますので

「調達」と「販売」が役割分担できるというメリットはありますが・・・

業務サイクル、リズムの違いから、両者の思いが噛み合わず、

売り逃しをしたり、逆に過剰在庫を抱えてしまうデメリットもはらんでいます。

長年、ファッション業界を見ていると

かつては販売をしていた人が調達側にまわった途端
作り手の都合に変わってしまうことを痛感します。

小売業はあくまでも顧客を中心にした変化対応業

需要が見え始めたものに対していかに変化対応できるかがキモになります。

生活者そして、それをお手伝いする販売スタッフ目線で
どう柔軟にサプライチェーンをコントロールするか

いつになっても、それを忘れてはいけないことを
同じ生活者を相手にしている異業種の方々の話を伺いながら、
ますますその思いを強くしたものでした。

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最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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May 24, 2022

ECモールとブランド実店舗との協業 ZOZOTOWNのゾゾモが提供する店舗への来店促進機能

Zozo5月24日の繊研新聞にZOZOTOWNの新サービス、ゾゾモが順調に拡大しているという記事が掲載されていました。

このサービスは顧客がZOZOTOWNで見た商品を店舗で見たいと思った時、在庫のある店舗の場所を確認した上で取り置きができる機能で、同社はこのサービス機能経由で、顧客をテナントの実店舗に誘導し、その商品が実際購入につながった時は12%の手数料を受け取るというサービスです。

記事によれば、対象店舗700店舗からスタートした取り組みは現在、1400店舗まで広がっているようで、実際にブランド側からも評価を得ているとのこと。

以前から、

日本最大級のトラフィックを誇るZOZOTOWNで見た商品をスクショして店舗に持ってくるお客さんが多いことは、多くのブランドの方々から聞いていましたが(その購買行動は非常によくわかります)、

顧客を取り合うのではなく、お互いのチャンスを顧客購買行動に逆らわずにサポートするために、
ZOZOTOWNがその機能を実装し、ブランド実店舗と協業することは面白いと思っていました。

今や、自社ECは実店舗のユーザーの利便性のために活用し、ECモールは新規顧客との出会いの場と使い分けるブランドが多い中、

手数料はかかりますが、新規顧客を店舗に誘導できる理にかなったサービスだと思います。

ZOZOTOWNの集客力を利用しながら、モールの中では埋もれないように自社商品が上手く検索してもらえるように工夫をし、ゾゾモ経由でいかにリアル店舗で新規顧客を獲得するか、この機能を利用したブランドの知恵の絞りどころいろいろありそうですね。

関連エントリーーZOZOの商品取扱高手数料収入以外の収入に注目

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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May 16, 2022

世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10 

Zara-london_20220516125801世界がパンデミックからの回復が進む2021年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

今回(2021年)、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2022年1月末の €=128.66円、スウェーデンクローナ=12.24円、US$=115.14円、英国£=154.72円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2022.1期) 3兆5,659億円 -2.0% 5,509億円 15.4% 6,477 ZARA
2位 H&M (瑞;2021.11期) 2兆4,341億円 -14.6% 1,867億円 7.7% 4,801 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2021.8期) 2兆1,329億円 -6.9% 2,490億円 11.7% 3,527 UNIQLO
4位 GAP (米;2022.1期) 1兆9,278億円 +1.9% 935億円 4.9% 3,399 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2021.9期) 8,653億円 -28.2% 642億円 7.4% 398 Primark
6位 ビクトリアズシークレット (米;2022.1期) 7,831億円 -9.7% 1,003億円 12.8% 899 Victoria’s Secret
7位 NEXT (英;2022.1期) 7,522億円 11.5% 1,393億円 18.5% 477 NEXT
8位 ルルレモン (加;2022.1期) 7,221億円 57.2% 1,538億円 21.3% 574 Lulu Lemon
9位 しまむら (日;2022.2期) 5,836億円 11.8% 494億円 8.5% 2,204 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2022.1期) 5,783億円 16.3% 682億円 11.8% 1,133 AEO

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の5位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

まず、回復が最も著しいのはアメリカ勢ですね。政府から消費者に手厚い給付金が何回も支給されたアメリカの小売業は総じて活況とのこと。

ギャップ、バナリパはリストラ中もオールドネイビーが絶好調のGAP、
前年にLブランズ社から分社化されたヴィクトリアズ・シークレットのカムバック、
エアリの評価が高いアメリカンイーグルの業績回復、黒字化が顕著です。

欧州市場がメインマーケットのため、まだ回復途上ではありますが、ZARAを展開するインディテックスも、中国で不買運動が起きて大きく売上を落としたH&Mも、アメリカ市場の業績がそれ以上に好調で、その好景気の波に乗ったと言っても過言ではありません。

関連エントリーー分社化が完了し、ヘルス&ビューティー企業となったLブランズ(エル・ブランズ)

次に、外出自粛、営業制限で加速したEコマース対応について。
店舗の売上回復と共に、EC売上比率が下がった企業が多いですが、引き続き各社のEC売上そのものは伸び続けています。

特に各国のEC倉庫在庫と店舗のバックヤード在庫の一元化が完了したインディテックス(EC化率は前期32.4%→当期25.5%)、

EC注文の翌日店舗無料受取りを可能にしているネクスト(EC化率は65.3%→63.8%)の伸びは大きいです。

コロナ禍が加速させた、オンラインとオフラインを行き来してお買い物をする消費者購買行動へのシフトに対応することは小売業にとって待ったなしであることは間違いありません。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックスの2022年1月期(FY2021)決算。最高益間近の回復力の源泉はオムニチャネル施策と・・・

関連エントリーーロンドンで進化するクリック&コレクトと通販受け取り拠点の多様化

その一方で、トップ10企業の中でも最低価格帯のプライマーク(第5位)は、引き続き、一切、Eコマースを行っていません。

但し、オンラインサイトの掲載商品比率を全体の70%まで上げ、サイトで見た商品の近隣店舗の在庫を表示することで、店舗でのお買い物前にオンラインでスタイリングや商品の下調べを楽しめる環境は整えています。

しまむらも引き続き売上は全社売上比1%にも満たない状況です。しかも、EC売上の9割は店舗で、送料無料で受け取られているという現実。

2社の動向から読み取れるのは、低価格品を扱う企業にとっては、送料のかかる宅配ECは適しづらいということでしょう。

このように、EC購買が進む時代においては、在庫と物流がカギを握ることになりますね。

この点に早くから投資をし続けているのは、ネクスト。

同社は自社商品以外のブランドも自社ECで販売したり、自社物流網に乗せて配送したりしています。更に、自社が構築したインフラを活用し、顧客向け宅配物流(フルフィルメント)や他社のECサイト運営代行まで手掛け、いわゆるプラットフォーマーとしての収入も高まって来ています。

また、物流の重要性に目をつけた、アメリカンイーグルは3PL(サードパーティロジスティックス)の物流企業を買収し、他社のEC販売商品も運び始めました。

各社の取り組みから、これからの流通はいかに物流に投資するかの時代であることも読み取れます。

最後になりましたが、

今回、ヨガやランニング用のアスレチックアパレルを販売する、いわゆるライフスタイル提案型のルルレモン社(カナダ)が世界トップ10規模になり、営業利益率21.3%!という10社中、最も高い営業利益率で成長を続けていることを指摘しておきたいです。(EC化率は前期52.0%→当期44.0%)

これまでバリューやコスパの競争であった世界の大手アパレルチェーンの一角に・・・

いよいよライフスタイル、高付加価値商品、コミュニティストアをテーマとしたチェーンが食い込んで来たのは

新しい時代の幕開けではないでしょうか?

ルルレモンのランクインを歓迎し、今後もそんな付加価値提供型の企業が成長企業として台頭してくることを期待したいと思います。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)WWDJAPANオンラインセミナー「「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 

 お申込みはこちら https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/ 

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 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

 

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May 12, 2022

【このセミナーの受付は終了しました】5月26日(木)オンライン経営セミナー 「3つの視点を共有するだけで、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!ファッションストアの在庫コントロールの組織づくりの秘訣」

2022次回は5月26日(木)15:00~18:00に開催します。

シーズン商品の販売期間という「制約」の中で、いかに粗利高を最大化しながら在庫を売り切るか?
事業年商10億円の「過剰在庫の壁」、年商30億円の「組織連携の壁」を乗り越え、在庫を売り切る利益体質のチームをつくって次のステージを目指す。

在庫コントロール実践指導の業界第一人者である講師が、多くのクライアント企業さんと共に実践して成果を上げた、その中でも、特に再現性の高いメソッドにフォーカスしてハイライトでお伝えします。

たった3時間のセミナーに参加するだけで、自社の現状の在庫運用の問題点が明らかになり、これから進めるべきことの優先順位がわかるお得なセミナーです。
【日時】2022年5月26日(木)15:00~18:00 @オンライン 日本全国から参加頂けます。
【タイトル】3つの視点を共有するだけで過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!利益倍増!!「ファッションストアの在庫コントロールの組織づくりの秘訣」
【講師】 齊藤孝浩(ファッション小売業の在庫最適化指導の第一人者、「ユニクロ対ZARA」、「アパレル・サバイバル」著者)
【参加費】 お一人様 25,000円(税込)
  ※業界初!自社の在庫コントロール環境の進捗度がわかるセルフチェックシートなど参加2大特典あり
【定員】このセミナーの受付は終了しました。次回は7月開催の予定です。

 詳しくはこちら→ https://dwks.jp/seminar2022/

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May 02, 2022

モンベルに学ぶ、ライフタイムバリュー創造マーケティング

20220509_083147ゴールデンウィークの休暇中に島根県出雲から鳥取県の大山(だいせん)あたりを巡った際に、アウトドアウェアと用品を全国展開するSPA企業、モンベルの大山店を訪問しました。

このモンベル大山店は以前、日経MJに掲載されていた、創業者で代表の辰野勇氏のインタビュー記事を読んで、一度行ってみたい、と思っていたお店でした。

コロナ禍で野外活動ブームが起こり、アウトドア関連は好調という見方もあるかも知れませんが、好調と思われるモンベルも都心店は大きく影響を受け、一部店舗の閉鎖に踏み切らざるを得なかったそうです。

その一方で、これからの出店に力を入れる立地はここだ、と確信したのが、ユーザーが実際にモンベルの商品をアクティビティに使うロケーションへの出店だったそうです。

モンベル大山店は大山の麓、登山口の近く大山寺エリアにありますが、その象徴となる店舗立地なのです。

店舗を訪れると、

品ぞろえ的には全国とさほど変わらず、そこにプラス、当地のお土産ものがあるくらいの違いですが・・・

顧客が天候や気温の読み違いから、登山前に買い足したくなるアイテムの数々がレジ前に並び、

また、登山後に今回、身に付けて来たウエアやグッズを実際に使ってみて、顧客が感じたお困りごとや改善点をスタッフが解決するような接客をしているシーンを訪問時に何組も見かけたものでした。

これらは明らかに都心店での顧客の使用前の購買行動とは違った、使用直前、直後のリアルな顧客の購買行動に他なりません。

小売業の出店の定石は・・・

流動人口の多い都心に出店するか、

家賃が安く、ローコストオペレーションで成り立つ立地、

というのがこれまでの小売業の常識でした。

しかし、モンベルは逆に、ユーザーがアクティビティのために実際に自社商品を使うロケーション(消費地)に出店するという、

逆張りながら、マーケティング的にも正しいアプローチも行っていることを現地で感じて感心したものでした。

更に、参考になるなと思ったのは・・・

モンベルクラブというメンバーシップ制度

これはライフタイムバリューを目指すブランドにとっての会員制としてお手本のひとつだと思います。

年会費は1,500円、最低5%還元のポイントが貯まる権利を付与するメンバーシップに加入頂くことで、

入会顧客さんには年複数回の購入をお約束頂くことになります。

その際、500円分のお買いもの券を発行しますから
顧客にとっては実質1,000円の負担になります。

メンバーシップ特典で通常550円かかるECの送料は無料、
店舗からの宅配送料も無料、(カヤックなどの大物は別)などなど。

年2回以上購入&宅配すれば、十分、元は取れそうです。

特典は他にもありますが、

ここまでのところで是非、考えて頂きたいのですが、

各種割引で買上客を増やし、無料でポイントカードを持たせ、ポイントを付与し、

会員顧客あるいはアクティブユーザーがたくさんいる!という企業と

有料で年会費を払ってでも会員になりたい顧客に支えられている企業と

これから、どちらに未来があるでしょうか?

年会費を払ってでも、繋がっていたいと思える顧客をどれだけ増やすことができるか?

顧客のライフタイムバリュー(企業側から見れば1年あたりの購入金額の積み上げ)が経営指標になり、

それらが企業の持続的な成長を支える源泉になる時代に何をすべきかを考える時、

モンベルの「コト」を起点とした出店やマーケティング、メンバーシップの考え方は大いに参考になるのではないでしょうか?

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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