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June 27, 2022

Amazon(アマゾン)はアパレル店でのお困りごとを独自のテクノロジーでどう革新するのか?

Amazon-go_20220709130101年内に開業予定と言われていた、Amazon初のアパレル専門店=amazon style(アマゾンスタイル)が
5月下旬にアメリカ西海岸、ロサンゼルス郊外のモールにオープンし、
早速、体験をされたジャーナリストの方々の体験記事を読むことができるようになりました。

関連エントリーー Amazon(アマゾン)が解決しようとするファッションストアの課題とは?

アマゾンブックス(本屋) や アマゾンゴー(コンビニ)

はそれぞれ本屋、コンビニでの
顧客のストレスにフォーカスした、実に的を得たソリューションだったことは
2019年2月に出版した拙著「アパレル・サバイバル」の中でも解説させて頂きましたが

amazon style(アマゾンスタイル)は
アパレル店で最も大切な場所であるはずなのに、多くの生活者がストレスを感じる場所である
フィッティングルームのソリューションにフォーカスした業態のようです。

皆さんもアパレル店でお買い物する時に、どんなストレス感じているか、
そのシーンを思い浮かべて見てください。

実は、アパレル・サバイバルを書いた2019年時点では

アメリカで体験した、DtoCブランド、BONOBOS(ボノボス)のガイドショップという
試着を目的にしたショールーム店舗のフィッティングルームの大きさに
アパレル店のあり方を感じたものでしたが、

その時は、同時に、店舗でできるのは商品選びと試着のみで、
決済と商品受け取りはオンライン注文→宅配が前提だったため
「買ったものが持ち帰れない」というストレスというか、違和感を覚えたものでした。

ジャーナリストの方々のレポートによれば、
アマゾンスタイルは正しく、フィッティングルームにフォーカスをし、
(2層の店舗の2階は40ものフィッティングルームを有する)

店内では、接客なしで、品定めが出来、着たい服をスマホアプリでスキャンすることで
それらが用意された試着室で試着ができるだけでなく、AIによるレコメンド品も同時にフィッティングルームに用意されており、
入室したフィッテイングルームからも、追加で試着要望を出せ、
気に入った購入商品は持ち帰りも宅配も出来るようですね。
(フィッティングルームの裏で、テクノロジーと作業員が動いている)

記事を読む限り、アパレル店における顧客のストレスに対するアプローチは
それなりに的を得ていると思いました。

そして、Amazonのことですから、これまで同様に、実際に運営する中で、
現在の問題点もアジャイルに修正して行くことでしょう。

やはり、百聞は一見にしかず、
自分も早く現地に行って自ら体験し、
これから、未来に向けてアパレル店が顧客最適にどのように変わって行くのか
想像をしてみたいと思ったものでした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】アパレルビジネスはフィティングがカギ。デジタルシフトが進む中、オムニチャネル時代の顧客最適なビジネスとリアル店舗のあり方を考えるビジネス読本です。

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June 20, 2022

原価高騰時は率重視から額確保優先へ

Photo_20220709120301先週開催したWWDJAPAN主催
アパレル値上げ対策セミナー

タイムリーな話題ということで
有料セミナーにも関わらず
定員いっぱいの参加を頂きました。

ありがとうございました。

小売業、特に食品やガソリンのような生活必需品ではない、

ファッション流通においては、明らかに価格と販売数量は反比例の関係にありますので・・・

原価が上がった分、そのまま価格転嫁をすればよい、という話ではありませんので

価格設定は慎重に行いたいところです。

セミナーでは、小手先の対応だけでなく

・価格設定の基本

・プライスポイント及び周辺価格帯のバランスの取り方

・大手SPA各社の対応

などのお話をしながら

高騰する原価の緩衝材として

値下げの見直しや

販管費との向き合い方までお話しました。

小売業が体質改善の覚悟をした上で
いかにサプライチェーンと歩み寄って協力体制がとれるか?

原価率重視の仕入を一旦やめて、

営業利益を残すため、粗利率は下がっても、
最終粗利額の確保を目指すことを推奨します。

取り組むにあたっては・・・

まずはどれだけ値下げをしているか
その「原資」を把握するところから始め、

シーズン中の在庫コントロールでいかに、各種ロスを減らすことができるか

それが数十年に一度、押し寄せる「大波」の中で
生き残るカギになることでしょう。

秋冬以降、価格政策で失策をするところも少なくないと思いますので、

顧客との価格のお約束を維持しながら、上手に平均売価を上げ、

経営に必要な利益額を確保するように全社のオペレーションを向け

ピンチをチャンスに変えましょう!

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動に対して品揃え計画(MD)およびシーズン中の在庫運用(DB)を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。商品政策と在庫運用のヒントが満載。経営者様、経営企画の方、MD、DB職の方に読んで頂きたいです。

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June 14, 2022

ユニクロが秋冬から値上げする商品、価格を据え置く商品とその意図は?

Uq-harajyuku_202206141302016月7日のユニクロのメディア向け秋冬展示会で一部の商品の値下げを発表しことを、メディア各社が大きく報道していました。

各社の報道によれば、値上げする秋冬商品の税込価格は、

フリースが従来の1990円から2990円へ、

ウルトラライトダウンが同5990円から6990円へ、

ヒートテック肌着(極暖)は1500円から1990円へ、

同(超極暖)は1990円から2990円へ、

カシミヤクールネックセーター(ウィメンズ)は8990円から9990円

という感じです。

一方、なぜか値上げする品目だけを取り上げ
ヒートテックの通常モデルの990円、ジーンズの3990円など定番品の価格の据え置きについては報道しないメディアもあったのが、値上げだけに注目しているようで、逆に不思議に感じました。

いわゆる「ユニクロプライス=1990円」の象徴であるフリースが1000円値上げになったことはキャッチーなニュースですが、

エントリー商品と言える、多くのお客さんが数をたくさん買ったり、目的購入をされる商品の価格を据え置いたのはとても賢明で、

むしろそういった入口にあたる商品との差別化が明確に図れたり、

上層マーケットではもっと高く売られているアイテムを値上げすることによって、
商品開発者がどんな付加価値をつけるか、にチャレンジをすることは

柳井会長が言われた通り、考え抜かれた結果なのだと合点が行きました。

フリースあたりはもうプロダクトライフサイクル的も衰退期に入っている可能性があるので、むしろ値段を上げて革新的に生まれ変わるリニューアル(脱皮)の良いチャンスかも知れませんし・・・

今回のユニクロの秋冬からの価格設定のニュースを聞いて
あのユニクロですら値上げをしたのだから、うちも全般的な値上げをしてもよい!などと手放しに考えるのか

ユニクロが据え置いたアイテムとそれらの価格の意図に注目して、
自社に照らし合わせた場合、どこで原価アップ分を吸収し、どこで付加価値を表現するかを考え抜いた上で価格設定をするのかで

秋冬の買い上げ客数と利益額は大きく変わって来るでしょう。

今回の決断はシーズン仕入れを担う商品部MD職任せのマターではなく、

事業を大きく左右する、まさに経営者マターの話です。

まずは小売業が方針を明らかにし、リーダーシップを持って、会社ぐるみでサプライチェーンのお取引先と相互協力体制をとり、この難局を乗り越えましょう。

なお、原油や食品など原材料相場が製品価格に直結する、原価構成比に占める割合が高い生活必需品の消費財と、同じ消費財でも、アパレルのような原材料に対して、つける付加価値の方が圧倒的に大きい、そして、代替え可能な選択肢が多い商品を同じ理屈で考え、食品は値上げしているのだから、衣料も値上げすべき、という理屈には無理があると思っています。

食品は食べなければ生きて行けませんが、衣料品の場合、明らかに高くなったと感じたら購入を見送ったり、本当に必要であれば、比較的安価な他社で購入することになるでしょう。

小売業にとっては購入頂ける客数が生命線のひとつです。

今回、思い切ってリブランディングするなら話は別ですが・・・

客数を左右する価格設定は古い原価率に基づく公式ではなく、考え抜いて再定義する、いい機会にしたいものです。

6月17日に開催されるWWD JAPAN主催の アパレル値上げ対策セミナー(オンライン)に登壇します。
原価高騰下の価格見直しや業務再構築の気づきを得ていただければ幸いです。(6月16日正午締切です)

https://wwdjapan-businessseminar20220617.peatix.com/

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動に対して品揃え計画(MD)およびシーズン中の在庫運用(DB)を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。経営者様、経営企画の方、MD、DB職の方に読んで頂きたいです。

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June 06, 2022

晴雨兼用アイテムの市場潜在性

Photo_20220613130001梅雨の季節になると

百貨店の傘売り場やレイングッズ販売の
ニュースを見かけるようになりますが、

6月2日の日経MJの「ヒットのクスリ」などに
富山県のレイングッズメーカー、カジメイク社が

おしゃれなレインウエアやグッズを販売する直営店
「アメトハレ」を新宿の丸井に開いたという記事が掲載されていました。

以前もブログでご紹介させて頂きましたが

関連エントリーー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

気温や天候に大きく左右されるビジネスであるファッション販売に携わっていると
最高気温、最低気温、天気を気にしながら
クライアントさんたちと在庫コントロールを考えるわけですが、

上記エントリーで過去の天気をご紹介した以降も

気象庁の例えば東京都心部のデータでは

春は約2カ月
夏は約5カ月
秋は約1カ月
冬は約4カ月

※注:春は最高気温15度越え、夏は同25度越え、秋は最低気温が15度以下、冬は同10度未満の日にちが継続的に続き始めるところでカウントしています。

であるのと共に、

年間降水日(日中の天気に雨が含まれる日)は毎年100日を超えているのが現実です。

ちなみにカジメイクさんのアメトハレのサイトを見ると、
富山県は1年の半分の日に雨が降る全国でも雨が多い地域のようですね。

アメトハレサイト 

北陸が合繊生地の産地というのもあるかと思いますが、
そんな環境が同社のビジネスの原点にあることが頷けます。

ここまで気温や天気の傾向が、従来の業界の常識と変わって来ていることが
データではっきり認識できるのなら・・・

もう、天候を「売れなかった言い訳」にするのはやめて(笑)

むしろここまで長くなった夏、そして雨の日が多いことをいかにビジネスチャンスに換えるか?

を考えたい、という話は既述のエントリーでもお伝えしたことです。

生活者のお困りごとのひとつに

雨の日に着用して出かけてもストレスを感じない服や靴があり、

一方、昔ながらの雨具専業メーカーさんが提供する
機能第一の雨の日専用グッズでは満たされない需要があるとします。

私も雨の日対応グッズをいくつかもっていますが、購入の際、選択肢が限られ、使用頻度が低い上に
昔ながらのデザインのものが多く、結局、妥協しているのが現実です。

そんなレイングッズを使用シーンが限られる「特殊な商品」ではなく
年間の3分の1以上の日に使える大きな潜在市場ととらえると

どんなことが考えられるでしょうか?

雨の日はもちろん、晴れの日でも普通に着る、履く、使うことができる

デザイン性や使い勝手を持つことがマーケット拡大のひとつのきっかけになるかも知れません。

ここ数年、家でも洗濯できる服が多くの生活者に支持され、「選ばれる基準」になったように

雨の日にも着ることができる晴雨兼用という概念はこれから「選ばれる理由」になるかも知れませんし、

また、サステナブルの観点から購入した服のメンテナンス情報を発信するアパレル企業が増えているように

雨で濡れた服や靴の手軽なメンテナンスの提案は

生活者に潜在的なお困りごとを認識してもらうことで開拓余地のある大きいマーケットの開発につながるかも知れませんね。

作業服として開発した商品をアウトドアウエアやタウンウエアとして、提案し一気に購買客層を増やしてブレイクしたのは
ワークマンですが

同社がワークマンプラスやワークマン女子などアウトドア用品店に続いて、最近スタートしたシューズ専門業態の次は
レイン対応グッズの専用業態を出店することを考えているようです。

多くのメディアが注目すると、これからレイン対応グッズにあらためて目が向けられることになるかも知れません。

憂鬱な雨の日の選択肢を楽しく広げてくれる
着用シーンが限られると思われた雨の日の生活者のお困りごとに着目し、

晴れの日にも兼用出来るアイテム これからそんな潜在市場が顕在化して行くような気がして楽しみです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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