ユニクロが秋冬から値上げする商品、価格を据え置く商品とその意図は?
6月7日のユニクロのメディア向け秋冬展示会で一部の商品の値下げを発表しことを、メディア各社が大きく報道していました。
各社の報道によれば、値上げする秋冬商品の税込価格は、
フリースが従来の1990円から2990円へ、
ウルトラライトダウンが同5990円から6990円へ、
ヒートテック肌着(極暖)は1500円から1990円へ、
同(超極暖)は1990円から2990円へ、
カシミヤクールネックセーター(ウィメンズ)は8990円から9990円
という感じです。
一方、なぜか値上げする品目だけを取り上げ
ヒートテックの通常モデルの990円、ジーンズの3990円など定番品の価格の据え置きについては報道しないメディアもあったのが、値上げだけに注目しているようで、逆に不思議に感じました。
いわゆる「ユニクロプライス=1990円」の象徴であるフリースが1000円値上げになったことはキャッチーなニュースですが、
エントリー商品と言える、多くのお客さんが数をたくさん買ったり、目的購入をされる商品の価格を据え置いたのはとても賢明で、
むしろそういった入口にあたる商品との差別化が明確に図れたり、
上層マーケットではもっと高く売られているアイテムを値上げすることによって、
商品開発者がどんな付加価値をつけるか、にチャレンジをすることは
柳井会長が言われた通り、考え抜かれた結果なのだと合点が行きました。
フリースあたりはもうプロダクトライフサイクル的も衰退期に入っている可能性があるので、むしろ値段を上げて革新的に生まれ変わるリニューアル(脱皮)の良いチャンスかも知れませんし・・・
今回のユニクロの秋冬からの価格設定のニュースを聞いて
あのユニクロですら値上げをしたのだから、うちも全般的な値上げをしてもよい!などと手放しに考えるのか
ユニクロが据え置いたアイテムとそれらの価格の意図に注目して、
自社に照らし合わせた場合、どこで原価アップ分を吸収し、どこで付加価値を表現するかを考え抜いた上で価格設定をするのかで
秋冬の買い上げ客数と利益額は大きく変わって来るでしょう。
今回の決断はシーズン仕入れを担う商品部MD職任せのマターではなく、
事業を大きく左右する、まさに経営者マターの話です。
まずは小売業が方針を明らかにし、リーダーシップを持って、会社ぐるみでサプライチェーンのお取引先と相互協力体制をとり、この難局を乗り越えましょう。
なお、原油や食品など原材料相場が製品価格に直結する、原価構成比に占める割合が高い生活必需品の消費財と、同じ消費財でも、アパレルのような原材料に対して、つける付加価値の方が圧倒的に大きい、そして、代替え可能な選択肢が多い商品を同じ理屈で考え、食品は値上げしているのだから、衣料も値上げすべき、という理屈には無理があると思っています。
食品は食べなければ生きて行けませんが、衣料品の場合、明らかに高くなったと感じたら購入を見送ったり、本当に必要であれば、比較的安価な他社で購入することになるでしょう。
小売業にとっては購入頂ける客数が生命線のひとつです。
今回、思い切ってリブランディングするなら話は別ですが・・・
客数を左右する価格設定は古い原価率に基づく公式ではなく、考え抜いて再定義する、いい機会にしたいものです。
6月17日に開催されるWWD JAPAN主催の アパレル値上げ対策セミナー(オンライン)に登壇します。
原価高騰下の価格見直しや業務再構築の気づきを得ていただければ幸いです。(6月16日正午締切です)
https://wwdjapan-businessseminar20220617.peatix.com/
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
【参考書籍】
顧客購買行動に対して品揃え計画(MD)およびシーズン中の在庫運用(DB)を考えるビジネス読本
人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)
こちらは電子書籍 Kindle版 です。経営者様、経営企画の方、MD、DB職の方に読んで頂きたいです。
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