自社の物流機能を他社に提供し、物流倉庫をプロフィットセンターに換えたスクロール360
運営のお手伝いをさせて頂いている日本オムニチャネル協会
https://www.omniassociation.com/
先日開催されたサプライチェーンマネジメント部会の月に1度のセミナーに参加して
とても感銘を受けたお話があったので共有させて頂きます。
お話しをして下さったのは、
大手ネット・カタログ通販会社スクロールさん(旧ムトウ)の傘下で
他社のEC物流を受託する子会社スクロール360の役員を務める高山さん。
お話の内容は、
親会社であるカタログ通販会社の時流に合わせた思い切った事業転換や、
品切れゼロ、残在庫ゼロを目指すサプライチェーンマネジメント
自社の通販事業のインフラのひとつであった物流部門が事業会社として独立し、
他社EC企業のフルフィルメント業務を受託するようになった経緯、
そして、現在進行形の通販物流業務全般の生産性を高めるための工夫の数々でした。
ひとつひとつが目から鱗だったのですが、
今回ご紹介したいのは
時代の変化に合わせた事業転換の話です。
2000年以降にEコマースが急速に普及する以前から
ご存じのように同社を含めて、カタログ通販に取り組む会社はたくさんがありましたが、
同氏によれば、カタログ通販業界にとっての転機は1999年にあったそうです。
楽天、Yahoo!、アマゾンなどのECが台頭し、
カタログ通販の販売量が下降に向かい始めた時、
多くの同業カタログ通販会社が収益確保のために力を入れたのは、
通販会社としての「攻め」の強みのひとつであった
ダイレクトメール(DM)による顧客へのリーチ力を活かした広告営業
つまり、
カタログを会員顧客に発送する際に同封するDMの印刷物から広告収入を得ようとしたそうです。
そんな競合他社らを横目で見ながらスクロール社が通販売上の収入減をカバーするために営業を強化したのは・・・
むしろ「守り」の部門であった物流機能でした。
物流部門を縮小して行く他社に対して、同社は同部門をリストラすることなく、
むしろ急速に需要が伸びたことで、出荷作業に悩む楽天などに出店するEC業者から
物流業務の代行を受託することに奔走したのでした。
その後、時代はご存じの通り、Eコマースの加速度的な伸び、
大手カタログ通販各社もデジタルシフトをしてEコマースに転換するもEC専業には敵わず、売上規模は縮小。
この間、親会社であるスクロールは、直販に固執せず、販路を自ら開拓する顧客ダイレクトのBtoC型から撤退し
全国に顧客基盤を持つ「生協」と組んで、生協を経由したB to B to C型のビジネスモデルに大転換。
一方、物流子会社スクロール360はこれまで親会社の通販出荷を手掛けて来たノウハウに磨きをかけ、
いまや100社以上の他社のEC事業の受発注や出荷代行を担うフルフィルメント会社として成長し
受託拠点である物流倉庫の拡大投資を続けて現在に至ります。
顧客の購買行動が変わる業界の大きな転機に、
過去の「攻め」の強みにこだわった多くの同業他社と、
一方、それまでコストセンターだった物流という「守り」の強みを、Eコマースが伸びて行くこれからの時代の強みと見極めて
プロフィットセンター化した同社の間には、
明らかに明暗があったと思いました。
これは奇跡ではなく・・・
経営者さんが時代の流れを読んだ経営判断に他なりません。
そして、その経営判断ができるだけ、
「守り」の物流部門が単なるコストセンターではなく、
将来的にも事業の強みのひとつになると認識されていた経営陣の勝利だったと思います。
長年ビジネスをしていると10年に1度は大きな転機を迎えるものです。
これからどう勝ち残るかを考える時・・・
「強みを活かす」ことは基本中の基本ですが、
ビジネスには何事も
「攻め」の強みと「守り」の強みがあるはずです。
必ずしも「攻め」に固執することが
変わりゆく時代の強みになるとは限らない、
しっかりした機能であれば、「守り」の強みにも十分活路がある、
ということを、
お話を伺っていて思い知らされたものでした。
事業にとって
トップライン(売上)を上げるための「攻め」の商品開発や販売促進やマーケティングが第一ですが、
そこからボトムライン(利益)が確保できるかどうかは、在庫コントロールやロジスティックスなど守りの機能がしっかりしてこそだということを忘れてはいけません。
その表と裏の両輪が上手く回ってこそ、右肩上がりではない、
安定成長時代に持続可能な経営ができるものと確信しています。
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最後までお読み頂き、ありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。
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