« April 2023 | Main | June 2023 »

May 29, 2023

新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)が発売されました。

Finalおかげさまで、来週5月25日(木)に齊藤孝浩の4冊目となる
新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP日本経済新聞出版社)が発売になりました。

4年間、WWDJAPANに連載を続けてきた「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)で紹介した企業を中心に、

主に決算書情報などから読み取れる、コロナ禍を経て勝ち続けている企業のビジネスモデルが、従来の業界の常識と何が違うのか、その優位性、将来性をわかりやすく図解してみました。

勝ち続ける企業は・・・業界の常識とは真逆のことをやっていた。

というのがこれらのビジネスモデルとゲームチェンジャーたちのビジネスモデルを分析しての気づきです。

そして、損益計算書(PL)の強さが お金の使い方にあるということ。

ZARA(ザラ)から始まり、SHEIN(シーイン)、ZOZO、ワークマン、コストコ、LVMH(モエヘネシールイヴィトン)、丸井グループ、メルカリ、DOORDASH(ドアダッシュ)などなど

が登場しますが、彼らは

・在庫の運用のしかたが上手く

・商品を仕入て売る以外にも収益源を持ち

・自前でしくみを構築したからこそ、そのインフラが他社にも売れるプラットフォーマー的な役割を果たし

・小売流通業がエンドユーザーから代金(日銭)を預かることの大切さを知っています。

上記の企業の他にも、ユニクロ、ニトリ、H&M、クラシコム、モンベル、ヤマト運輸などのビジネスモデルも登場します。

一応、専門書ではありますが・・・

グラフやイラストを多様し、誰もが知っている身近な企業の財務体質とビジネスモデルを、

「ですます調」で綴ることで、

多くの方に読みやすい体裁にしております。

一番読んで頂きたいのは、これからビジネスモデルを見直したい経営者さん、

新しいビジネスモデルを一から始めるスタートアップ企業や起業家の卵の方々、

そして、流通企業の幹部になって、PL管理に責任を持っている方々にも、

競合他社ベンチマークのアプローチも学んでいただけると思いますので、

是非読んで頂きたい内容です。

Amazonでのご購入はこちらから 

図解 アパレルゲームチェンジャー

| |

May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 今回の記事の内容をライブで深堀り解説します。

お申込みはこちらから https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/
 

| |

May 01, 2023

しまむら、2期連続最高益更新!育つ第2、第3の業態、そして値下げを抑える在庫コントロールの力

Photo_20230912214901東洋経済オンラインに2期連続で最高益を計上した、しまむらの決算について、決算発表資料から読み取れることをまとめさせて頂きました。

「しまむら」意外と"値引き少ない"儲けのカラクリ~2期連続最高益更新「決算書の裏側」を読み解く

同社のリボーン(生まれ変わり)を支えているのは、ファッションセンターしまむらの婦人服カテゴリーだけに頼らない経営です。
過去2年のしまむら社の復活劇の立役者は、ベビー、キッズを対象にしたバースデーの躍進と利益率、カジュアル業態のアベイルの黒字化と利益率上昇、そしてファッションセンターしまむらの回復途上の婦人服をカバーしたキッズやインテリアのようなカテゴリーでした。
しまむらとて、婦人服が絶好調というわけではないんですよね。
それから、もうひとつのしまむらの決算書の見どころは決算説明会資料で開示している、業態別の値下げコントロールによる値下率の低さです。
同社は主要業態(ファッションセンターしまむら、バースデー、アベイル)について、粗利率と値下率(値入率がどれだけ下がったか)を開示しているので、仕入原価率が計算出来てしまいます。
そこからわかるのは、ファッションセンターしまむらの値下の低さです。
しまむらのお店行ったことがある方は、しまむらの値札が赤いので、値下げが多い会社だと思っているかもしれませんが・・・
実はもともと値段が安くて、値札が赤いだけで、値下は少ないお店なんです。
元値からの平均値下率(売価変更率)は計算すると10%以下。
おそらく、日本のファッション流通企業の中でも最も値下の少ない業態のひとつと、言えましょう。
ここまで決算書で明らかにしている会社はあまりお目にかかったことはありません。
それだけ自信があるということなのでしょう。
(前社長さんの時は一時的に非開示になっていましたが)
このように、上場企業の決算書は、
自社の改善を考える時の改善のヒントがつまっています。
上場企業の見習うべき企業の気になる開示数値を見つけて、
ベンチマークしてみて下さい。
取り扱う商品や価格帯や売り方は違っても
しまむら社の決算資料は生きた教科書のひとつだと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

| |

« April 2023 | Main | June 2023 »