中国産地で思い出される日銭商売である小売業の原点
5月にSHEIN(シーイン)の生産背景である中国広州のアパレル産地視察で考えさせられたことが
いまだに頭から離れないでおります。
シーズン単位で事前に見込み生産をすることが
あたりまえになってしまっているアパレル業界において
広州で盛んに行われている
5日間で100枚をつくって納める小ロット生産は
生産者は素材の用意さえがあれば、すぐに作ることができ
商品を納品されたEコマースの販売者はすぐに売り始めることができます。
従って、Eコマース事業者は
消費者からの現金回収も速くできるわけで
速く、回収できた現金を
サプライチェーンに回すことができれば
関係各社は資金繰りの心配も少なくなり
従業員にも、仕入先にも
早く支払うことができるようになるわけです。
SHEIN(シーイン)ら、IT業界から来た産直越境EC企業らは
最速で週ごとに納品商品の代金をサプライヤーに支払うことを知りました。
そんな誰もがわかる
サプライチェーンが潤う単純なロジックに対して
一方、近年、主流になっている大量生産はというと・・・
確かにロットを大きくすることで、原価は安くなるかも知れませんが・・・
素材の用意から
↓
製品をつくり始め
↓
完成品を売り始めて
↓
代金が回収できるまで
販売期間と比べて、
果てしない時間がかかるわけで
生産中はサプライチェーン各所に
原材料や仕掛在庫を含む
在庫=キャッシュを寝かせてしまうことになる
そんなことが 実際、生産現場各所で起こっているわけです。
そうすると、現金化に時間がかかるため
仕入先には支払い期日を先延ばししてみたり
資金が足りなくなる場合は銀行借り入れによって資金を繋いだりしているのが現実。
関係者みんなが頑張っても・・・
販売現場では過剰に抱えた在庫を値下げ販売する悪循環。
これって、いったい、何のために、
誰のために仕事をしてるんでしょうね。
以前、バングラデシュで生産する
商社の方に伺った話を思い出します。
バングラデシュの大手の工場主は売上高をたくさん得たいために
何十万枚、時には何百万枚の受注を要望すると言います。
ところが、そんな大ロットだと
素材の調達にも時間がかかり、納品するまで時間がかかるため
納品が完了するまで
従業員に給料が払えない
原料代金も払えない
という状況に陥りがちとのことでした。
コストは安くなるけど
サプライチェーン各所にキャッシュを寝かし
販売にあたっては値下げ在庫処分のリスクをはらむ大量生産
一方、
コストは多少高く、当初値入は少なくても
関係者がキャッシュで潤い値下げリスクも小さい、小ロット多頻度生産
はたして、一体どちらがいいのでしょうかね?
安く仕入れても
多くの売れ残り在庫を抱えた
現場をたくさん見て来ました。
一方、あぁ、もう少しつくればよかったね
と言いながら
次のコレクションを
前倒し販売していた時もありました。
双方を思い出せば
どちらが上手く行っていたかは明らかです。
これって
実際、冷静に原価計算をしてみれば
原価が安いことよりも
値下げが少ない方が儲かることがわかるはずなのに、
組織が大きくなればなるほど
仕入れ担当者のひとりの判断で出来ることではなく
会社のルールを変える必要があることなので
トップやリーダーの覚悟がいることだとしみじみ感じます。
かつて、アパレル専門店の経営者さんたちは
起業して間もないころ
1カ月分の在庫を仕入れて店頭に並べ、
売った代金で来月売る商品を仕入れに行く
そんなことを繰り返していたころがあったと思います。
そのころは、
在庫日数、30日!在庫回転率は10回転以上!
でまわっていたのではなかったでしょうか?
そんな経営者さんも、最近は見込み仕入や見込み生産が増え
在庫回転率が落ち、支払いをいかに先延ばしするかを考えている
なんて話もよく耳にします。
まさか中国の広州で、忘れかけていた
小売業の日銭稼ぎ商売の原点を思い出される
ことになるとは思いませんでした。
今一度、キャッシュフローを重視した小売ビジネスの原点を
思い直す時、と感じる今日この頃です。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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