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September 25, 2023

すべてがつながっていることがSPA(製造小売業)の最大の強み

Zara_tokio-2本日の日経MJにスーパーマーケット成城石井の原社長のインタビュー記事が掲載されていました。

営業利益率が2-3%というスーパーマーケット業界で
2023年2月期 年商1102億円、営業利益122億円と 

11%もの営業利益率を叩き出す業界ゲームチェンジャー企業の1社です。

それを可能にするのは・・・

卸問屋だけに頼るのではなく、
自ら、産地に買付に行ったり、原料から商品開発をする
型破りな食品スーパーであるからこそです。

この「SPA(エス・ピー・エー)」という言葉、

一般にビジネス紙誌やメディアでは「製造小売業」と訳されますが

もともとアメリカのGAP(ギャップ)の創業者が命名し
日本のみで普及したビジネス用語(広めたのは繊研新聞さん)ですが

Speciality store of Private label Apparel

の略。 直訳と実態は

自社ブランド、つまりプライベートレーベル(PB)のアパレルを販売する専門店

ですんで、アパレル業界用語のはずが、

ホームファッションでも、メガネでも、食品スーパーでも

経済界はユニクロみたいなモデルのことをSPA(製造)と呼んでしまっているようです。

僕の大学の講義では、一応、丁寧に説明していますが、

今となっては、一般の会話の中で、
僕も含めて、それを指摘し直す人はあまりいないでしょう(笑)

 

さて、このSPA(製造小売業)のメリットって何でしょう。

従来は メーカーが作った商品を小売業(百貨店や量販店や専門店)が仕入れ

シーズン中に仕入れた在庫を「売り消し」て行くのがアパレルビジネスだったところに

自社ブランドの商品開発を行い

顧客との接点である「店頭」や「オンラインサイト」があるからこそわかる
実需要を起点に、品揃えと在庫を調整し

シーズン販売最盛期にむけて、在庫の中味を
最良に整え直して行くのがSPA最大のメリットと言えます。

しかし

今、SPAを名乗っている、あるいはPBに力を入れている
多くのブランドや小売業は

どちらかというと

高い粗利率を得ることが
「目的」になってしまっているのが現実のようです。

本来は、
メーカーに任せていたら、自らコントロールできない

・適品(お客様が望む商品を)
・適時(お客様の需要のある時に)
・適価(納得の行く価格で)
・適量(必要な量)を

自らコントロールすることで顧客の需要に応えながら
利益を最大化するのがメリットです。

このSPAの本質や運用について

日本最大手であるユニクロと
世界最大手ZARAの事例を用いて紹介したのが

「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)
(初版2014年、文庫化2018年)でした。

日本では、もう日経さんに在庫が無くなり・・・
電子書籍か中古でしか読むことができなくなってしまったわけですが

実は、簡体字に翻訳された中国本土では

おかげさまで、今でも読まれていて、重版が続き、今年も新装版が出版されました。

そんなこともあって、コロナ禍が明けに日本に視察に来られる
いくつかの中国大手アパレルに限らず、異業種消費材企業の経営者の方々から

ユニクロとZARAの講演をして欲しい

と頼まれるもので、アップデートしながら、お話ししている次第です。

両社はなぜ、

自国市場シェアNo1になることが出来て

そして

1国にとどまることなく、今でもグローバルに成長を続けているのか

多くの経営者の方々が関心を持つことです。

先に述べた

本来のSPAの強みを十二分に生かしているのが

まさしく、ユニクロとZARAです。

講演では

両社のベーシックとトレンドファッション

という

多くの専門店に共存するにもかかわらず

顧客の期待が違うゆえ、
企業の管理手法も違う商品の

マーケティングとオペレーションの違いと強み

特に

シーズン中の需要に対する変化対応力
(需要連動生産と売り切り術)

を中心にお話しし、

店頭起点の在庫コントロールやサプライチェーンマネジメントが

損益にどれだけ影響を及ぼすかその大切さを伝えております。

講演を聞いて頂いた企業の幹部の方のコメントに

 「すべてがつながっていることが最大の強み。
 一貫していて、淀みなく流れているのがわかる

 それに比べて私たちは各部署が自分たちひとりひとりの仕事には
 誇りを持っているけれど・・・

 同じ社内なのに 全くつながっているとは言えない

 これは彼らが大きくなったから 出来る話ではない

 規模の問題ではない」

というのがありました。

このご意見は本当にその通りだと思います。

中国のアパレル企業はZARAのような製造業出身SPAが多く、
国内生産ができるのに・・・

直営店ばかりではなかったり、
サプライチェーンは分断されていたり・・・

利害関係が複雑、つながっているように見えて
つながっていないところが多いようです。

 

さて、日本に戻って、

多くのアパレル企業がプライベートブランド(PB)を開発し

SPA(製造小売業)を名乗っていますが・・・

顧客とのタッチポイント、そしてアンテナでもある

店舗やECサイトを持つメリットとつながりを

果たして、どれだけ最大限に活かしているでしょうか?

今日の日経MJの成城石井の原社長のコメントの中に

「最大の強みは売り場を持っていることです。今、何が売れているのか、細かいデータを持っていて値段や売り方の展開も状況によって自由に変えられます。」

という、つながっていることのメリットを誇るコメントがありましたね。

SNSによる販促やマーケティングも、もちろん大事ですが・・・

店頭から素材まで、つながっていることのメリットをあらためて考えたい時

「片手は工場に、もう一方の手は顧客に触れていなければならない」
(自分たちがつくった商品をお客様が購入するまで目を離すな)

というZARA(ザラ)の創業者の名言を思い出します。

「ユニクロ対ZARA」 文庫版

Kindleでお読み頂けます。
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最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 19, 2023

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世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

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2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

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執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 18, 2023

在庫をたくさん作らなくても、小ロットでブランドを立ちあげる方法もあるという話

Imag22789月14日の繊研新聞にTシャツなどアパレル製品へのシルクスクリーンプリント加工を手掛ける企業、シルクマスター社がスケートボードへのプリント技術を開発し、発売を始めたという記事が掲載されていました。

この記事を読んで思い出すのが、90年代、アメリカのトレードショーでよく出会った、スタートアップブランドたちです。

当時、西海岸では、独自のグラフィック(CG)を活かして、ブランドを立ち上げ、Tシャツ、キャップ、ショーツ、スケートボードなどにプリントや刺繍を施して、トレードショー向けにサンプルをつくって出展するチャレンジャーたちがたくさんいました。

主に、スケーターブランドの連中ですが、実際にショーで受注をとってから、いわゆるブランクボディと呼ばれる、プリント用の無地のTシャツ、キャップ、ショーツ、スケートボードの板を、在庫を持つサプライヤーから、ケース単位で仕入れ、加工をしてからデリバリーするという手法を取っていました。

そんなスタートアップブランドたちは、小売チェーンのバイヤー向けのBtoB卸ビジネスが主だったのですが、
Tシャツとキャップとショーツとスケボーとステッカーが揃えばれっきとしたストリートブランドの始まりだったんですよね。

当時、世界からアメリカ西海岸に新興ブランドを「買い付け」に来るバイヤーの手伝いをするために、各地のトレードショー周りをしていた私は、

「数量をたくさん発注するなら、ブランクボディを買う金がないから、代金を先払いしてくれないか?」

と申し出てくるスタートアップもあって、アメリカって夢を持って、起業もしやすい環境にあるんだな、って思った記憶が蘇ります(笑) 

もちろん、その後、成功したのは一握りの起業家だけでしたが・・・。

今も昔も、アパレルブランドを起業しようとする方々がいらっしゃると思いますが、

もちろん、どんなブランドにしたいか、にもよりますが、

今どきは、日本でも、わざわざ生地を買って、一からつくる在庫リスクを負う本格的なモノづくりをしなくても、

加工用の製品在庫を持つ専門メーカーさんがいくつも存在しますから、

無地(ブランク)ボディを仕入れて、グラフィック勝負で、プリントをする、刺繍をする、リメイクする。

そのアイテムのバリエーションも、Tシャツだけでなく、いろんなアイテムがケース単位で仕入れられる時代になったので、小資本で、Eコマース発信のBtoCで立ち上げるところから始める起業家も出てきやすい環境にあるんじゃないか、と思います。

手軽になり、参入障壁が下がる分、競争も激しく、創意工夫の勝負であることは間違いありませんが、小資本でもスタートアップできる環境が整い、選択肢が広がり、業界にチャレンジャーが増えて行くことは、楽しみでもあります。

今や有名になったブランドも、最初からお金があったわけじゃなく、

そんな資金の苦労をしながらスタートアップしたんですよね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 09, 2023

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