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November 27, 2023

粗利率100%の広告収入をEC事業の収益源に

Wwdec11月24日の繊研新聞にZOZOのZOZOTOWNでの広告事業収入が急成長していることに関する記事が掲載されていました。

2018年度(2019年3月期)年間14億円から始まった同社の広告収入は
前期(23年3月期)4年目で77億円となり、今期上期も22%増のペースで増加中。

記事の見出しには100億円に迫る勢いと記載されています。

小売業にとって

店舗中心で販売する専門店場合
2大販管費は言わずと知れた人件費と地代家賃ですが

一方、ECなど通販のそれは

広告宣伝費と物流費が大半を占めます。

そのため、ECにおいては
広告宣伝費をどれだけかけて

事業をグロースさせるかを考えるのが初期の「常識」ですが

一方、サイトに集客力が付くと、

出品メーカーから広告宣伝費をもらったり、
他社の集客や販促を手伝う広告収入を得られるようになるものです。

つまり、広告宣伝費ってのは
外部の広告代理店などに払うのが当たり前な費用ではなく、
自社がメディア化すれば、収入が得られるようになるもの。

ですから、せっかく本格的にeコマースに取り組むなら

そのあたりを目指したいところですね。

そんな話をすると

規模が違うとおっしゃる方が多いですが

例えば「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムさんは

年商60億円規模ですが、2億円ものブランドソリューション売上という
粗利100%の、ある意味、広告収入源をお持ちです。

この数字は、同社の販管費の中の

広告宣伝費の半分近くを
自らのメディア化で回収していることを意味しています。

さて、ゾゾの決算データに戻って

同社の受託販売は

商品取扱い高の平均29%が手数料収入となり、同社の売上高になります。

買取販売やUSED販売のような

自社が在庫リスクをとって行っている商売の粗利率は約40%

これ対して

広告収入は

売上高=粗利高
つまり粗利率100%のビジネスです。

ZOZOは今後、商品取扱高の拡大と共に

下がる出荷単価と受託販売の収益性の低下に向き合わなければならない時

同社は広告事業では


出荷する荷物を入れるダンボールをブランドオリジナルにしたり
顧客に届けたいものを同封するような販促支援費も稼ぎに行くそうです。

これまで積み上げた顧客とのつながりが収益性の高い広告収入を生む時

EC担当の方には公式サイトで
是非、そんな風景を見ることを目指して頂きたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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November 20, 2023

伊藤忠商事が中国からの越境EC(BtoB)企業に出資。チェーンストア向けの販路の拡大を目論む。

20230523_102940日経新聞によれば、総合商社大手の伊藤忠商事が、中国製品の越境ECを手掛けるスニフ社(杭州)と合弁会社を設立し(出資比率 スニフ51%伊藤忠49%)、日本未発売商品を中心に中国製品を日本の小売チェーンのバイヤーが買付けすることを支援をするようです(越境ECという形で BtoB輸出入を支援)。

小売業のバイヤーは少量から仕入れることが可能で、発注から店舗への到着まで最短2日程度で納品出来るそうで、出資先は、早期に年50億円規模の事業規模に育てる目標。まずは、伊藤忠が提携関係にあるドンキホーテ向けに取引を始めるようです。

スニフと言えば、中国のECサイト、アリババで国内取引される多数の商品の中から、品質が良く、価格が安いメーカーを選りすぐり、「THE直送便」の名でアマゾンや楽天などで販売する事業者に向けに越境BtoBビジネスを支援して急成長している会社。

杭州のアリババ本社の敷地内に本社があるほど、アリババと親しい関係があることで知られていたベンチャー企業です(社長さんは中国人ですが、日本に留学し、日本の商社でも働いていた日本通の起業家のようです)。

毎年、経産省が調査報告している「電子商取引に関する市場調査報告書」の2022年度版、越境ECに関する情報によれば、あくまでも、BtoC(消費者向け)ですが、

日本から中国に対して 2兆2569億円もの越境ECが行われているのに対して
中国から日本向けのそれは 392億円しかない ことが記されています。

要は、中国人は日本製あるいは日本企業クオリティを信頼して積極的に越境EC購入をしているのに対し、日本人は中国から個人で直接EC購入することには品質や商慣習的に抵抗があるということでしょう。

これまで、中国からの製品輸入と言えば

・商談ベースのBtoB(企業間)OEM生産から始まり

・製品市場(いちば)やタオバオのような卸向けのマーケットプレイスから事業者(卸売りまたはEC販売をする企業・個人事業主)既製品を買付ける(BtoB)ビジネスが広がり

今や、

・SHEIN(シーイン)やTEMU(ティームー)がCtoC(一般消費者向け)の市場を開拓中です。

上記に対して、伊藤忠とスニフの取り組みは

・日本でまだ知名度のない中国メーカーの製品の中から安心できるメーカーや製品を選び
小売チェーンのバイヤーが手軽に買うことができるECのBtoBプラットフォームづくりを始める

と整理すればよいでしょうか。

中国市場は不景気の真っただ中、これまで巨大市場である国内を向いてビジネスをしていたメーカーも海外
に目を向けざるを得ない時

中国国内の内地向け在庫も景気が悪く、積み上がっていることでしょう。

仕入れるバイヤー側も、BtoBと言ってもコスト重視のバルク(大量)発注ではなく、
必要な時に必要な分だけ仕入れる、そのために出張はしなくても済む、ECを経由してBtoB向けにも
小ロット輸入(とは言えチェーンストア向け)が増えるであろうことに
目をつけた伊藤忠とスニフの取り組みはこれからの中国からの輸入ビジネスの新しい幕開けと言えるかも知れません。

これから、在庫を抱えた中国メーカーのはけ口として、このようなプラットフォーム経由でBtoB型で海外市場に出回ることは

昨今のSHEINやTEMUの急拡大を見れば、想像に難くありません。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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November 13, 2023

中国発越境EC企業に学ぶ、新しいビジネス(商売)の作り方

20231113_16522411月13日の日経新聞に

中国発EC、米で急伸 という見出しで

中国を拠点にする越境EC 企業である
SHEIN(シーイン)と TEMU(ティーム―)のアメリカでのシェア拡大に関する記事が掲載されていました。

記事によれば、
アメリカでの今年10月の両社のアプリ月間利用者数は1億1000万人と前年比4倍
(これはあくまでもアプリ利用の数です)

その数はアメリカにおいて、Eコマース最大手アマゾンの利用者の9割に迫り、日本でのデータにおいてもアマゾンの6割に迫るとのこと。

SHEIN はアメリカでのビジネススタートから約10年が経過していますが、
直近の1年間でも倍になるという伸び、

TEMUは昨年22年9月のサービス開始から急増し、アメリカでの
アプリのダウンロード数はSHEINを上回り、トップを争っているようです。

SHEINのインフルエンサーを活用したオンラインマーケティングと国内の小ロット短サイクル生産を組み合わせたビジネスモデルは

中国国内においては、あたりまえで、新規性はなく、

そのため、同社はレッドオーシャンな中国国内市場を捨て、海外にその活路を求めて、見事に成功しました。

それゆえ、SHEINの中国国内での知名度はなかったため、競合企業がその急成長に気づくのが遅く、

SHEINの独走を許してしまったという背景があります。

それを、中国大手企業傘下のTEMUらが猛追するという構造です。
 
そもそも、SHEINとTEMUは同じように語られますが、ビジネスモデルは違います。

アパレル、雑貨中心で、自ら商品企画を行っているSHEINに対し(ODMや国内外のブランド仕入もありますが・・・)

TEMUはアパレルもありますが、雑貨全般でメーカー在庫を消費者とダイレクトにつないで販売するプラットフォーマー的(アマゾンのような)な調達の違いがあります。

価格が激安な理由は

ローカルの中間業者やバイヤーを介さない
「産地直送」だから。

そして、免税措置という

各国の「政府が決めたルール」を上手く利用しています。

いわゆる「中抜き」、であって
既存の、流通経路を崩しているのは確かですが

果たして、これをダンピング(不当廉売)と言ってよいのだろうか?

と報道記事を読んで違和感を覚えることがよくあります。

実際、日本から広州に買い付けに行っている方が

「彼らは我々の市場での買い付け価格で日本の消費者に売っているから、

価格では到底敵わない」

と嘆いていらっしゃったのが印象的でした。

業界の中には

最近報道されないから、ブームも去って下火だろ

とか

原宿のショールーム店もガラガラだし、

と言う方もいるようですが

とんでもない、

報道されないのは、メディアにとってメリットがないからであって、

周りに利用者や話題は着実に増えているし

シーインは女性中心
ティームーは男女共に(男性も少なくありません)

低価格やティーンズ・ヤング向けのアパレルチェーンに行って耳をすませば

「これ(同じような商品)、シーインだったらいくらだった」

という会話が聞こえて来ます。

オンラインという目に見えない拡大だからこそ
危機感を持たないのがおかしい

そんな話を先週も

カジュアルアパレルチェーンの経営者さんや
eコマースのプラットフォームを提供する企業の社長さんとも

世間話をさせて頂いたところでした。

彼らが「個人輸入」を販路にしていることについて、

中間業者の方は
政府が輸入規制するのを期待するのではなく、

むしろ、なぜ彼らが成長しているかを
是非考えたいところです。

ある意味

産地からの逆襲であり

リードタイムを短くして
在庫リスクを回避する
サプライチェーンのショートカット

という 

しがらみに囚われない

イノベーターというか、パイオニアというか
ゲームチェンジャー的な
商売人のアプローチを採っているのであって

「ずるい」と言うのではなく

「もし、あなたが今から新規ビジネスを始めるとしたら?」

どうするかを自問してみたいところです。

マーケティングは世界中のどこにいても
オンラインでリアルタイムにできる時代なら・・・

サプライチェーンは
材料がすべてが揃う、需要にあわせて
すぐにつくって配送できる

そんなところに拠点を置くことを
考えるべき時代であって

SHEINは

それに気づいて
地の利のある
広州を拠点にしたわけで

すでに広州だけでなく、
更なるグローバル化を標ぼうして

ブラジルやトルコにおいて
グローバルサプライチェーンの構築を着々と進めているのです。

同じことを考えて

韓国の調達ルートを見直したり

問屋街を背景にしたり

生地問屋街に拠点を置くことを考えている方々もいらっしゃいます。

アパレルに限定しなければ
もっと幅広い発想ができるのではないでしょうか?

流通は目に見えないところで
大きく変わっています。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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November 06, 2023

古着ブームと価格の高騰、変貌する?古着マーケット

Closet_2023110618380111月2日の日経新聞に「古着高値」「輸入価格3割上昇」というタイトルの記事が掲載されていました。

ここで言う古着はいわゆる「欧米古着」と言われるもので、
国内リユース古着のことではありません。

記事によれば、
ファストファッションブームで古着として耐えうるものの供給が先細りし、
一方、世界的な古着ブームで原価は上がるも
2022年の日本の欧米からの古着輸入量は1万トンを越え、
過去最高の輸入量だったそうです。

枚数にすると3,000万枚くらいでしょうか?
アパレルの国内供給量は37億点くらいということなので
1%弱くらいになるでしょうか?

コロナ以前くらいから
下北沢に古着店が増えている、という話があったので
しばらく気になっていました。

今年になって、久しぶりに当地を見て歩きましたが、
東も西も古着店と飲食店しかないのでは?
と思うほどたくさんの古着店がありました。

記事によれば
コロナ禍前から4-50店増え、
現在下北の街には200店舗ほど古着店があるそうです。

店を覗いて、気が付くのは販売価格が高いこと

ですので、宝物探しをしているお客さんはいるものの
レジで買っているシーンを見ることは少なかった印象です。

以前は、1900円、2900円・・・5000円も出せば、
コーディネートのアクセントに使える品がいろいろ買えた印象でしたが、

そういった低価格帯の店は少なく、
セレクトショップのセカンドラインくらいからそれ以上の価格のお店が沢山増え、

若い世代は、そうやすやすと手が出せないのでは?

と思ったものでした。

このような状況では

輸入古着は輸入量が増えても、
必ずしもマーケットにインパクトをもたらすほど販売数量がそこまで増えるものではないと感じます。

以前、古着やリユースを扱う方々から伺った話ですと、

古着の販売価格に対する仕入原価率は10%以下、
ところが、販売着地のPL上の粗利率は70%程度、

つまり、輸入しても販売できない商品のロスや換金のための値下げなどで
元販売価格に対して2/3くらいはロスがある計算になります。

しかも、古着は新品に比べて明らかに在庫回転が悪いので、
販売チャンスに粗利額をたっぷり稼がなければならないビジネス。

記事のように輸入原価が3割上がっても

そもそも原価率が低いので
販売価格に対するインパクトはそれほど大きくなく

むしろ、競争が激しくなり、
価値のある商品の供給が減ったこともあり

各店が単価を稼ぐために
価格を高めに振った結果ではないかと

古着ビジネスは参入障壁は低いですが

より目利きが求められ、
家賃は下がっているとは思えないので、
ますます生き残りも厳しくなっているという印象です。

今の下北のお店の顔ぶれが
3年後にどう変わっているか?というところです。

ところで、古着の客層には

・ビンテージマニア、
・個性のある1点ものを探すファッション好き、

そして、

・価格が安いから買うという客層

があったと思います。

しかし、今や
最後の価格が安いから買うという世代は
ファストファッションチェーンやオンライン
あるいは国内流通のセカンドストリートのような店
に買いに行っているのでしょうね。

実際、下北沢でも、
欧米古着の古着店の客層とセカンドストリートの客層は
求めるものも違い、明らかに違っていました。

店は増えても、価格が上がれば、
買上客数は減るのは小売りの需要供給の原則

特にティーンズや20歳前後の学生には
古着はハードルが高くなった印象です。

原価や物価の高騰はどうであれ、
学生の小遣いが増えているとは思えないので・・・

低価格のアパレルチェーンでも
以前よりも、親同伴が増えているような印象を受けます。

原価が上がったので企業が値上げする理屈はわかるのですが、
収入の限られた層には払えなくなる

その一方で、海外から、円安に目をつけて
古着の買い付けに日本にやって来るバイヤーも少なくないとか。

オークションサイトやフリマアプリもそうですが、

昨今の古着マーケットは

ファッションに関心を持ち始める世代のためのお店ではなく
そこそこお金を持っている方々や
仕入れて売る、プロ向けのマーケットにもなっているのかも知れません。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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