October 11, 2021

ユニクロがEC注文後、2時間で店舗受取りできるサービスを開始

Uq-tokyo-2_2021101111470110月9日の日経新聞や10月10日の日経MJによれば、ユニクロはEC注文に店舗在庫を引きあてることができれば、顧客の注文後、最速2時間で注文商品を店舗で受け取れることができるサービスを始めたことに関する記事が掲載されていました。


以前はEC注文はEC向け倉庫からの宅配または、店舗受取りだったため、注文後、受け取りまで数日かかっていたものを受取りスピードを大幅に短縮するサービスになります。


同時に、ユニクロ側にとってはECビジネス拡大時代の最大のコスト増となる、「倉庫での個品配送作業費」および「個別配送運賃負担」の軽減になります。


同社では、すでに中国で同様のサービスを提供しており、日本では中国での検証を踏まえた上での実装となるようです。


2019年2月に出版した「アパレル・サバイバル」でも述べましたが、


EC倉庫から宅配または翌日店舗受取りを提供する英国、


国土が広大なため、店舗在庫をオンライン注文してもらい、顧客に引き渡すアメリカ、


諸国の物流事情によって、EC物流は発達して来ました。


そして、近年、欧米さらに中国で主流になりつつあるのは・・・


店舗のMFC(マイクロフルフィルメントセンター)化です。


EC注文を店舗在庫を引き当て、店舗から発送あるいは、顧客に取りに来てもらう、というサービスで、


顧客がオンラインとオフラインを行き来するオムニチャネル(OMO)時代において、


ローカル店舗をローカル需要の身近な物流拠点にしようという発想です。


そして、顧客は、宅配が前提だったEC から、より持続可能な、


顧客が自身の都合で、店舗に商品を取りに来る、というオプションが広がります。


但し、これらは、店舗が大型なのが前提になるでしょうから、


それをそもそも想定していない、商業施設内の小型店舗にそれを強いるのは大きな負担となるかも知れません。


ZARAやユニクロや無印良品の店舗の大型化も、そんな流れを視野に入れた動きですので、是非、注目しておいて、下さい。


先週登壇させて頂いた、


オムニチャネル時代の販売管理&EC向けクラウドシステムを提供するアイルさんのセミナーでは、


ECのボトルネックとして、店舗販売との①商品登録、②販売管理費負担、③集客の違いについて、


ここ数年、関与先とご一緒に考えて来たECとの向き合い方をベースにお話しをさせていただきました。


EC販路の売上を、ただただ、増やせばいい、では儲からない、


やはり、顧客購買行動と在庫と損益のバランスこそが、小売ビジネスにおいて大事であることは言うまでもありません。


最後までお読み頂きありがとうございます。


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩


【おススメ本】進化するユニクロとZARAを通じて、ファッション流通の未来を考えるビジネス読本。


 「ユニクロ対ZARA」 2018年までのデータをアップデートした文庫本








 

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September 20, 2021

過剰在庫を抱えてしまう3つの理由

Wwdjapan-vol29WWD JAPANの本紙に月イチ連載させていただいている
「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の見方)

9月13日号(vol.29)のタイトルは、「事業への投資資金をどう捻出するか」として、
システム投資をするにも、投資する原資がない、と嘆く企業さんが多い中、

投資のための現預金を増やすために「過剰在庫」にメスを入れる、
をテーマに、ファッション企業、特にアパレル企業が抱える「在庫の中味」を可視化するための視点を述べてみました。

仕事柄、多くの企業さんと在庫の中味をご一緒に検証する機会がありますが、
当シーズンの売れ筋在庫、同スロームーブ在庫、キャリー在庫(シーズン持ち越し在庫)にわけてみると・・・

事業拡大と共に、当シーズン売れない、あるいは定価販売しづらいキャリー在庫のウエイト(全在庫に対する構成比)が年々どんどん高くなって行くことがわかります。

気が付いたら、在庫高はこんなに沢山あるのに・・・

毎シーズン、限られた一部の売れ筋商品の「上澄み」だけで
店頭販売やECサイトを回している、

一方、キャリー在庫予備軍であるスロームーブ在庫の対応は後回し、

なんていう実態になっていることも少なくありません。

そんな過剰在庫を少なくするためには・・・

理想を言えば、ZARAのように、必要な分だけつくり、店頭に並べ、用意しておいた素材を活用して、シーズン中に売れるものをつくり足す・・・

そんなオペレーションに取り組むことが、効果的なのですが、
今すぐ取り組むには、実にハードルが高いので・・・

まずは、足元からどう取り組むか、について連載記事にまとめてみたものです。

そもそも、過剰在庫を抱えてしまう理由は大きくわけると
3つあると思っています。

ひとつは

販売力を上回る過剰生産。

過剰生産をしないと原価率が合わないため、何とかなる?と作り過ぎたり、
品番をヒットさせたいために、むやみに増やした不人気色の売れ残りだとか、
売れ筋商品の過剰追加発注がこれにあたります。

次に

販売拠点への過剰配分の放置。

売上予測に基づく初回配分が是正されないと、
売れ点自動補充も過剰在庫を生むという盲点です。

そして
それらがあることを薄々わかっていながら・・・

売れ筋だけを追いかけて、在庫を積み増すものの、

その他の在庫への対処が後手に回り、販売機会を逸し

シーズンが進むほど積み上がるスロームーブ在庫。

その結果、シーズン末に倉庫にキャリー(繰り越し)在庫となる
商品在庫が戻って来るわけです。

そして、また、翌シーズン、

キャリー在庫という足かせ(過剰在庫)を負いながら

新しいシーズンが始まるという訳です。

ひとことで過剰在庫と言っても、要因はいろいろなところにあり、
気づき方や対処方法も違います。

商品そのものの良し悪しやコスパ(適品、適価)が第一であることは間違いありませんが、

仕入れた在庫に対して、シーズン中に適時、適所、適量のアクション取れたかどうかで
シーズン粗利額と最終消化率は大きく変わることを多くの現場で体験して来ました。

B/S(貸借対照表)の左側(資産)を見て頂ければわかりますが、

現預金のすぐ下にある在庫はキャッシュ(埋蔵金)。

商売人にとって、その中味に向かい合い、

タイムリーに粗利を生みだしながらキャッシュに換え、残在庫を残さないように売り切ることで

現預金を保つことの大切さは今も昔も変わりません。

そして、これからは、生み出した利益、キャッシュを

会社の未来へ、同時に、

従業員の成長のための投資に

有効活用して行きたいものですね。

WWDJAPANの記事は、定期購読者の方は無料、そうでない方でも、記事単位でも有料コンテンツとして、お読みになることができます。

https://www.wwdjapan.com/articles/1259258


関連エントリー過剰在庫を持ち越さないために

関連エントリー売上は仕入(MD)、粗利は在庫運用(DB)で決まる

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】10月21日(木)15:00~ 
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今までのやりかたに限界を感じている、何かもっとよい方法はないか、
これから事業で本格的に店舗およびECの在庫コントロールに取り組みたい、
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September 13, 2021

EC拡大時代のダンボールゴミを減らす配送サービスの取り組み

32cimg0465_202109141309019月8日の繊研新聞に、アメリカで複数のブランド、ストアにオーダーしたEC注文に対し、顧客ごとにまとめて、1つの梱包することによって、家庭で出るダンボールゴミを削減する配送サービスについて書かれた記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

日本でも多くの方がこの1年半、ECショッピングを増したことと思いますので、宅配業者さんが荷物を届けてくれた後のダンボールゴミの処理が面倒だったり、

リサイクルできるとは言え、毎回出るダンボールゴミの山を見て、これっていずれは問題にならないのだろうか?と感じていた方も少なくないでしょう。

筆者も正しくその一人です。

記事によれば、そのサービス「オリーブ」を立ち上げたのは、かつてWalmartに買収されて、今や同社の中で、全米小売業において最も積極的なEC関連の投資、取り組みを先導している、ジェットドットコム社の創業メンバーのおひとり。この方は、買収された後もしばらくウォルマートでも勤務されていたようです。

要はアメリカの物販ECビジネスを最も熟知した方のお一人と言ってもよい方が立ち上げたソリューション型のサービスというところも興味深いです。

このサービスの流れは以下の通りです。

顧客から「オリーブ」のサイトまたはアプリ経由で同サイトの登録ブランドに注文された商品は、

 ↓

各ブランドまたはストアの倉庫から「オリーブ」の
配送センター(コンソリデーション+リサイクリングハブ)に届けられ、
(現在ニュージャージー1か所、カリフォルニア州1か所)

 ↓

そこで顧客ごとに「オリーブ」専用折り畳み式再利用ボックスに詰められ、

 ↓

エリアにより、週1回または2回の決まった曜日に着くルート配送便で自宅に届けられる。

そして、要を終えたボックスは同じ翌配送曜日に家の前に出しておけば、「オリーブ」が回収して行くというものです。

ブランドから「オリーブ」のハブに届く時に使われたダンボールはオリーブ側からリサイクル業者にまとめて引き渡されて処理され

この一連のサービスに対して、オリーブ側は売り手から売上の10%を手数料として徴収するそうです。

 

「オリーブ」の創業はコロナ禍の20年4月、

半年で、百貨店のサクス・フィフスアベニュー、専門店のアーバンアウトフィッターズ、アディダスやアシックスのようなスポーツブランド、ヒューゴボス マイケルコース アグ などなど 100以上の百貨店、専門店、ブランドが参加するようになったとのこと。

EC拡大時代の顧客のお困りごと、環境保護意識に対するサービスですが、どこまで広がるか、興味深いですね。

利用者、利用企業が増えれば、企業負担、手数料も下がって行くかも知れません。

日本では、宅配便業者さんが進んでいるので、そんなサービスを考えてくれるかも知れません。

家庭で出るダンボールの量は遅かれ早かれ問題視されると思いますので気にとめておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。過剰供給時代を超えて、新しい時代のお客様との関係構築がテーマです。

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September 06, 2021

担当者一人(ひとり)あたり管理可能な品番数、そして売場面積は?

Ministry-of-supply_20210906163901日経MJの連載の中でも、流通業界の裏方である「物流」を考える上でいろいろな示唆を頂けることから、毎週楽しみに読ませて頂いている月刊ロジビズの大矢昌浩編集長が連載されている「物流インサイドリポート」

9月3日(金)付のコラムは食品スーパーで進む自動発注システムに関する話題でしたが、

その中に従業員1人が管理可能な品番数やSKU数に触れられており、興味深く読ませていただきました。

まずは、以下「  」内の引用から。

「約1万アイテムを取り扱う平均的な食品スーパーでは通常、発注業務を10人程度で分担している。1人当たり1千アイテムを受け持つ。しかし、優秀な発注担当者でも一人でまともに管理出来るのは100アイテムがせいぜいとされる」

「残り900アイテムは売れ行きの変化や天候などを考慮せず、売れた分だけ機械的に発注するくらいしかできない。当然ながら精度は落ちる。」

(以上引用)

ということで、最近では、優秀な方の考え方をアルゴリズム化して、AI(機械学習)による自動発注システムの導入が進み、そこで作業時間を効率化させた担当者たちは、各自、重要な売り込み品番の在庫管理に注力することが進んでいるという内容でした。

このコラムを読んでいて、面白いなと感じたのは、アパレルや靴など、ファッション流通の世界でも、ひとりあたりが管理可能なアイテム数、品番数の限界みたいなものに、同じことが言えるよな、ということでした。

セントラルバイイングであるアパレルチェーンでは、本部側にMDやバイヤー、あるいはその各店やECサイトへの在庫配分と在庫コントロールを任されるDB(ディストリビューターあるいは在庫コントローラー)という職務がありますが・・・

それらの職務の方々やその事業の幹部の方々と話をしていると、必ず、一人が一度に何品番が管理できるか?ということが話題になります。

その裏には、現状、品番が多すぎて管理がし切れておらず、各種ロスが多い、労働時間が長くなっている、店舗の在庫管理作業が増えている、などから、

ひとりあたりが担当する売場面積やその中で展開品番数を管理可能なものにして、限られた予算の範囲内で、いかに効率のよい在庫運用ができるか、という意図があります。

これ、筆者の長年、多くの事業の仕入管理や在庫コントロール現場に携わっている立場から言わせて頂くと・・・

一度に管理し切れるのはおおよそ120品番前後まで、という仮説に行きついています。

実際、帳票上に出て来る品番数はもっと多く、それ以上管理している(つもりの)人もいますが・・・
実際には、上位120品番までしかアクションがとれていないのが現実だったものです。

日経MJコラムの食品スーパーでも100アイテムという数字に近いものがあって、面白いな、と思った次第です。
もしかしたら人の目診判断能力の限界なんでしょうかね。

もし、管理可能範囲を超える商品数を扱うと、どんなことが起こるか・・・

当然、範囲を超えたものは見れませんので、それらの管理は雑になりますし・・・

コラムのように1点売れたら1点(売れた分だけ)補充に終始?

そういったものに時間を取られていたら、重点販売商品の在庫戦略を考えるにも、十分な時間がかけれなければ、得られるはずの売上や粗利も失ってしまうことでしょう。

その結果、各店、各EC拠点に必要以上のSKU在庫が配分されたまま、放置されていたり・・・

必要ないのに補充されて寝かされたり・・・

気づいた時に、店舗が店間移動を行う業務が増えたり、運送費が増えたり・・・

それが後手に回ると、機会損失が増え・・・

プロパーで売れたであろうものも、値下げで消化、場合によっては売れ残って倉庫に返ってくる、

なんてこともあるわけです。

以前、ある方が、シーズン中に、そんな拠点ごと、SKU ごとに積まれている必要以上の過剰在庫って・・・

各店に眠っている埋蔵金(キャッシュ)だよね、っておっしゃっていたのが、言い得て妙だなと思いました。

ここからわかるのは、

機会ロスという言葉は、多くの場合、売れ筋の欠品と解釈され、追加発注を促されますが、

その一方で、実は、管理し切れなかった結果、各店に適正配分、配置されずに溜まっている、

つまり、放置されているSKU別過剰在庫の中にも機会ロスというものは多分に含まれているということです。

在庫があるのに販売機会ロス?

そうならないように、管理可能な品番数を知り、その中で、商売を、業務を回したいところです。

そうすれば、限られた在庫、リソースで、まだまだ、粗利も稼げるし・・・

プロパー、最終 共に消化率を高められるのではないでしょうか?

関連エントリー過剰在庫を持ち越さないために

関連エントリー売上は仕入(MD)、粗利は在庫運用(DB)で決まる

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】9月30日(木)15:00~ 次々回は10月21日(木)
筆者が講師を務める、経営者様、事業責任者様向けビジネスセミナー

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各回 定員5名様の少人数セミナー
各回少人数制のため、ご都合合えば、お早めにお申し込みください。

セミナー詳細はこちら
https://dwks.jp/seminar2021fall/

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までご連絡頂ければご対応いたします。

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August 30, 2021

パタゴニアのWORN WEAR(ウォーンウエア)プロジェクトに見る、今後「ブランド」が取り組むべき自社販売商品の循環とライフサイクル管理

20180816_1937378月30日の日経MJにパタゴニア日本支社が渋谷店1階で8月20日~9月26日に期間限定で行っているWORN WEAR(ウォーンウエア)のポップアップストアに関する記事が掲載されていました。

このプロジェクトは、顧客が購入したパタゴニア製品を長く大切に着てもらうために、リペアを行ったり、着なくなった服を買い取って、リペアした上で古着として販売することで製品寿命を延ばす試みで、アメリカでは何年か前から始まっていました。

右の画像は2018年夏にアメリカ カリフォルニア州サンタモニカのパタゴニアのお店で見かけたWORN WEARのカウンターです。

リペア(修理)については以前も日本でもやっていましたが(期間限定だった?)、今回は、日本でも本国同様に本格的に取り組むにあたり、まずは、古物商の認可を取り、アメリカ本社から仕入れた古着の販売から始めているようです。


但し、古着の買い上げ点数2点までの制限ありというのは同社らしい。「必要ないものは、買わないで。」というのが同社のポリシーですから。

日本ではまだ買取は行っていないようですが、アメリカのサイトに同社が顧客から着なくなったパタゴニア製品を買い取る時に渡すクレジット(パタゴニアの新品、古着を購入する時に使えるクーポンのようなもの)の価格リストが出ていました。

アイテムによって、10ドル~100ドル アイテムの元の単価や耐久性によって分類されているようです。ちなみにおなじみのシンチラフリースは20ドル、レトロフリースジャケットは40ドルが買取価格(付与するクレジット)のようですね。

日本支社の社長さんによれば、パタゴニアの新品の中心顧客は40代、古着を販売することで、20代から馴染んでもらえれば、長いお付き合いができるのでは、と期待をされているようです。

新品をつくって、売るだけではなく、

新品販売+リペア(修理)+自らメンテした古着販売で企業収益と顧客の関係性をつくるのが同社の目標。

今後、ファッションブランドは、そのブランドらしく、そういった取り組みを拡げて行く時代だと思っています。

そんな切り込み隊長であるパタゴニアの、今回インタビューを受けられた日本支社社長さんも

アパレル業界の中で、そんな流れをつくるきっかけになれば、と期待をしているようですね。

 

ファッションではありませんが、先行事例があります。

それは自動車業界。

外車ブランドには、中古車は自分たちで買い取り、自ら、車種にふさわしいメンテナンスをして、

中古車販売まで、流通全般を自ら手掛けているところがいくつもあります。

そして、中古車を購入した顧客には、新車を購入した人と同じ●●か月点検みたいな、メンテナンスプログラムに合流してもらい、新車販売店を窓口にして対応する。

一度生み出したプロダクトには、まだ走る、動く、使える、製品寿命があるうちは責任をもってメンテナンスするメーカーの責任。

そして、ユーザー側も、中古で安く買ったにもにも関わらず、メーカーが十分なメンテナンスを施し・・・

新品を買ったのと同じように、利用年数に応じたユーザーサービスを提供してくれるブランドクオリティの体験をすれば・・・

顧客はいずれは、乗り換える時に、またそのブランドを選ぶ、中古じゃなくて、新車を選ぶ、なんてことも十分考えられる、

ある意味生涯のお付き合いを前提とした、そんな取り組みが素敵だと思います。

ファッション業界の話に戻って、

ブランドバッグも、ラグジュアリー・ハイブランドと呼ばれるブランドも、顧客と一生付き合って行く覚悟のある、あるいは志のあるファッション「ブランド」は、そんな外車のような顧客との付き合い方ってありだよね、って思います。

2019年に出版した「アパレル・サバイバル」の結論部分では、同様の持論も披露させていただきました。

パタゴニアの「ウォーン・ウエア」プロジェクトが日本のファッションブランドにどんな波及効果をもたらすか?

ブランド自らは重い腰をなかなか持ち上げられない、と考えているうちに、若い消費者がそんなブランドの背中を押すのではないでしょうか?

楽しみに見守って行きたいと思います。

 

関連エントリーー着なくなった衣服の廃棄を減らすためにできること~環境省の「ファッションと環境」レポートから

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 これから10年先のファッション消費の未来のカギになるのは、顧客のクローゼットのワードローブ。つくって売るだけではなく、その循環にどうかかわることができるか、がサバイバルのカギです。

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August 16, 2021

経済産業省2020年度 EC市場調査報告書とこれからのファッション専門店の構造改革

Bbw_20210817170301経済産業省が7月31日にリリースした電子商取引に関する市場調査報告書に目を通しました。

毎年の業界の市場規模やEC化率を知る上で参考にしています。

これによると、物販系分野BtoC-EC市場全体は

12兆2333億円 前年比 121.7% で市場のEC化率は8.08%(前年が6.76%)になったようです。

気になる衣類・服飾雑貨カテゴリーは

2兆2203億円 前年比 116.2% で市場のEC化率は19.44%(前年が13.87%)

伸び率は全物販市場に比べて下回りますが、

物販EC市場の中の金額規模では家電に次ぐ2番目に大きな規模になります。

EC化率も

書籍・ソフト(42.97%)
家電(37.45%)
生活雑貨インテリア(26.03%)に次ぐ

4番目(19.44%)にEC化率が高いマーケットです。

資料の金額、EC化率、前年比から実店舗、ECを合算した業界市場規模や
実店舗だけの前年比が計算できるので、実際に算出してみると・・・

物販BtoC市場全体は

151兆4022億円 前年比101.8%と伸びており、
実店舗物販だけとっても100.4%とコロナ禍でも物販消費は横ばいだったことがわかります。

カテゴリー別に見ると

食品、家電、化粧品・医薬品、生活雑貨・インテリア、自動車関連
は実店舗、EC共に市場規模(消費)が増えており、

衣類・服飾雑貨、書籍・ソフトのふたつのカテゴリーが
実店舗の落ち込みをECでカバーできなかったカテゴリーになります。

前年比(2020vs2019)
            実店舗  EC   合計     
衣類・服飾雑貨    77.6% 116.2%  82.9%

書籍・ソフト     86.0% 124.8%  99.2% 

ということで、衣類、服飾雑貨が最もコロナ禍の影響を受けた物販カテゴリーのひとつであることが、
表されています。

さて、こんな数字を見て業界各社はどう考えるのか?

〇 売上が2019年度の8掛けでも儲かるしくみをつくるのか?

それとも

〇 こんな環境でも伸びている上記カテゴリーの品揃えを行ってカバーするのか?

実際、コロナ禍で堅調だったと言われるユニクロやしまむらですら
アパレルの落ち込みをグッズ・その他やインテリアなどでカバーしているのが実態です。

ちなみに衣類・服飾雑貨の市場規模の年間のマイナス分は

食品、飲料、酒類以外の

・生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等
・書籍、映像・音楽ソフト
・化粧品、医薬品
・生活雑貨、家具、インテリア
・自動車、自動二輪車、パーツ等

すべての年間増額分を合算してもカバーできません。

唯一、衣料・服飾雑貨の減額分をカバーできるのは・・・

食品、飲料、酒類の年額増額分だけです。

緊急事態宣言が延長される日本において、
ファッション専門店の抜本的な損益構造改革が求められています。

ちなみに右上の画像は、事業ドメインシフトを果たしたLブランズのバス&ボディワークスです。

アパレル祖業でSPAの元祖と呼ばれる彼らは・・・

2000年代にはアパレル事業を売却し、ランジェリー・インナーウエアのヴィクトリアズ・シークレットに軸足を移し、

2020年の今はもう、ヘルス&ビューティ専門店で企業の大半の利益を稼ぐ企業となりました。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 09, 2021

ファッションストアはどう生まれ変わるのか?

20210716_184300-18月8日の日経新聞に、外食産業のコロナ後に向けての対策に関する記事が掲載されていました。

店舗の売上が32%減少し、持ち帰り需要が下支えしたため、持ち帰りの比率は34%に上昇。
(20年は店内飲食61%、持ち帰り34%、宅配5%だった模様。)

産業全体が今後も全体の30%程度は持ち帰りになることを予測して、外食産業各社がどんな投資をしているかについて紹介されていました。

・大手各社はモバイルオーダーアプリ(事前注文、事前決済、店舗受取り持ち帰り)を導入し、

・店に入らなくても専用窓口から受け取れるように厨房の配置を変え、店舗内の座席は減るが、持ち帰りの利便性向上を優先させる店舗もあれば・・・

・ドライブスルーを持つ店舗では、調理能力を2倍にした厨房設備の導入を進める

・持ち帰り専用お得メニューを用意して売上を伸ばした

などなど、顧客の購買行動の変化に対応した設備投資の事例が紹介されていました。

余談ですが、メディアで注目されたUBER EATSなどの宅配は、あれだけ騒がれてもシェア5%程度の構成比。

記事でも触れていますが、顧客は便利でも、飲食店側の手数料負担が大きく、配車サービス側もシェア争いのために儲かっていないため、少なくとも日本の現在の手数料構造のままでは、ビジネスモデルをデリバリー専用に設計し直さなければ持続可能なビジネスモデルになるとは思えません。

従って、店内飲食が前提だったビジネスにおいては、飲食店側に負担が少ない、持ち帰り対策が業界のこれからの焦点になるようです。

さて、これに対して、

ファッションストアは、コロナ後に顧客購買行動がどう変わると予測して、どんな投資を行うのでしょうか?

また、

「ファッションは外食産業(異業種)とは、違う」 

で議論を終わらせて、思考や行動を先送りしさせてしまっていいのでしょうか?

ファッションストア以上に苦戦を強いられた外食産業も上記のようにアフターコロナに向けて動き始めているのです。

 

ファッションストアの今後を考える上で、

まずは、顧客の購買行動の変化を予測することから始めるべきでしょう。

そして、そんな購買行動のために、どんなデジタル投資をしたり、店舗をどう設計し直すのか?を考えたいところです。

・来店前に顧客が事前情報を取れるようにし、来店後はスムーズに商品確認が出来たり、接客を始めることができる

・店舗での顧客の拡張体験を提供したり、店舗の品揃えや情報を補完するために、タブレットや顧客のスマホアプリを活用する

・タブレット接客や決済を前提とし、店内でスペースを取り過ぎているレジスペースをできるだけ小さくする

・その分、フィッティングルームを拡充し、顧客が落ち着いて試着ができるスペースを確保する

 (在庫が増えるので、ストックを大きくし過ぎてはいけません(笑))

・店舗スタッフも顧客自身も手軽にオンライン配信できるスペース、環境を整える

・顧客が着なくなった服を回収し、リユース、リメイクの循環を回す ・・・

これらは、いずれも、国内外で取り組みが始まっている事例です。

まずは、顧客購買行動の変化に対応した事例を自ら体験し、顧客の立場になって

どうしたら、ストレスが無くなるか?快適になるか?を考えてみることでしょう。

異業種からも学ぶことはたくさんあります。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 02, 2021

無印良品(良品計画)は2030年、年商3兆円目標の中長期計画にどう挑むのか?

Muji-shang-hai2030年度に年商3兆円を目標に掲げた、無印良品を展開する良品計画の中長期経営計画が話題になっていますね。

最初にこのニュースを聞いた時は、ずいぶん大きな目標を掲げたな、ユニクロのファーストリテイリングっぽいな、と感じたものでした。

それもそのはず、

これまで良品計画は西友ご出身の、経営者さんが歴代社長を務めて来られたためか・・・

創業経営者が立てるようなダイナミックな計画や成長ではなかった、

ある意味、無理をせず、年率10%前後の自然増的(オーガニック)な成長を続けて来た会社。

そのためか、ユニクロと比較されることが多いですが、ファストリのPERが45倍と期待値が高いのに対して、
良品計画は16-17倍と一般小売業の平均並みに甘んじて来ました。

それに対して、9月から社長になる堂前氏は、
柳井会長と共にフリースブーム含め、長年ファーストリテイリングの急成長を支えたキーパーソンのおひとり。

この2030年年商3兆円という目標設定は、ファストリ流というか、柳井流というか、

長期の高い目標を掲げ、それを実現するために、そこから逆算して足元の計画を立てて行く
というアプローチに近いものだったので、そう感じたのだと思います。

堂前氏が中心になって作成したと言われる、
同社がこの度発表した中期経営計画(書)全55ページによれば

◆2021年8月期末見通し(現在)
売上高 4900億円 (日本3000億円、海外1900億円)

◆2024年8月期 中期計画(3年後)
売上高 7000億円 (日本4500億円、海外2500億円)

<前提>
既存店は年2%成長で、
店舗を980店舗から1300店舗に増やし
1店舗あたり売場面積は250坪から300坪に大型化し
EC売上は10%から15%に引き上げる

この間は、年平均12.6%の成長。
過去3年(2017年~2020年)が年平均9.6%の成長ですから、
これは決して、無理な話ではないでしょう。

しかし、その後の6年間の長期計画は

 

◆2030年8月期 長期計画(9年後)
売上高
 3兆円 (日本 計画から推定すると1兆5000億円、海外 同)

 

中期計画後の6年間は年平均27.4%の成長(国内22.2%、海外34.8%)と高いハードルが待っています。

この間、国内では、店舗の大型化と出店とEC売上の拡大が根拠

・1店舗あたりの平均売場面積は300坪から600坪に大型化し、
・年平均100店舗を出店し(純増数)
・EC売上を30%にする

としています。

海外は 中国を年平均50店舗、その他アジアを平均80店舗出店
欧米は既存店を再構築とのことです。

この中期計画はともかく、長期計画の中で、
筆者が最も、ハードルの高さを感じたのは・・・

国内の年平均100店舗の出店(純増)でしょうか?

ユニクロですら、そこまで1年で店舗数を増やした年はありません。

2030年には国内店舗は平均売場面積600坪(現300坪)、
1店舗あたり売上高10億円(現6億円)になっているとのことです。(たぶん、EC売上高30%分込み)

この出店計画に対して、

新規出店候補地が年商20億円クラスのスーパーマーケットの隣、というはその一方で、

これまでとは違って、面白いと思いました。

正直、今の無印良品では、価格が高めなので
国内1500店舗は想像しづらいのですし、(しまむらが国内1430店舗)

ショッピングセンター内ならまだしも、
フリースタンディングのスーパーマーケットの隣も無理があるように思いますが・・・

中期計画では、粗利を下げ、ローコストオペレーションを徹底し、
販売価格設定を下げる、と宣言をしていますので、

それが実現し、食品スーパーと親和性のある、買いまわることのできる購買頻度が近い品揃えと価格帯になれば、
業態としては、年100店舗の出店も不可能ではないかも、と思えます。

同社の中期計画書を読んで、そうなった時の「無印良品」を想像した時に
思い浮かんだお店がありました。

それは、ずばり、アメリカでウォルマートに次ぐ大手小売業、
会員制ホールセールクラブ、コストコです。

コストコはナショナルブランドにプライベートブランドを織り交ぜているお店なので

その点は違いますが、

地域に根差し、
循環型経済を標ぼうして、
プライベートブランド(PB)で衣食住に必要な商品を
ウエアハウス型のローコストオペレーションで
それに共感する顧客だけに良質安価で提案する。

PBで粗利は最低限でよい、顧客は安く買うことができる。

そのかわり、顧客から頂く年会費が営業利益の原資になる、

というホールセールクラブ型のビジネスモデル。

それなら、そういった立地にも出店余地はありそうだ。
そして、無印良品らしい、地域との顧客コミュニケーションが取れそうだ。

今、無印良品は、ファッションであったり、ライフスタイルショップとして
位置付けられていて、ユニクロやニトリなどと比較されることが多い業態ですが・・・

10年後は、全く違った業態、

地域に根差した、もしかしたら、
地域の大衆のための会員制クラブになっているかも知れない。

中期経営計画書を読んで、そんな風に妄想したものでした。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 19, 2021

「デジタルとリアルの融合」は手段を目的にせず、まずは、顧客のストレスを特定し、それを解消することから考えよ

20200714_1508107月16日日経MJに、「私のマーケティング論」という見出しで、ナイキ、アウディ、グーグルなどのデジタル戦略やクリエイティブを手掛け、ユニクロのスタイルヒント原宿店の指揮を執った I&CO共同創業者でクリエイティブディレクターである、レイ・イナモト氏のインタビュー記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

「スタイルヒント」の開発背景について聞かれ、同氏は、

(以下引用)

「出発点はアプリの開発。買いたい服の情報を調べようとしてもグーグルなど特定のサイトはなく、(顧客が)自分でキュレーションする必要がありました。ならば服の検索エンジンをつくろうと思ったのです。皆が写真を投稿すると服が情報になり、さらに共有するとプラットフォームになる。」 

(以上「  」内記事の同氏の発言からの引用)

ファッション企業各社が「単品」を売ろうと発信している通販サイトはあっても、用途、着こなしかた(コーディネート)のアイデアを企業目線ではなく、顧客目線で集大成するには、ワンブランドではなく、ブランドミックスで消費する顧客投稿型のSNSのデータベース発想には敵いません。

服のコーディネートに関する、その発想の先駆者は、日本においてはZOZOが提供する「WEAR」だと思いますが、1000万件以上のコーディネートがアップされているWEAR上でもコーディネートに使われる、登場件数が断トツ1位で、一方、ZOZOTOWNで販売されていない「ユニクロ」が自らユーザー投稿型データベース型アプリの開発に行きついたのは至極自然な流れだったと思います。ユニクロのミッションは、どんなトレンドファッションに合うベーシックですからね。

続いて、今、が躍起になっている、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「デジタルとリアルの融合」というキーワードについて、

(以下引用)

「よくデジタルとリアルの融合に取り組むと聞きますが、僕には融合との発想が全くありません。
消費者がどこにストレスを感じ、その摩擦をどう減らすのかを常に考えています。
たとえば米国のウーバーはタクシーを呼んでも来ないというストレスをなくそうという発想から生まれました。
リアルとデジタルの融合はその結果に過ぎません。形式に取らわれず、常に本質を見る必要があります」

(以上「  」内 記事からの同氏の発言を引用)

この部分は強く共感しました。

その理由は、筆者が、日本のファッション流通が本格的にオムニチャネル時代に入ることを視野に入れて、2018年に「アパレル・サバイバル」の取材も兼ねて訪れたアメリカ西海岸、LA、シアトル、ポートランドでのこと。

当地で、流通各社の先進的なDX事例を実体験しながら、
筆者が共通点として感じたことは、まさしく同氏が語っていることだったからです。

amazon goではコンビニにおける顧客のストレスを

amazon booksでは書店における顧客のストレスを、

ナイキは シューズ購入の際に誰もがかかえる顧客のストレスを、

ウォルマートは・・・

ZARAは・・・

それぞれの企業が先進的に行っていたことは、

〇ショッピングのプロセスにおいて、顧客のストレスがどんなところにあるかがわかっていて、

〇それをどう解決すれば顧客が喜ぶかの「理想的なビジョン(シーン)」を描いた上で・・・

〇そのストレス解消にあたり、顧客が持つスマホ内の自社アプリを活用することが最適と考え、

〇リアルにおける新しい顧客体験をデジタルを活用して実現した

わけです。

それは、まさしく、イナモト氏が言うように、顧客のストレスの解消が目的であり、
「デジタルとリアルの融合」という言葉はその手段や結果でしかなかったのです。

(上記 アメリカでの事例の詳細は是非、拙著「アパレル・サバイバル」をお読みください)

日本では、デジタル化という手段が先にあって最新技術に飛びついたり、
企業の業務効率の都合でデジタル化が図られ、そのしわ寄せとして、顧客に面倒を強いることが多いようですが・・・

欧米では、逆に、顧客のショッピングのストレスを特定し、それをデジタルで解消すると同時に
企業の業務効率も考える、という流れが多いように感じるのは、筆者だけでしょうか?

デジタル化が進まずに焦る前に・・・

まずは、目の前のお客様のストレスを特定し、それをどうしたら、デジタルで解決できるかを考えたいものです。

よく、資金がないから、デジタル化が図れない、と言われますが・・・

本当に必要なのは、お金ではなく・・・
顧客のストレスを解消し、理想のお買い物を体験してもらいたい、というビジョンを描けるかどうか、の顧客への愛と創造力に他なりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 DXに欠かせないのは、顧客の理想の体験を描く創造力。ファッション流通の歴史、欧米の視察体験から学んだ、日本のファッション流通の未来を本書を通じて垣間見てください。

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July 05, 2021

ユニクロの製造業へのチャレンジ~東雲イノベーションファクトリーの全貌が明らかに

20210705_075525ユニクロを展開するファーストリテイリングが先週の始めにメディア関係者に公開した、

「有明プロジェクト」のひとつ、東雲(しののめ)のイノベーションファクトリーに関する記事が
6月30日の日経MJと7月1日の繊研新聞のそれぞれ本紙と6月30日のWWDJAPANオンラインに掲載されていました。

WWDJAPANの記事が結構、詳細で現場の様子がよくわかります。

ユニクロが東京に自社工場 製造業進出で「すぐに作って売る」
(注:こちらは有料記事になります。)

このイノベーションファクトリーはもともと島精機(和歌山)が開発した無縫製ニット編み機=ホールガーメント機を活用して、
地産地消のニット製品の生産販売を行うべく島精機とファーストリテイリング(以下FR社)が和歌山に合弁で設立した製造子会社で

FR社が主導権を取って本腰入れるために、
出資比率を当初のFR:島精機 49%:51%から 51%:49%として、
3カ月前に和歌山から、お膝元の東京有明近くの東雲(しののめ)に移転したものです。

場所は有明本部から10分ほどの3階建て4700㎡(1424坪)の印刷工場跡地
そこに40台のホールガーメント機を置き、65人の従業員がいるそうで
1日1000枚(単純計算1台あたり25枚)の生産が可能だそうです。
将来的には100台にまで持って行く計画もあるそうです。

それぞれの記事を読んだところ

これまで、工場を持たずに協力工場に生産委託するスタイル(ファブレス)を強みとしていた
ユニクロが、初の自前工場で製造業へ進出、というのは少々大げさな話で・・・

実際のところは、本社の身近なところに、

量産工場と連動したサンプル工場あるいはテスト生産工場が出来たと見るべきだろうと思いました。
(FR社は「3Dニット生産の世界のマザー工場」と言っています)

まず、FR社の有明本部の5階にホールガーメント機4台を置いたサンプル作成用のアトリエがあるそうで、
そちらで試作用にプログラミングしたデータを東雲工場に転送し、
実際に販売できる商品化を行いながら、量産に対応できるように調整しているようです。

WWDJAPANや繊研新聞の記事に寄れば、

東雲で、行っているのは、

・糸の巻替え(糸の中にあるゴミなどのまぎれ込みを取り除くための行為)
・編み立て
・糸切れ直し
・稼働点検
・製品補修
・洗濯と乾燥
・アイロンがけ
・タグ付け

要は、糸から製品の形になる、編み立て自体(パーツを組み立てるリンキング工程は不要)は
ホールガーメント機が24時間自動で行ってくれますが、

準備工程である

●編み立てのプログラミング(ここが時間がかかるといわれています)
●ホールガーメント機にかけるまでの糸の品質確認とセッティング や

編み立中の

●稼働中の点検、
●糸の切り替え、

編み立て後の

●製品補修、
●洗濯、乾燥、
●アイロンがけ、
●タグ付け

などは、やはり、人がやらないといけないようなので・・・

東京の人件費を考えた場合、

ユニクロ価格のニットのプライスレンジの上限で販売したとしても、
試験販売用の商品原価では儲けはあまり出ないのではないかと思われます。

ここからは、記事を読んだ上での、筆者の解釈ですが、

この東雲イノベーションファクトリーの目的と役割は

まず、第一には

◆サンプルづくりから量産までの工程研究および時間短縮

ホールガーメント機の海外での大量生産前に
海外量産工場で起こりうるトラブル解消や作業の効率化の研究を行い
生産のボトルネックや起こりうるトラブルを事前につぶしておくことで
生産のスピードを上げ、不良品率を下げることができるのではないか。

次に、

◆的中率を高めるための試験販売用の商品づくり

商品企画者のアイデアの元、東雲でつくった少量製品を
銀座のUNIQLO TOKYO 店などで試験販売し、
売れ行きを見て、海外での量産の発注数の参考にするそうです。

また、

◆追加生産入荷までの国内QR生産による繋ぎ商品供給

量産での販売が計画に対して上振れして、
海外に追加生産をして、海外からの商品供給が間に合わない時の
一時的な売場の穴うめ、繋ぎ用商品在庫の供給を担うことができるようです。

従来であれば、

量産をする海外工場に仕様書を元にサンプル作成をして送ってもらい、
チェック、修正を繰り返していた流れから・・・

企画担当者やデザイナーが有明本社の5階のアトリエ(4台)でつくり、
東雲工場で量産向けにテスト生産を行って確かめた上で

海外の量産工場にサンプル、プログラミングデータ、工程上の注意と共に提供すれば、
生産の効率化が期待できる。

この流れの主導権を持った革新が、同社が 

「従来3ヶ月かかっていた仕事を1か月に短縮したい」

という話の背景にあるはずです。

各社の報道を読みながら、思ったのは、

アパレル生産のサプライチェーンのボトルネックのひとつである
「サンプル確認」工程をユニクロがコントロールできるようになったこと。

そして、

あくまでもホールガーメント機を使ったニット製造に限りますが
製造中に起こりうる問題点の解決策を
東京から世界の量産工場に具体的に提示できるようになったこと

この2つには大きな意義があります。

ZARA(ザラ)が本社デザインルームに布帛アイテムのためのアトリエを持ち、
自らサンプル作成を行って工程上の問題点を認識し、
量産素材の裁断を手掛け、
どこでも縫えるような形にして、
縫製工場に縫製(アッセンブル)委託をすることで
サプライチェーンのボトルネックを解消しながら、スピード生産を実現していますが、

ユニクロが、そのあくまでもホールガーメントニット版に限りますが、
踏み出したということを意味します。

次に、的中率を上げ、無駄な在庫をつくらないように・・・

店頭で顧客の反応を確かめてから量産数量を決定することができる、
試験販売用のサンプル工場を持ったこと。

これは、今はどうされているか不明ですが、

レディースカジュアルSPAのハニーズが2000年代の全盛期に
福島にサンプル作成と店頭試験販売用のサンプル工場を持っていて、
一部の店頭で試験販売をした上で中国に量産発注をしていた話を思いだしました。

また、古くは、米リミテッドストア(現Lブランズ)が
バイヤーたちが世界中で買い付けたサンプル商品にリミテッドのネームを付け替えて、
都市部の3店舗で試験販売をした上で、顧客の反応を見て
アジアに量産発注し、出来上がった商品は空輸でアメリカに持ち込み、
全店展開して的中率を上げていたという話を思い出しました。

ユニクロが自ら量産を手掛けるわけではありませんが、

大量につくって、徹底的に売り切る、というビジネスモデルから・・・

的中率を上げ、サプライチェーンのボトルネックの解消のために
製造工程に大きく足を踏み入れたという点においては、

とても意義のある、大きな前進であると感じました。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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