April 06, 2021

世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

4cimg0441 世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2021.1期) 2兆5,918億円 -28% 1,914億円 7.4% 6,829 ZARA
2位 H&M (瑞;2020.11期) 2兆3,453億円 -20%  388億円 1.7% 5,018 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2020.8期) 2兆0088億円 -12% 1,493億円 7.4% 3,630 UNIQLO
4位 GAP (米;2021.1期) 1兆4,380億円 -16% -898億円 赤字 3,715 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2021.1期) 1兆2,344億円 -8% 1,645億円 13.3% 2,669 Bath&Body Works
6位 プライマーク (愛;2020.9期) 8,436億円 -24%  517億円 6.1% 384 Primark
7位 しまむら (日;2021.2期) 5,426億円 +4%  380億円 7.0% 2,199 しまむら
8位 NEXT (英;2021.1期) 5,183億円 -17%  548億円 10.6% 491 NEXT
9位 アメリカンイーグル (米;2021.1期) 3,917億円 -13% -282億円 赤字 1,078 AEO
10位 アーバンアウトフィッターズ (米;2021.1期) 3,594億円 -13%      4億円 0.1% 645 Anthropologie

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアは過剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめなかったため、除外しております。                              

【解説】

全体を見渡すと、経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。

以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。

全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。

EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これからは同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験へ、そして、次のテーマである、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

2位のH&Mは

第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期がコロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地させた経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。

店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。

これからは、遅れていたデジタル化へのアクセルが回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらく、苦戦するのか?注目の1年になります。

関連エントリーーH&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

3位のファーストリテイリングは

年間のうち、半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心。欧米に比べ、市況回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利な環境と言えるでしょう。

特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。

今期は、3月から消費税分値下げした分を、同社がどう利益を確保するのかに注目です。

関連エントリーーファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

4位のGAPは

大幅減収赤字、GAP、バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP事業売上前比73.0%、バナリパ事業は同57.5%)。

店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位の位置づけです。

ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECは倍増で、いよいよVSとB&BWの売上が逆転しました。

ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益が期待できそうです。

関連エントリーーファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、

しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。

これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。

一旦、かつての販売効率まで戻った後、出店余地の限られる日本国内で、どのように、収益を伸ばすのかが、焦点になります。

8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受取り)を上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。

今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行するという、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。これは、興味深いです。

この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。

今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、今後、深堀りしたいと思います。

さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。

筆者としては、ZARAのインディテックス、ヘルス&ビューティへのドメインチェンジが進むLブランズ、チェーンストアの強みを活かしつつ、プラットフォーマーとしての付加価値を追求するNEXTの3社に注目したいです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になることでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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March 01, 2021

アパレル製品のサーキュラーエコノミーの現状と課題

Circular-economy以前、筆者もオフプライスストアに関するセッションで登壇させていただいた、業界の勉強会組織、FashionStudiesさんからご案内を頂き、

 以前の投稿はこちらーオフプライスストアは日本で拡大するのか?

さすてなぶるファッション® オンライン ♯02
衣服リサイクル 基礎編 #02 リサイクル素材をどうマーケットに浸透させていくか 

の公開動画を視聴させていただきました。(リンク先に3本の動画があります)

 

内容は伊藤忠商事が取り組む、回収した古着、裁断くず、残反を新しいアパレル製品・繊維製品にリサイクルするプロジェクト「RENU」についてと、そのプロジェクトに参加するH&Mの取り組みについて、そして、繊維素材のリサイクルの現在と、今後の課題についてでした。

このRENUプロジェクトについて、筆者が理解したところを簡単にまとめると、

・従来から、ペットボトルなどの非繊維原料を繊維素材にリサイクルして、アパレル製品化する試みはあったが、RENUは不要繊維製品から新しい繊維素材やアパレル製品にリサイクルする試みである。

・まずは、アパレル素材で最も使われている原料のひとつである、ポリエステル素材から取り組んでいる。

・主に、中国で回収した古着、裁断くず、残反、を粉砕、分解して、薬品を使って、精度の高いポリエステル原料(チップ)に再生し、それをもとに、ベトナムなど他国も含めてアジアでポリエステル生地を製造し、アパレルおよびスポーツ衣料とする。

・従来のペットボトル原料だと、原色を抜くのに手間がかかったり、希望の色を再現する上で制限があるが、当プロジェクトはバージンポリエステル原料(従来のポリエステル原料)と同じ発色が可能になる。

・バージンポリエステル製造には石油が必要となるが、当プロジェクトでは、すでにポリエステルになっているものが原料のため、石油を使う必要がない。

・従来のペットボトルからのアパレル製品は、リサイクルは1回のみ、その後は、廃棄の対象にならざるを得ないが、このプロジェクト(回収→リサイクル→製品化→使用後→回収)の流れに乗せれば、永遠に繊維製品を繊維製品に再生できる。

とのことです。

実際、日本でも、H&M、GU、グローバルワーク、デサントなどがRENUの素材を使って、アパレルへの製品化と販売を行っているようです。

この、繊維製品から繊維製品のリサイクルの課題としては、

ひとつは、コストです。伊藤忠の方も通常のポリエステル素材よりは、生地値は高め、とおっしゃっています。

これは、現在、業界の中でも、議論が重ねられていますが、

大手、特に上場企業はESG、エンドユーザーへのアピールも含めて、サステナブルなモノづくりが喫緊の課題になっているので・・・多少、コストが高くても、企業姿勢としては、取り組むかも知れませんが、

一方、エンドユーザーである消費者は、ファッション商品は、おしゃれであること、リーズナブル価格であることが前提にありますので・・・

理解あるエンドユーザーが増えているとは言え、価格転嫁されたら、当然、販売(購入)に支障が出ますし、また、高くて、売れ残り在庫をたくさん残してしまう原因になってしまっては、もともこもありません。

伊藤忠の方は、「エンドユーザーがRENUだから買ったのではなく、たまたま、購入を決めた商品の素材がRENUだった」というビジョンを理想としています。

もうひとつは、古着の回収から再生素材にするための国際規制です。

今回のセッションの質疑応答部分で触れていますが、バーゼル条約という国際協定があって、廃棄物のひとつである古着の国際間移動は法律で制限されています。

古着や裁断くずや残反を回収した国または地域で、せめて、繊維原料、ポリエステルの場合、チップにまでする加工を施した上でないと、海外に持ち出せないということになります。(日本の古着を中国に持って行って加工はNGと理解。)

つまり、回収とリサイクルテクノロジーは同じ国または、経済圏の中で完結しなければならない、ということになります。

整理すると、

1)現状は割高となるリサイクル後の生地と製品コスト

2)回収とリサイクル素材(原料)にするまでの技術および加工を現地で完結させなければならないこと

この2つが、今回のRENUに限らず、繊維製品のサーキュラーエコノミー型リサイクルの世界的な拡大に向けての課題になるようです。

以上を理解した上で、あらためて、以前、ご紹介した、インディテックス(ZARA)のサーキュラーエコノミーの取り組みがこの2点を上手く、解決している試みであることに気が付きました。

ファッション業界のサーキュラーエコノミーの取り組み


つまり、スペイン国内(店頭と街頭)で古着を回収したり、裁断工場を持って、多くの製品の裁断をスペインおよび近隣の自社工場で行っているインディテックスは、自ら、原料となる古着や自社裁断工場から出る裁断くずや残反を供給することができます。

これらを原料として、リサイクル素材を製造するレンチング社に供給できるため、出来上がった再生素材は安価に買い戻せるのではないか?(あくまでも、筆者の憶測です。)

次に、回収、リサイクル素材製造までがEU圏内(スペインとオーストリア)で完結するので、バーゼル条約には抵触しない。

それゆえに、買い上げたリサイクル素材を使って、つくられたZARAの製品コレクション「JOIN LIFE」が従来のZARAの商品価格の変わらない価格で販売できる所以なのではないか、ということです。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)はアパレル業界が未来に向けて避けて通れない課題。

伊藤忠は再生ポリエステルに続いて、再生ナイロンのアクアフィルとも業務提携をしたというニュースが入って来ました。

今後、日本においても、繊維再生テクノロジーが開発され、日本で回収された古着から始まるサーキュラーエコノミーが実現することを期待しています。

繊維素材・繊維製品のリサイクルに関しての現状を知る上での基礎知識が得られ、問題意識も整理できますので、関心のある方は上記リンク先のfashionstudiesさんの動画の視聴をおススメします。

今後もこのブログでは、サーキュラーエコノミーのテーマにも関心をもって取り上げて行きたいと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。大量生産、過剰供給時代を超えて、新しい時代の関係構築がテーマです。

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February 22, 2021

メルカリ、ペイペイフリマ、フリマアプリの1次流通通販(EC)とのデータ連携

Closet

2月17日の日経MJにフリマアプリ大手のメルカリが、アパレル専門店大手アダストリア社他、8つのECサイトと連携し、ユーザーがECサイトで購入した新品商品が着用後に不要になった場合、手軽にメルカリに出品できるサービスを拡げて行くことに関する記事が掲載されていました。

記事によれば、20年春から始まったメルカリの提携先は・・・

アパレルECの「ショップリスト」、家電の「プレモア」、雑貨の「イデアオンライン」、今回発表したアパレル大手アダストリアの総合 ECサイト「.st(ドットエスティ)」など8社。

提携先は、今のところ、すべて、メルペイでの決済を行っているサイトのようで、

購入ユーザーがそれぞれのECサイトでメルペイで決済した商品が、メルカリのユーザーのアプリ内のマイページの中にある、「持ち物一覧」に自動で取り込まれ・・・

ユーザーが将来、その商品が不要になり、メルカリで売却したい、と思った場合、

その商品がメルカリで取引されている相場価格を元に推奨価格が表示されたり、出品の際に必要な、商品カテゴリーや商品紹介が自動表示されてユーザーの出品の手間が簡素化されるというものです。

今後、提携先とは、メルペイで決済していない場合(クレジットカードなど)も同様のサービスを提供する方向で話を進めているとのこと。

そうなると、いずれは、メルペイ決済を前提としない、多くのEC購入商品がメルカリに出品しやすくなるかも知れません。

同記事では、メルカリのライバルとなるペイペイフリマでも、ヤフーショッピング、ペイペイモール、ZOZOTOWNと同様の連携を進めていることも紹介されており、

フリマアプリ大手が

売ること(出口)を考えて、新しい商品を購入する(入口)購買行動

という、リユースショップやフリマアプリを賢く活用する、ユーザーから始まった新しい購買行動の促進を後押ししていることがわかります。

ファストファッションの市場浸透後、コロナショックによる巣ごもりの後押しもあり、
溢れ始めた自分のクローゼットの服を見直す機会が増えたエンドユーザー

流通企業が、エンドユーザーの「クローゼットのワードローブの循環」をどう手伝うか

が新品を販売する企業も避けて通れない、生き残りのカギになるであろうことを

拙著「アパレル・サバイバル」の後半部分で結構なページを割いて問題提起をさせていただきました。

一次流通企業にとっては、

大手であれば、これから、不要品回収から始まるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への取り組みが、進むことでしょう。

一方、大手ほど資金力、組織力がない中小企業にとっては、

自身の体力内で回収、リサイクル、リメイク、アップサイクル(染め直しも含む)をすることもできるでしょうし・・・

フリマアプリなど、第三者的なデジタル企業と組んで、ユーザーが不要になった商品を、それを求める他の人に届けるための手伝いをすることもできるでしょう。 

ある意味、それも、サーキュラーエコノミーへの取り組みの一環かと思います。

過剰生産、過剰供給を見直しするだけでなく、

お客様のクローゼットを健全にメンテ、循環させることをお手伝いしながら、

顧客の既存のワードローブと相性のよい、今シーズン風の新しい服をご提案する。

それが、これから求められるファッション流通企業の姿のひとつだと思っています。

それを牽引するのは、従来のファッション企業自身なのか、
それとも、未来から逆算するテクノロジー企業なのか?

今回のメルカリやペイペイフリマの取り組みは、そんな未来図に向かうはじめの一歩のように感じられます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。大量生産、過剰供給時代を超えて、新しい時代の関係構築がテーマです。

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February 15, 2021

売上は仕入(MD)、粗利は在庫運用(DB)で決まる

Last-chance-to-buy先週の2月9日 小売・卸売・製造小売業の在庫問題を解決するクラウドサービス「FULL KAITEN」を提供する
フルカイテン さんのオンラインセミナーに登壇させて頂きました。

前半は筆者からのプレゼン、続いて、後半は、フルカイテンの瀬川社長とアパレル小売業の在庫と粗利についての対談をさせ頂きました。

前半のプレゼンでは、

過剰在庫と在庫コントロールをテーマにして
規模の拡大と共に過剰在庫を抱えてしまう要因のひとつに、

バイヤー(MD)と店頭やECサイトで購入するお客様の間に

関与する職務と人員が増えて、複雑になった組織の中で

コミュニケーションギャップが発生し、
それが原因で売り逃しが発生することが少なくない

という話をさせて頂きました。

仕入れた在庫の売り逃しを少なくすべく、
商品計画を販売管理につなげる上で、

仕入担当と販売担当のコミュニケーションギャップを最小限にするための対処策として、

筆者がコンサル現場で、実感している

・いつ売るか?(がんばりどころ)
・何を売るか?
・いつまでに売り切るか?

を決めて、店舗やECなどの販売担当者が行動に移せるように、わかりやすく共有することの大切さと着眼点をお話ししました。

この問題、

筆者は、長年、数多くの年商2~30億円から100億円くらいのステージの事業やブランドさんたちとお付き合いをしていて思うのですが、

多くの事業が、年商10億円くらいまではイケイケで売上も伸ばし、在庫消化もそれなりに出来たとしても…

年商が20億円を越えて、約3倍に相当する、30億円の声が聞こえる規模になると、

結構、残在庫問題が経営課題のひとつとして、浮上し、深刻化し始めると感じています。

 

要は、バイヤーやMDによる商品仕入が大事なのは間違いないのですが、それがすべてではなく、

期中の在庫運用、すなわち、現場の立ちまわり方、タイムリーな売り切り行動こそが、

営業利益の原資となる粗利額を増やし、在庫をキャッシュに換えるカギになって行く、

仕入と売り切りの両輪を上手く回さないと利益もキャッシュも不安定なステージになるものです。


仕入れた在庫を活かすも殺すも在庫運用次第 

それは、販売する側を責める問題ではなく、その前提として、「仕入の意思」が現場に伝わっているか、どう伝わっているかに寄るところが大きいということです。

そんな壁に直面した時、全員参加型の経営に舵を切る第一歩となる・・・

販売担当たち(DB、SV 、EC)が、MDやバイヤーの商品展開計画を理解しながら、
自ら考え、タイムリーな在庫コントロールをする「自走組織」に変えていゆく上でのカギ

についてお話ししました。

後半の瀬川社長との対談では、

瀬川さんの気づきと聴講された方々の質疑応答を通じて、

実際、クライアント企業の経営者さん、幹部さん、現場の方々とも、普段、交わしている生々しい話がいくつも飛び出したと思います。

 

ファッションビジネスに携わっていると、どうしても、何を仕入れるかに頭が集中しがちです。

その一方で、粗利はシーズン中の行動次第で残すこともできるし、簡単に失ってしまうこともあります。

そんな状況に対して、「気合」や「どんぶり」ではなく、

いかに、諦めずに執念をもって在庫を粗利額に換えられるか・・・

同じ目標管理をする組織の中でも、

次のステージを迎えるために、

特に、仕入と店舗やEC販売のハブ的存在となる
ディストリビューターや在庫コントローラー(以後DB)の役割の見直しと戦力化は避けては通れません。

DBはある意味、販売サイドに対する、バイヤーやMDの二人三脚の分身であり、
忙しくて足元の課題に気づけないMDを客観視して、気づきを与える女房役

DBという職務の戦力化、組織の中での販売情報のHUB(ハブ)として機能するかどうかが、
次のステージを乗り切るための第一歩となります。

今回の記事のタイトルの

売上はMD、粗利はDB

とは

正しく、クライアント企業の経営者さんが、在庫コントロールに取り組んだ結果、

危機を乗り越え、最高益を続けた後におっしゃった言葉ですが・・・

同時に、筆者の長年の信念と活動をシンプルに言語化して頂いたフレーズでもあります。

コロナショックで仕入を絞って、少ない在庫で利益を稼がなければならない、今こそ、

仕入れた在庫をチームワークで活かしながら運用して、最大限の粗利とキャッシュに換えるための・・・
全員参加型経営にむけての業務再構築に力を入れたい時、だと思います。

関連エントリー一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない

関連エントリー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

関連エントリー過剰在庫を持ち越さないために


執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】
筆者が講師を務める、経営者様、事業責任者様向けビジネスセミナー

3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!
「ファッションストアの在庫コントロールのための組織と業務」

が 2021.3.25 15:00~18:00 @オンライン

で開催されます。

これから事業で本格的に店舗およびECの在庫コントロールに取り組みたい、
再構築をしたい、組織と役割を見直したいという企業経営者様、事業責任者様向けの内容です。 

参加をご希望の方は 

https://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2021/02/post-823003.html

に詳細がございます。 15名様限定(2月20日現在、まだ空き席がございます。)

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までご連絡頂ければご対応いたします。

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January 04, 2021

新しい生活様式にあわせて業務を再構築しよう

20180824_151428あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

コロナショックの渦中、先行きが見えぬまま新年を迎えましたが、
引き続き、健康に留意しながら、日々のミッションに取り組み、そして、未来に向けて進んで行きましょう。

コロナに後押しされたとは言え、一旦、前に進んだものは、元には戻らない、と考え、
まずは、加速した環境変化の先にある、「お客様の新しい生活様式」のビジョンを描いた上で、準備を進めて行きたいです。

 

これらのファッション流通業界のテーマはいくつかあると思いますが、
専門である在庫最適化の問題意識から申し上げると、大きくは

◆短期~中期的には

 ショッピングのデジタルシフトに対応した環境を整えること、

◆中期~長期的には

 ブランドらしいサーキュラーエコノミーへ取り組みに着手すること

かと思います。

 

前者は、オムニチャネルやOMO(Online merges with Offline)などと言われることですが、明確な顧客購買シーンをチーム共有した上で進めて行きたいところです。

店舗を持つ専門店にとっては、

顧客が

・店舗で見た商品はオンラインですぐに見つけることが出来、買うことができる

・オンラインで見た商品は、どこにその在庫があるのかがわかり、店舗に行けばすぐに見つけることができる

・オンラインで注文や予約した商品を都合のよい店舗で受け取ったり、試着の上、購入できる

・店舗で購入した商品は店舗からあるいはEC倉庫から自宅に届けてもらえる

そして、そんなお客様のシームレスな購買行動を店舗スタッフやカスタマーサポートがストレスなくヘルプできるデジタル環境を整えることでしょうか。

これらを実現するには、システム投資が伴うため、一気に進めることは難しいかと思いますが・・・

在庫データの信頼性を高めながら、もてるデバイスを駆使してステップ・バイ・ステップで進めて行きたいです。

後者については、よりプロダクトにフォーカスし、顧客を巻き込んだカタチのサステナビリティの話です。

人々が巣ごもりの間に、あらためて自分のワードローブと向き合ったことによって・・・

いよいよ、供給側であるブランドは、商品をつくって、売りっぱなしにするだけでなく・・・買って頂いた後の商品のライフサイクル、循環についても配慮、関与する時代に突入したと思っています。

例えば、長く愛着してもらうための素材選び、購入後の洗濯・クリーニング・保管などメンテナンスのためのアドバイス、次シーズン以降も着回して頂くための、翌シーズンのコーディネート提案などなど。

また、買って頂いた商品は、できるだけ長く着続けてもらいたいものですが、着なくなった場合は、顧客が手放し、リユース、リメイク、リサイクルされるところにも何らかのカタチで関与できないか、と。

近年、着なくなった服を回収する企業は増えて来ましたが・・・どちらかというと、来店促進目的で回収後は処分業者に渡して終わりのところが多いようです。

これからは、せっかく回収するのであれば、しかるべきパートナーと組んで、何ができるか?ブランドらしい活かし方を自ら考える時代に向かっていると感じています。

このあたりは、すぐには広がらないかも知れませんが、ブランドごとに議論を始めてもよい時期ではないかと思っています。

後者のワードローブのライフサイクルや循環の話にご興味を持たれた方は、是非、拙著「アパレル・サバイバル」のCHAPTER5をお読みください。筆者なりの問題提起をさせていただいております。

以上のような問題意識を持ちつつ・・・

今年も顧客目線で在庫最適化に取り組む業務再構築と商売人人材育成の応援をミッションとし、

独自の視点で業界関連トピックをブログで取り上げてご紹介して行きたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

関連エントリーナラティブ(顧客を主人公にした物語)から考える

関連エントリーオムニチャネル化を進める前に必要な、店舗側のステップとは何か?

関連エントリーCircular Economy サーキュラーエコノミー(循環型経済):ZARAのインディテックス社のこれから10年の経営テーマ

関連エントリー着回しの利く、究極の定番を磨け

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションの浸透によって、溢れ始めた顧客のクローゼット。これからは、クローゼット内の服の循環を考えながら、新しい商品の提案を考える時代。今回の投稿で話題にしたショッピングのデジタルシフトと顧客のワードローブの循環がまさにテーマになっています。

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December 28, 2020

アパレル生産で取り組みが進む3D技術によるサンプル作成工程の効率化

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12月21日と12月24日の繊研新聞のそれぞれ一面に、OEM型やODM型でアパレルの受託生産を担う繊維専門商社の3D CADなどデジタル技術を活用したアパレル設計、製造の効率化への取り組みに関する記事が掲載されていました。

ひとつは繊維専門商社のヤギと東京ファッションテクノロジーラボ(TFL)が共同出資で設立した、
ファッションに特化した3D、CG製作の新会社、メタデータバンク社の記事。

この新会社には3Dモデリスト、CGデザイナーがそれぞれ20~30人在籍し、
バーチャルで、サンプル製作プロセスを簡素化し、本生産前の仕様確認を促進したり、サンプルを作成せずに、バーチャルサンプルでEC先行受注を行ったりすることで・・・
テクノロジーによる業務改革を推進し、合意形成の迅速化、生産リードタイムの短縮などを通じ、過剰在庫の解消が期待できる、「バーチャルファクトリー」を目指すようです。

もうひとつは専門商社の豊島が進める、「バーチャルクロージング」の記事。

目指すところは前者に近いと思いますが、同社では最近、業界で普及が始まったアパレル3D設計のクラウドソフトウエア、設計の実務寄りのブラウズウエア(イスラエル)やモデルに着せて動かすプレゼンテーションに優れたCLO(クロ;韓国)やニット製品に特化してカラー、製品シミュレーションが出来るエイペックス(日本の島精機)などのツールを社内企画室に次々に導入し、専属トレーナーを採用して、各部署に所属するデザイナー、パタンナーが本格活用に向けて社内研修を受けているそうです。

 

しばらく、生産業務に携わっていなかった筆者も、ここのところ、過剰生産防止や在庫リスク回避の観点から、アパレル設計段階から工場での生産を経て、商品が倉庫あるいは店頭に届くまでのサプライチェーンにおいて、タイムロスやトラブルが起こりやすい、いわゆるボトルネックがどこにあるかをサプライチェーンに携わる方々と洗い出したり、ディスカッションする機会が増えました。

サンプル作成から本生産発注に至る、仕様確認作業もそのボトルネックのひとつ。

本生産発注に至るまでに、デザイン画ベース、ファーストサンプル、セカンドサンプル、各色サンプル、本番前修正サンプルなどサンプルが複数回作成されるわけですが・・・

アトリエや工場のサンプル室のサンプル作成だけでも、相当な時間と労力がかかるものですが、
間に入って、それに携わる方々が、サンプル作成にあたって、デザイナーやパタンナーやMDなど、指図を出した担当者が意図するデザイン仕様や修正指示の確認に時間が取られ・・・

仕様書が不完全、伝言が上手く伝わらないと、仕事が進まない、やり直しが増える、などなど、タイムロスによって、発注が遅れるのも実態です。

最近の話を聞いていても、このあたりは筆者が生産に携わっていた90年代とさほど変わらないようです。

むしろ海外生産が多くなる、産地が遠くなる、介在する言語が増える、出張経費削減で商社任せとなると、ご苦労もいろいろ多いようですし、現場に入って鍛えられながら育つ商品企画や生産担当の人材育成も進まない傾向にあるようです。

サンプル作成も回数が増えれば、当然、作成コストや無駄になる資材もばかになりませんし、その経費は当然、本生産の原価に上乗せされるわけですし、発注が遅れて、販売期間が短くなれば、想定以上の値下げや売れ残り在庫を抱える結果になるわけで、誰にとっても良いことはありません。

そういったプロセスの中で、3Dのシュミレーションや CADによるテクノロジーは・・・

サンプルを作らずに選択バリエーションを増やすことができる、一方、簡単な確認で済むことは、わざわざサンプルを作らず、バーチャルでの確認で代替えすることで、必要最小限の実物サンプル作成に絞ることができそうです。

すると、単純なコストだけでなく、資材のムダや、働き方改革が叫ばれるなか、残業の削減にもつながることが期待されると共に、プロセスが短縮されれば・・・

意思決定のタイミングを販売時期に引き付けることができたり、シーズン中の追加生産、新企画など柔軟性にもつながることも期待できるとというわけですね。

3D CADを実際に使っている方によれば、現段階では、2Dと3Dのソフト間の互換性に問題があったり(双方への変換のたびに調整が必要で時間がかかる)、まだまだ、手間がかかるようです。

新しいものは、どうしても、産みの苦しみがありますし、保守的な方々からの拒絶反応は少なくないでしょう。

しかし、何ごとも、黎明期は辛抱のしどころで、徐々に過去データが蓄積されて行き・・・

ある臨界点(データベース内のデータ量や精度、オペレーターの熟練など)を超えたところで、業界で加速度的に実用に乗って行くのではないか、と思われます。 

データを蓄積して、反復作業、柔軟対応に活かせること、それはあらゆる業務のデジタル化の大きなメリットでしょう。

某グローバルSPAも、結構前からデザインのデジタル化とアーカイブの蓄積によるデータベース化が本生産前の商品企画生産のスピードと柔軟性に繋がっていると聞きます。

そして、3D のオペレーションが広がるにあたり・・・

例えば、デジタルネイティブ、ゲーム世代の活躍、また、エンタメ業界など3Dに慣れた異業種からの人材の流入を促し、いい意味で業界内でイノベーションが起こって活性化することも期待しています。

アパレル生産とサプライチェーンのボトルネックのひとつの解消策として、企画生産現場における3Dテクノロジーへの取り組みに注目しています。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

今回の投稿が2020年最後の投稿になります。

今年も1年間お付き合いいただきありがとうございました。

3月からコロナショックに直面し、業界全体がなかなか先の見えない情勢のまま新年を迎えます。

そんな中でも、むしろ未来に向けて加速した、「新しい生活様式」のビジョンを描き、それに向けた業務の再構築に邁進致しましょう。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 アパレルビジネスのボトルネックをあぶりだし、10年後の顧客のビジョンから改革を進める、勝ち残り戦略についての問題提起本です。

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December 14, 2020

メルカリの国内流通総額中のファッション関連カテゴリーはユニクロ、しまむらに続く、第3勢力規模に

Reloveメルカリの2021年6月期 第1四半期(7-9月)の決算発表資料に目を通しました。

米国事業やメルペイへの投資先行で赤字がしばらく続いていましたが、
前四半期と今四半期は2四半期連続での黒字になりましたね。

同社には、引き続きグローバルでの成長にも期待をしていますが、
やはり、顧客行動の変化に対応して、国内ファッション市場に影響を与えるであろう
メルカリ国内事業の数字からも目が離せません。

同国内事業について、企業としての売上高ではなく、
メルカリを使って顧客が売買した流通総額にあたるGMVベースでは
当第1四半期(7-9月)は1706億円(前年同期比34.6%増)
月間平均利用者数(MAU)は1750万人だったそうです。

この四半期の数字を移動平均方式で、年回り(前期2Qから当期1Q)にしてみると
過去1年で流通総額は6,695億円となります。

このうち、ファッション流通市場への影響という点では・・・

開示されているカテゴリー構成比
レディース19%、メンズ14%、ベビーキッズ3%までを含めると約36%となり、

カテゴリーごとに単価は違うと思いますが、
年間総額にこの構成比を掛け合わせて単純計算すると
年間流通総額ベースで2410億円相当になります。

ファーストリテイリングのジーユーが20年8月期で年商2460億円とのことでしたので、
メルカリは、現在、それと同規模、

国内アパレル市場においてはユニクロ、しまむらに次ぎ、ジーユーと並ぶ第3勢力ということになりますね。

参考までに同事業の四半期ごとの流通総額の構成比を5年平均でとってみると、
以下のような感じになりました。

1Q  2Q  3Q  4Q
7-9 10-12 1-3 4-6
20% 25% 27% 28%

やはり、冬から春に変わる時期、そして、3-4月の新生活が始まるところが、
持ち物を手放したり、購入したり、という機会が増え・・・
それに連動して流通総額も増えるのだな、と感じます。

この構成比を使って、今年度の流通総額予測をしてた上で、
上記のメルカリのファッション関連の構成比から流通総額を推計すると

今期1年間の累計は3000億円規模になりそうです。

コロナ禍の巣ごもり中に持ちものを見つめ直し、手放す機会も増えたことでしょう。
また、捨てるより、循環させることを考えねば、と多くの人々が考えている昨今。

メルカリの循環型社会に向けてのインフラとしての役割はますます高まりそうです。

先日、出品や梱包が面倒で始められないユーザー向けに、
オープンロジと組んだ「あとよろメルカリ便」や、カジタクやブックオフグループと組んだ「捨てない大掃除プラン」など
次々に未経験ユーザーのメルカリ出品デビューを手助けするサービス開始のリリースをされましたね。

どうしたら、ユーザーが不用品を手放しやすくなるのか?
未経験者のお困りごとを掘り下げて、いろいろなパートナー企業と組むことで
そんなアイデアは次々に広がって行きそうです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションが手ごろな価格の服を提供することによって、顧客の購買機会を高める一方で、ユーザーのクローゼットをあふれさせてしまった今日。毎シーズン、新しいもの作って、売るだけでなく、顧客のクローゼットのワードローブの循環を一緒に考えることこそが、業界企業のこれからのミッションのひとつになるでしょう。本書の後半では、これから10年の服を通じた顧客とのかかわり方を提言しています。

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October 26, 2020

米投資ファンドのABG、ブランド再建・再生のエコシステム

Forever2110月24日の日経新聞にブルックスブラザーズ、バーニーズニューヨーク、フォーエバー21など、経営破綻をした著名アパレルを次々に買収して、再建することで成長しているオーセンティックブランズグループ(ABG)の創業者のインタビュー記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

記事に掲載されていた、同社がこれまで買収したブランドを挙げると

プリンス(2012)、ジューシークチュール(2013)、ジョーンズニューヨーク(2015)エアロポステール(2016)ノーティカ、ナインウエスト(2018)バーニーズニューヨーク(2019)、フォーエバー21、ラッキーブランド、ブルックスブラザーズ(2020)など

サイトを見ると、同社が現在抱えるブランドは計50ブランドあるようで、上記以外に日本でもおなじみなのは、AIR WALK、VISON、VOLCOMあたりでしょうか。(右上の画像はシアトルダウンタウンのフォーエバー21)

傘下企業の年商は1兆円を超える、米国最大級の投資ファンド、ブラックロックらの資金に支えられたファッションビジネス専門の投資ファンドです。

https://www.authenticbrandsgroup.com/

創業者でCEOのジェイミー・ソルター氏はカナダ出身で、マーケティング畑に強く、スノーボードブランドのRIDEの創業者の一人、その後、スポーツ系ブランドのベンチャー向け投資会社に携わり、2010年ABG社の創業に至った人物(Wikipediaより)

同社は、国際的な知名度を持ったブランドながら、ブランド力のなさ、商品力の弱さでもない、負債などの財務上の問題で破綻したブランドを買収し、再建することを生業として、

主に、不採算店を閉め、リブランディング(若返りなど)を行い、更に、知名度を利用したライセンススキーム(ブランド使用権のライセンス収入)を行う、など、これまでそれぞれが構築して来た「ブランドの価値」を最大限に活かすことを得意としているようです。

アメリカはとかくチャンスとあれば、ビジネスを急拡大し、更に、経営者が代われば、気がつけば企業肥大、オーバーストア、なんて話がたくさんありますからね。

特に小売業は日本も含め、古今東西で、採算や人材育成のスピードを度返しした、ダボハゼ的な過剰出店が自滅的経営破綻にいたるのが破綻の最大の要因です。

昨今も、アマゾンエフェクトによるショッピングのオンラインシフトやコロナショックはあくまでも、きっかけであって、多くの米国小売チェーンの経営破綻の本当の理由は・・・販売効率の悪い店の過剰出店投資と積みあがった不採算店舗の山による資金ショートだと思っています。

そうなってしまったら、仕方ないので、まずは資金繰りに切りをつけて、リストラして、身軽にし、リブランディングできれば良し、できない場合はライセンスブランドとして生き残る。

もっとも、ライセンスしか選択肢がなくなったブランドは、最もお金になるであろう量販系にライセンスされることが多いと思いますが・・・

これから世界的に拡大の余地があるアパレル市場は、世界の人口動態からしても、低価格マーケットですから・・・破綻した、かの著名ブランドの知名度も、最終的には量販系マーケットでの需要に活かされることになる、というわけですね。

経済が右肩上がりの成長期はブランドの立ち上げラッシュ、

一方、マーケットも成熟期に入れば、ブランド破綻のままでは、もったいない、各ブランドのライフサイクルの最後にライセンスという出口を用意する必要が増えてくるでしょうね。

ブランドライフサイクルの中で、一旦役目を終えたブランドも知名度さえあれば、ライセンスブランドとして再利用というエコシステムがファッションマーケットにあってもよい。

ABG社の記事を読んでいて、これからの時代、そんなブランド再建、再生のありかたをビジネスにする企業の必要性を感じたものでした。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】

アフターコロナ時代を見据えて、粗利高最大化と在庫消化のために
ディストリビューションから販売計画実行を見直す
「ファッション専門店の在庫最適化の実践セミナー2020」
を11月19日にオンライン開催します。

これから事業部で本格的に在庫コントロールに取り組みたい、
再構築したい、組織と役割を見直したいという企業さん向けの内容です。

セミナー案内および申し込みは こちら>>>

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫運用を通じた在庫最適化を考える小売ビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

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October 19, 2020

Circular Economy サーキュラーエコノミー(循環型経済):ZARAのインディテックス社のこれから10年の経営テーマ

Photo_20201019195601サステナビリティ(持続可能性)やサステイナブル経営という言葉が全産業のテーマになり、メディアでそのキーワードを見かけない日はないくらいですが・・・

何をもってサステナブルなのかが今一つしっくりこない方も少なくないと思います。環境のために、社会のために、企業統治をしっかり、と言っても、企業の本業と直接結びつかない、ピンとこない取り組みが多いように筆者も感じています。

そんな中、ZARAを展開するインディテックス社のアニュアルレポートを読んでいて、腹落ちしたことがあったので、ご紹介したいと思います。

同社は2005年、パブロ・イスラ現CEOがナンバー2になったくらいからSustainabilityという言葉を使っていますが・・・

近年、そのサステイナブル経営の中核に置いているテーマのひとつに、Circular Economy(サーキュラーエコノミー)という言葉があります。和訳すると「循環型経済」となりますでしょうか?

このサーキュラーエコノミーについて理解する上で、

従来のリニア・エコノミー、一部の企業で取り組みが始まったリユース・エコノミー、そして、その先にある理想の状態であるサーキュラー・エコノミーの順に説明しましょう。(右上の図参照;出典はオランダ政府の資料です。) 

リニア・エコノミーとは、従来型の経済。新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、廃棄をするという流通経済です。

リユース・エコノミーとは、新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、リサイクルできるものは、再び原材料に使って製品化を行い、出来ないものは廃棄するという流通経済です。

これに対して、

サーキュラー・エコノミーとは、
製品化にあたって、そもそもリサイクルできない原材料は使わない。使用後は、そのリサイクル可能な原材料、素材を原料にして新製品をつくる。出来るかぎり使用後のリサイクル素材を使うが、必要に応じて、足りない分だけ、やはりリサイクル可能な新しい原料を足してつくる。
ということで、使用後の廃棄を行わない流通経済のことを意味します。

図にすると、リニア・エコノミーが一方通行の直線なのに対し、サーキュラー・エコノミーでは出口が入り口に合流する、サークル状の形になるというわけです。

ZARAのインディテックス社という企業は、これまでおおよそ10年ごとに経営のビジョンを掲げて来ました。

2000年代はflexibility(柔軟性)のスローガンのもと、ファッション業界の中でも最もその言葉の意味するところに近い本格派SPA(アパレル製造小売業)モデルのグローバル展開に磨きを掛けました。

2010年代は2013年にfully integrated store and online platform(店舗とオンラインの完全統合)をテーマに、いわゆるオムニチャネルリテイリング、あるいはOMO(online merges offline)の実現に投資を行い、あと2年後の2022年には世界的、全ブランドで完成するとのことです。

そして、2015年以降、その次のビジョンとして、並行して取り組み始め、これから力を入れるのが、Sustainability(サステナビリティ)の中のCircular Economy(循環型経済)というわけです。

同社の最新のアニュアルレポートによれば、

〇同社の700人を超える全ブランドのデザイナーおよび、本社、主要国のヘッドクオーターの社員、計10,000人がサーキュラーエコノミー(循環型経済)のための教育プログラムを済ませた。

〇デザイナーたちは、サーキュラーエコノミーの発想に基づいて、素材選定を始めた。

〇リサイクルのために、同社が出資する企業と組んで、店頭はもちろん、スペイン国内の街角に数千もの不要ファッション商品回収ボックスを設置し、EC宅配の帰り便(届けた後に手ぶらで帰らず、顧客の不用品を回収する)も利用し、製品リユース、リサイクル素材開発のための不要品回収を強化している。

〇サーキュラーエコノミーの発想に基づく、リサイクル、環境に優しい素材を用いたJoin Lifeのタグのついた商品群は既に全商品の25%を占めている。

〇回収した素材をリサイクルする先端技術を研究するスペインの大学や研究機関に投資をするために、米MITと共同ファンドを立ち上げた。

などの取り組みが紹介されています。

そんな同社のレポートを読んでいて、10年以上先にあるファッション業界のモノづくりの未来を想像していました。

□ デザイン(コンテンツ)はもちろん、その時々の最新ファッショントレンド

□ 原材料として使う素材はすべてリサイクル素材(ボタン、裏地も含む)

□ リサイクル以外の新しい天然素材、合繊素材の新規素材調達には、国際的な年間利用枠が設定されていて、利用規制がかかっている。
企業はその範囲で素材調達をして、モノづくりをしなければならない。

もし、将来、そんな社会が到来するとしたら?・・・・

インディテックス社は業界の中で、いち早く、DX(デジタルトランスフォーメーション)のビジョンをまもなく完成させ・・・すでに10~20年後の未来の「ありかた」に向けて動き出しているのだな、と。

このサーキュラー・エコノミーの実現は、既出のオランダ政府の資料によれば、25年がかりになるだろうと言われています。

しかし、そんな先の未来も見越して、ビジョンを描いて、信念をもって早くから準備を進めた企業が、その時になれば、業界の中で優位に進めることになるでしょう。

そして、これからの時代のキーワードになるであろう「サーキュラー・エコノミー」についても、いち早く取り組み、業界の先進企業となっているインディテックス社の動向、ビジョンからはますます目が離せなくなりそうです。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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September 28, 2020

ZARAのインディテックスグループがコロナ禍で行った決算対応

先ごろ発表された、ZARAのインディテックスグループの2020年上半期決算(2-7月)に目を通しました。41cimg0394_20200928173001

コロナショックの影響により売上高前年比44.3%の減収、同社上場以来初の赤字となった第1四半期に続き、
第2四半期は売上高前年比は31.4%減ながら、営業黒字化(営業利益率6.6%)を果たしました。

まずは、売上が31%減でも損益分岐点を上回っている、営業黒字を出せるなんて、すごい会社だな、と素直に感心します。

結果、上半期の累計売上高は前年比37.3%の減収、半期では依然として営業赤字のままです。

一方、足元の8月以降は売上高前年比11%減まで回復して来ているようなので、このまま回復に向かえば、第3四半期累計で黒字化は果たせることでしょう。

この間の4連休に新宿店を覗きましたが・・・来店客でムチャ混みで、フィッティングルーム前は長蛇の列でビックリするくらいでした。

半期決算の結果だけ見ると、「世界一のインディテックスもコロナショックには勝てず、赤字に陥った」となりますが、
この間、同社は表面的な売上大幅減と営業赤字の裏で、いくつかの「先手」を打っていることが、決算書を見るとわかります。

ひとつは、以前もブログで紹介しましたが、前期末(20年1月末)にコロナショックの影響を見越して、春夏在庫を評価減したことです。

コロナショックの影響を受けなかった2019年度(2020年1月期末)は

売上高  3兆4,028億円(前年比8%増)、
営業利益高 5,749億円 (同9.5%増)

の過去最高益となる増収増益でしたが、

この期は

1)コロナ前から長年進めて来た店舗のスクラップ&ビルドを加速し、前年の2.5倍、売上高対比で言うと10%にも上る減価償却費を計上して今後の大量閉店に備え、なおかつ、

2)1月末から世界各国で表れ始めた新型コロナウィルス影響に備えて、1月末時点の春夏在庫に対して、約355億円の在庫評価減のための引当金を計上しています。

もし、この在庫評価減がなければ、同期の営業利益は前年比16%増の大幅増益となっていたところでした。

ふたつめは、21年第1四半期がコロナショックの直撃で赤字になると見るや、引き続き前年の1.4倍の減価償却費を経費計上し、あえて大赤字を出したことがわかります。

償却前の利益(EBITDA)はしっかり黒字だったところを見ると、上半期の業績を犠牲にしてでも、下半期以降の負担を軽くするために、ある意味「膿出し」をしたように思えます。

インディテックスという会社は、

消費者の購買行動の変化を見据え、2010年にオンラインビジネスを始め、2013年に「店舗とオンラインの完全統合プラットフォーム(=OMO)」宣言をして以来、店舗のスクラップ&ビルドを進め、オンラインで買って店舗で受け取る、店舗で見てオンラインで買うことができるデジタルトランスフォーメーションインフラを整え続けて来た会社。

現在、出店国は世界96店舗になり、オンライン販売実施国は66か国ながら、世界の202の国と地域にオンライン販売できる体制を整え、宣言から10年後となる2022年にグループ全体でその体制が整うとのことです。

これは、RFIDを含め、10年がかりのIT投資によって店舗、EC倉庫、本社倉庫の在庫情報がリアルタイムに一元化されたことで・・・

オンラインで注文した顧客に店舗在庫からも出荷ができるようになったことの「たまもの」です。

この体制が整えば・・・

今後、コロナショックのような外出自粛があっても、オンライン活用で全店の店舗在庫を近隣の顧客に届けたり、密を避けて店頭で手渡したりできるようになり、被害もこれまでとは違い、最小限に抑えられるようになるでしょうね。

そんな10年単位の長期的ビジョンを持ち、危機があるごとに、企業体質を見直し、単年度ではなく3年平均の売上と利益の成長率を考えて来た同社だからこそ成せる業であって・・・上記で述べたような、同社の決算期ごとの調整は、決して短期的な財務テクニックの話ではなく、中長期ビジョンに基づく余裕から来るものであることもわかります。

同社の直近のプレスリリースによれば、

2000年代は製造小売業と業務の内製化に磨きをかけ、ファッションビジネスのリスクに対する「柔軟性」(=flexibility)を構築した10年。

2010年代は店舗とオンラインの完全統合(=integrated store and online platform)に磨きをかけた10年。この体制はあと2年で完成するようです。

そして、ここからの10年、彼らの視線はこれからのサステナブル経営(=sustainability)、特に※サーキュラー・エコノミー(=circular economy; 循環型経済)に向かっているとのことです。

世界のトップランナーである同社からは、引き続き目が離せませんね。

※「サーキュラー・エコノミー」については、今年から来年以降の、サステナブル経営関連の重要キーワードになりそうなので、また、あたらためて、ブログでご紹介したいと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。

 

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