September 27, 2021

インディテックス(ZARA)の2021年度上半期決算 第2四半期は過去最高益更新で回復中

Zara-londonインディテックス2021年度上半期決算(2021年2月~7月)が発表されていたので
資料に目を通しました。

あえて、前年2020年度対比ではなく、好調だったパンデミック前の2019年度対比でまとめてみます。

第1四半期(2月~4月)こそ、

売上高 パンデミック前の2019年度比 83%、
営業利益   同         58%でしたが、
営業利益率 11.5% (-5%)

99%のお店が営業状態に戻った 

第2四半期(5月~7月)は
売上高が 2019年比で 101.5%、
営業利益  同    105.3% 
営業利益率 16.0%(+0.6%)

と2Qとしては過去最高益となりました。

上半期を通じては

売上高が 2019年比で 93.1%、
営業利益  同    82.6% 
営業利益率 14.1%(-1.8%)

としてはまだまだですが、2Qの過去最高益の回復ぶりは特筆すべきことでしょう。

在庫状況についても

2Q末の在庫高は2019年とほぼ同じ水準で
在庫回転率 年換算ベース 4.5回転、
在庫日数80日前後 
と、優秀だった2019年の2Qの効率と同等に戻っています。

在庫の中味も健全である、つまり3Qの販売に必要な在庫のみ

であることをアピールしています。

コロナ禍、ニューノーマル化によって、グローバルトレンドを強味とするZARAは厳しくなるのでは?
という意見もありましたが、

当初計画通り店舗を大幅にスクラップ&ビルドしながら、
パンデミックの最中に店舗とECの統合プラットフォームを前倒しで完成させ、

EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元化(SINT)により
EC売上を2019年対比 137%増 (2020年対比 36%増)
と顧客の購買行動の変化に対応しています。

今年は店舗の回復を見込み、
EC売上比率は通年で25%相当になる見込みとのこと
(昨年は店舗売上が大きく減ったので32.4%)

こちらも、数年前からの計画通りの数値です。

ということで、業界の見方を覆し、
四半期ベースではありますが、コロナ前の好調な水準以上に戻したことになります。

あらためて、需要にあわせて、市場が求めるものをつくり続ける
という同社の柔軟性に驚かされます。

ここのところ、店頭やサイトを見ても、
モードというよりも、カジュアルトレンドを追求した
商品訴求が目立ちますね。

以前から、ZARAは、各サブセクションに
モードトレンドのオン・オフ 
カジュアルトレンドなオン・オフの
4軸のコレクションフレームを持ち

毎シーズンの需要に応じてその4つの構成比を変化させならが
売場を構成して来ました。

今回もパンデミック下における顧客の購買志向あわせたまでで、
結果、ニューノーマルの需要に対応できた、というわけです。

ここまで来たら、何でも来いですね(笑)

更に、これまで掲げて来た


店舗やショッピングのDX化の指標や
サステナブル系の指標においても

計画目標を何年か前倒しで達成中というから驚きです。

厳しかった8番目のブランド、服飾雑貨中心のUTERQUEをMassimo Duttiに統合したり、
ZARAの店舗の大型化にあたり、ZARA HOMEを展開する店も増やして行くというように
ブランドごとの対応も推進中。

パンデミックが落ち着けば、あらためて世界最強の強みを見せつけてくれそうです。

今後も、同社からは目が離せません。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】ZARAの強みをおなじみのユニクロと比較することであぶり出したビジネス読本。両者から学べることはまだまだたくさんあります。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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April 06, 2021

世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

4cimg0441 世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2021.1期) 2兆5,918億円 -28% 1,914億円 7.4% 6,829 ZARA
2位 H&M (瑞;2020.11期) 2兆3,453億円 -20%  388億円 1.7% 5,018 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2020.8期) 2兆0088億円 -12% 1,493億円 7.4% 3,630 UNIQLO
4位 GAP (米;2021.1期) 1兆4,380億円 -16% -898億円 赤字 3,715 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2021.1期) 1兆2,344億円 -8% 1,645億円 13.3% 2,669 Bath&Body Works
6位 プライマーク (愛;2020.9期) 8,436億円 -24%  517億円 6.1% 384 Primark
7位 しまむら (日;2021.2期) 5,426億円 +4%  380億円 7.0% 2,199 しまむら
8位 NEXT (英;2021.1期) 5,183億円 -17%  548億円 10.6% 491 NEXT
9位 アメリカンイーグル (米;2021.1期) 3,917億円 -13% -282億円 赤字 1,078 AEO
10位 アーバンアウトフィッターズ (米;2021.1期) 3,594億円 -13%      4億円 0.1% 645 Anthropologie

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアは過剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめなかったため、除外しております。                              

【解説】

全体を見渡すと、経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。

以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。

全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。

EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これからは同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験へ、そして、次のテーマである、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

2位のH&Mは

第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期がコロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地させた経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。

店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。

これからは、遅れていたデジタル化へのアクセルが回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらく、苦戦するのか?注目の1年になります。

関連エントリーーH&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

3位のファーストリテイリングは

年間のうち、半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心。欧米に比べ、市況回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利な環境と言えるでしょう。

特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。

今期は、3月から消費税分値下げした分を、同社がどう利益を確保するのかに注目です。

関連エントリーーファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

4位のGAPは

大幅減収赤字、GAP、バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP事業売上前比73.0%、バナリパ事業は同57.5%)。

店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位の位置づけです。

ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECは倍増で、いよいよVSとB&BWの売上が逆転しました。

ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益が期待できそうです。

関連エントリーーファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、

しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。

これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。

一旦、かつての販売効率まで戻った後、出店余地の限られる日本国内で、どのように、収益を伸ばすのかが、焦点になります。

8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受取り)を上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。

今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行するという、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。これは、興味深いです。

この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。

今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、今後、深堀りしたいと思います。

さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。

筆者としては、ZARAのインディテックス、ヘルス&ビューティへのドメインチェンジが進むLブランズ、チェーンストアの強みを活かしつつ、プラットフォーマーとしての付加価値を追求するNEXTの3社に注目したいです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になることでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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March 29, 2021

ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

Zara-onlineZARAを展開するインディテックスグループの2020年1月期決算報告 FY2020 RESULTS

に目を通しました。

同社の決算期は2月~翌1月期なので、通期(全四半期)すべてがパンデミックの直撃を受けた1年でした。

但し、営業赤字だったのは、1Q(2-4月期)のみで

通年では、

売上高 20,402百万ユーロ(日本円換算2兆5918億円)と前年比72.9%(27.1%減)

粗利率 は前年55.9%→55.8%とほぼ変わらず

販売管理費 は 前年比83.2%(16.8%減)に抑え、

営業利益 1,504百万ユーロ(日本円換算1,914億円)前年比31.5%(68.5%減)

営業利益率は前年16.9%→7.4%と下がりましたが

営業黒字で着地しました。

インディテックス社の決算発表により、大手3社が出揃い、

2020年度の世界アパレルチェーン売上高ランキングのトップ3は

1位 インディテックス(ZARA)  1月期  2兆5,918億円(1,914億円 営業利益率7.4%)
2位 H&M           11月期  2兆3,752億円(227億円 同1%)
3位 ファーストテイリング    8月期  2兆0,088億円(1493億円 同7.4%)

に確定しました。

2019年度のランキング

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

とトップ3の順位の入れ替わりはありません。

同社の期末店舗数は

7469店舗から→6829店 と640店舗の純減です。

内訳は閉店 751店 新店 111店 96店改装(うち45店が大型化)です。

これは慌てて閉めた、というより、中長期計画の計画通り。

在庫に関しては、期末在庫は前年よりも9%少なく、

4半期ごとに見ても前年よりも10%少ない在庫水準で回していたようです。

 

今回の同社の決算の最大のトピックはECの大幅売上拡大と世界全店舗のオムニチャネル体制の完成でしょうか。

EC売上高は77%増の6,600百万ユーロ(日本円換算 8,384億円)

EC売上比率は32.3%と前年の13.2%から急増です。

このEC売上の拡大に寄与したのが、

同社のオムニチャネル施策(Fully integrated store and online platform)のコアにある

SINT(Single Inventory Integration)というコンセプトです。

要は、各国のEC向け在庫と店舗のストックルーム(バックヤード)の在庫を一元化し・・・店舗のストックルーム在庫をEC需要の引き当て対象にできるようにした、という話です。

これをリアルタイムに可能にしたのが、RFIDの全店導入完了です。

このRFIDも、自社開発。

ほとんどの企業が使っているRFIDは、主に、値札や洗濯絵表示に埋め込まれている、安価で使い捨てのチップですが、インディテックス社の場合は、全商品に、スペインの倉庫で取り付けられたセキュリティタグの中に埋め込まれています。

丈夫で高性能、更に、回収することで、何回も再利用ができるという優れものです。(高性能、1回あたりのコスト減、リサイクルで環境にも優しい)

使えるものは、再利用をするという同社のポリシーはこんな最先端のテクノロジーにも活かされているわけですね。

話をSINT(在庫一元化)に戻しますが、

同社によれば、これが、売上高比率32.3%になったEC売上高全体の中の12%分に寄与したとのことです。

通年COVID19の影響を受けても、まだ、世界一の売上規模と利益を確保したインディテックス社。

今後、同じような、ロックダウンで店舗を閉めなければならない事態になっても、商売を継続できる体制が整いました。

さまざまな変化に対して、柔軟な対応ができる、

という世界最強クラスのオペレーション・エクセレンスを見せつけた決算と言ってもよいのではないでしょうか?

近日中に世界アパレル専門店売上高ランキング2020年版も更新したいと思います。

お楽しみに。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。これから進む道も、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。両社の比較分析が、未来のアパレルビジネスを考える上で、とても参考になると確信しています。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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February 01, 2021

英ファッションEC企業による、破綻した百貨店や専門チェーンの買収目的

Topshop2017先週、イギリスのファストファッションECサイト、Boohooブーフーが、昨年12月に破綻した老舗百貨店、デベナムズを買収するニュースが流れました。

Fashionsnap.com 英ファストファッションEC「ブーフー」が経営破綻の大手百貨店デベナムズを買収

Boohooはデベナムズのブランドとウェブサイトを5500万ポンド(約78億円)で買収し、その他の資産である124の実店舗と12,000人の従業員は買収対象から外しています。

また、同様に昨年11月に経営破綻したアルカディアグループのTOPSHOPなどのブランドを、やはり英ファッションECモール大手のASOSエイソスが買収を検討しているというニュースも入っています。

WWDジャパン 英ECエイソスが「トップショップ」買収に意欲 ブーフーは百貨店デベナムズを獲得

こちらもASOSがアルカディアから買いたいのは、ブランドとウェブサイトが持つ顧客だけで、店舗は要らないとしています。

ちなみに、世界最大級のファッションストアと言われる、かのTOPSHOPのオックスフォードサーカスの旗艦店(右上画像)は現在、別途、売りに出されているとのこと。

更に、速報ベースですが、こちらのイギリスのyahoo!financeのニュースに寄れば、ASOSが狙っているのはアルカディアグループのTOPSHOPとMissSelfridgeの2ブランドで、その他のブランド、Dorothy Perkins, Burton および Wallisについてはデベナムズを買収したBoohooが現在交渉中とのことです。

Asos edges closer to sealing Topshop and Miss Selfridge acquisition

これらのニュースを聞いて、恐ろしく感じたのは、アメリカのアマゾンやアリババは、オンラインのみのビジネスに限界を感じて、リアル店舗が欲しくてスーパーや百貨店を買収していますが(店舗と従業員付で)、

BoohooやASOSは、欲しいのはブランドと顧客だけとし、固定費である店舗や従業員はいらない、と割り切っていることです。

イギリスでは、アマゾンが世界で牽引するオンラインショッピングや顧客のショッピングのデジタルシフトに対して・・・

ここ10年間で、多くの百貨店や専門店が、自社ECサイトを立ち上げ、EC販売を強化しながら、オンライン注文を店舗で受け取ることができる、クリック&コレクトに力を入れて、顧客をオンラインに寄せ、新しい小売業として生まれ変わる努力をして来ました。

ところが、そんな新しいプラットフォームが完成するかどうか、という矢先にコロナショックによって数回に渡るロックダウン、店舗閉鎖に追い込まれたイギリスで、力尽きたデベナムズやTOPSHOP(アルカディア)やこれからも出てくるであろう破綻企業は、

これまで構築の努力をして来たブランドとオムニチャネルプラットフォーム上の顧客たちを、そっくり、そのままEC企業たちに掻っ攫われる、という話です。

これらのニュースを聞いた時、これは決して、対岸の火事ではない、と思いました。

今、日本においても、一生懸命、EC化率を高めて、顧客の購買行動の変化に合わせて生まれ変わろうとしているアパレル企業や専門店がたくさんあると思いますが・・・

利益体質を取り戻せないまま、なまじっか、EC化率だけを高めても、・・・それこそ、勢いのあるEC企業にブランドとECプラットフォームと登録会員だけを持っていかれてしまう標的になりかねない、ということです。

本来であれば、オムニチャネル(あるいはOMO)型の新しいビジネスモデルとして生まれ変わるつもりでも、その脱皮に時間がかかれば、キャッシュが持たず、力尽き、その結果、せっかく構築したECプラットフォームだけをみすみすEC企業に持って行かれ、店舗および店舗で働く従業員を守り切れない、という話にもなりかねません。

イギリスで起こっているEC企業が破綻小売業にしかける買収劇は、実店舗や従業員の雇用が守られない、という厳しい話ではありますが・・・

日本においても、それらを教訓に、あらためて、しっかり儲かる利益体質をつくり、必要十分なキャッシュフロー経営を行いながら、新しい購買行動に合った企業にモデルチェンジをして行きたいものです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギ、顧客とのこれからの関係構築がテーマです。本書中でウルトラファストファッションとして、ASOSやBoohooも紹介しています。

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January 11, 2021

越境ECに特化して急成長を続ける中国新興アパレル企業、SHEIN(シーイン)の勢いと中国アパレルEC市場の事情

20210111_1533201月8日の日経新聞に中国から越境ECで世界に販売する新興ファストファッション企業SHEIN(シーイン)に関する記事が掲載されていました。

中国発の新興アパレル 最大手「ZARA」に挑む

同社はトップスで日本円で1000円前後から2000円くらいまでの低価格ファストファッションに特化し、中国企業ながら、中国市場ではなく、むしろ世界に越境ECで拡販する急拡大中の企業。

記事によれば、19年の年商は日本円換算で約2500億円、中国メディアによれば、20年には1兆円を超したのでは?とのことです。

この前年比4倍の1兆円!?はちょっと眉唾ですが・・・

昨年、世界でSHEINのショッピングアプリが1億1200万ダウンロードされたと聞くと相当の急成長は見込まれます。(右の画像はSHEINサイトから)

彼らの勢いは、すでに数年前から中国で耳にしていましたので、今回、日経の記者の方からこの記事のためにインタビューの依頼を頂いた時に、いよいよグローバルプレゼンスが高まって来たのだな、と思いました。

拙著「ユニクロ対ZARA」が2017年に中国語翻訳され、2017年~2019年に中国に研修講師として頻繁に招かれていた時に、多くのナショナルチェーンの幹部の方々に参加頂きました。

当時(2018年頃)、「中国で元気のよいローカルのアパレルチェーンはどこですか?」と聞くと、多くの方が口を揃えて、SHEIN(ヤングレディース中心)やPATPAT(子供服)などの越境ECをやっている新興企業の名が返って来たものでした。
実際、当事者であるそれらの企業の幹部の方々も熱心に研修をお聴きになっていらっしゃいました。

その背景には、中国のアパレル業界では、すでに大手チェーン間の競合も激しく、かと言って、ECに手をつけても、すでに広告宣伝費や販促費が高くなり過ぎて儲からない。

そんな、中国アパレルEC市場に見切りをつけて、産地としての中国のアドバンテージを活かし、海外で、しかも、出店ではなく、越境ECで売上を伸ばそうと考えた新興ブランドに最も勢いがある、という話です。

彼らは、素材と縫製の基地がある広州などに生産拠点を置き、すでにレッドオーシャンとなった中国アパレル市場ではなく、アメリカ向けや中東向けなど、ターゲットとするマーケット専用のサイトをつくり、中国で次々に小ロット、短サイクルで商品をつくり、低価格で販売して売り切ることで成長して来ました。

日経の記事が世界最大手のZARAと比較をしていますが・・・、比較には及ばない、と思われるかも知れませんが

実は、共通点があって、それは、目の行き届く本国、本社の近くで作って、世界に売り込むというビジネススタイルなのです。

とかく、トレンドファッションはトレンドの変化によって在庫リスクを抱え込むもの。
遠くで、時間をかけて安く作って商売をすることは大きなリスクになります。

ZARAが他のファストファッションチェーンにアドバンテージがある理由は、
母国スペインや近隣のポルトガル、モロッコなど、目の行き届くところでトレンド変化と過剰在庫リスクに注意しながら、小ロット短サイクルでつくり足して行くところです。

これに対して、イギリスでASOS、BooHoo、ミス・ガイデッドなどのオンライン系のファストファッション企業(ウルトラファストファッション)が台頭したのも、その多くがイギリス国内での移民労働力を活用したモノづくり(MADE IN UKの地産地消)とオンラインによるローコスト及びスピードオペレーションが背景にあります。(詳しくは「アパレル・サバイバル」をご参照下さい)

そして、今、世界の工場である中国から、同じ発想で世界に売り込む越境EC企業が台頭しているという話です。

ZARAにどれだけ迫るか?というのは面白い議論だと思います。

もちろん、ZARAが長年き築き上げて来た店頭起点のディマンドチェーンのPDCAの回し方と国際高速物流のインフラの安定性にはそう簡単にはかなわないでしょう。

しかし、

目の行き届くところで作って、世界に売るという発想を、
より人件費の安い産地から行う

しかも

オンラインで多店舗出店よりローコストと柔軟性を持って、高速で行う

というプレーヤーが出て来たことは、新しい時代の幕開けと言えるかも知れません。

目の行き届く産地でつくってリスク回避 x オンラインで世界にリーチする 
+オンラインで顧客の反応を解析しながら、つくり足す

市場低価格政策ゆえ、競合に価格で下をくぐられるリスクを抱えていることを指摘しながら、彼らが今後どんな発展をするのかに注目しておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションの次の流通革新に挙げられるイギリス発ウルトラファストファッションとは?これまでの流通革新を振り返り、これから10年の流通革新を模索しています。

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June 15, 2020

インディテックスグループ(ZARA)既存店の大量スクラップ&ビルドによりEC連動型店舗へのモデルチェンジを加速

6月10日に発表されたZARAのインディテックスグループの2020年度第1四半期決算に目を通しました。
4cimg0441_20200615133601 日経新聞や繊研新聞などの一部の報道では
コロナショックによる店舗休業によるダメージが甚大で売上高前年比45%の減収により、営業利益は大幅減益となり、四半期赤字に転落したと共に

グループ全体で現在世界に7412ある店舗を2022年までに1200店舗閉鎖することが強調され、

この3カ月間で5割伸ばしたECを強化する(現在の年間EC売上比率14%から25%へ)、さすがの世界一のアパレル企業も新型コロナによってデジタルシフトが迫られた、というような論調で書かれていますが・・・

 

それらに抜け落ちている大事な視点を補足をさせて頂くと、

実際は 
・これら1200店舗が役目を終えたZARA以外のブランドの小型店が中心であり、
・閉店の一方で並行して450店舗のEC連動型の大型店を新規出店することで、
結果、
・店舗は全体で600店舗くらい減るものの、売場面積は逆に毎年2.5%増え、既存店売上も4~6%伸ばす計画であること

が同社のオリジナルプレスリリースを読むとわかります。

ですから、同社の場合は、業績不振のアメリカのチェーン店とは違って、閉店数が多いことだけを取り上げて「ヤバいのか?」

悲観することではなく、より健全な状態に向かっていると見るべきでしょう。

これらの施策は、メディアが言うようなコロナショックがあったからの急展開ではなく、もともと同社が2012年あたりから始め、ここ3年で加速していたいわゆるオムニチャネル(OMO)施策の総仕上げに過ぎないんですよね。
同社ではこれを fully integrated store and online platform と呼びます。

実際、過去6年間に
1729店舗を閉店して、
1106店舗を増床し、
2556店舗を改装し、
3671店舗を新規出店しています。

その間は店舗数も売場面積も純増でしたが、
これからは、店舗数は純減も、売場面積の純増は維持し、
よりECを店舗と連動させ、

同社が以前から描いていた
「新しい顧客購買行動のビジョン」に投資を続ける
というだけの話なんです。

今回の赤字には閉店予定店舗の減価償却の積み増しも多く含まれています。
(前期は売上が落ちることを見越して、在庫引当金=評価損の原資を計上しました)

また、大量閉店と言うと、雇用はどうするんだ?という意見もあると思いますが、同社はEC対応する大型店のEC対応要因として受け皿を用意していると言い、雇用に対する配慮も欠かせません。

危機に背中を押されるのではなく、
まずは未来の顧客像やビジネスのビジョンを描き、
顧客は進化して行くにも関わらず、自分たちが変わらないことへの危機感に対し
行動を続けているのがインディテックスグループの姿です。

彼らが今、何を考えているのかを常にウォッチしていれば、
規模にかかわらず、我々も活用できる未来へのヒントが得られます。
なぜなら、彼らが長年観ているのは、競合ではなく、「顧客だけ」ですから。

まだまだその背中から学ぶことはたくさんありそうです。

関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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June 08, 2020

ファッション小売業の在庫は在庫日数(週数)で考えよう~H&Mの中長期時系列分析から

WWDジャパンさんの月イチ連載20200608_144754中 上場企業の決算書からビジネスの視点を学ぶ「ファッション業界のミカタ」が2年目に入りました。先月の5月11号と今週の6月8日号は
2回に分けてH&Mの①大量出店による成長の課題と②年々重くなる在庫問題について
レポートさせて頂きました。

企業の業績をよくありがちな前年比だけで見るのではなく、
中長期の数字を時系列に並べて・・・見つけた課題を深堀するのが
筆者が採るアプローチですが、

H&Mの日本上陸後、2009年以降の4半期の業績を並べてみて、気が付いたことをまとめてみました。

まず、同社の営業利益のピークは2015年11月期です。

その後、出店による売上増は続くものの・・・

残念ながら営業利益は一度もピークを超えることが出来ていません。

直近の2019年11月期は前年比、増収増益ながら、
ピークの2015年11月期対比 店舗数は129% 売上高は128% 営業利益は64%、
10年前対比でみると、    店舗数は255%、売上高は229%、営業利益は80%
という状況です。

要は、規模は肥大しているのに、販売効率が下がって儲からなくなっているという、チェーンストア拡大のジレンマです。

これは筆者の持論ですが、営業利益高のピークアウトはその企業や業態が成長期を終え、成熟期に入った時期と考えられ、
従って、あそこが営業利益のピークアウトだったのかも、と2年連続で減益を実感したら、

何か次の手を打たなければ、衰退期を待つだけ、ということになると思っています。

その頃(2016~2017年)、H&Mがどういう状況だったかというと、ZARAのインディテックスとの世界シェアトップ争いの真っただ中で、
H&Mは出店余地の大きい、世界の2大大国であるアメリカと中国で店舗数と売上高を積み上げていましたが、
中国では大量出店して店舗数を増やしても・・・販売効率(1店舗あたり売上高)は下がる一方、それでも、出店を続けていたのでした。

一方のインディテックスは・・・店舗のスクラップ&ビルト、店舗数拡大よりも店舗の大型化(売場面積拡大)に力を入れ、
ECへの集中投資を進めていたのですね。

両者の明暗は、過去3年間の業績の通りです。

次に、今月号では、H&Mの在庫状況に着目しました。

H&Mは11月決算で、冬物をたんまり持っている時期なので、冬が終わって在庫が軽くなる1月決算や2月決算の会社と期末の在庫回転率を比較するのはフェアではない、と長年思っています。

あと、小売業の実務に携わるものとして、会計期末だけで計算する在庫回転率にはいつも違和感を持っています。
正直、期末だけ在庫を絞れば回転率は高回転に演出できますからね。銀行や投資家には高効率の会社という印象を持ってもらえます。

従って、今回はH&Mの四半期ごとの期末の在庫日数の推移で評価をしてみました。

それから、在庫日数の計算式って、通常は 

在庫日数=期末在庫原価÷過去の期間中1日あたりの平均売上原価

で計算される方が多いと思いますが、

ファッションビジネス、特にアパレルビジネスにおいては、期末在庫ってものは、これから迎える月あるいは四半期に売るシーズン在庫をどれだけ持っているのかが大事なことなので、筆者は期末在庫を翌四半期(あるいは月)の1日あたりの売上原価で割るアプローチを取ります。

(筆者流)在庫日数=期末在庫原価÷翌四半期の1日あたりの売上原価

※実務レベルで試してみたい方は翌月または翌四半期の予算ベースの売上原価で割ってみて下さい。

以上の前提でH&Mの四半期ごとの在庫日数を時系列に眺めてみると、

やはり、健全なのは、2014年から2015年にかけてです。実際に、90日台で在庫が回っています。

日本企業のように商社を介さず、直貿のH&Mからすれば、Ex-Factorベースの在庫なら90日台なら上等でしょう。インディテックスもそんなもんです。

ところが、その後、じわりじわりと在庫は重くなり、2017年には130日台に膨らみ、
最悪だったのは2019年11月期1Q(冬の終わり)の142日、
2019年11月期末(冬真っただ中)には何とか、128日まで落とすことができたという状態です。

でも、まだ、業績がよかった時に比べても1.35倍くらい抱えているのです。

ユニクロや無印良品のようなベーシックならまだしも、
高速で在庫を回したいトレンドファッション系のH&Mが130日台=4か月以上分の在庫を常に抱えながら商売をしているのって結構リスク大きいと思いますね。

これは、H&Mのグローバル低価格競争上の問題にあると思っています。

好調だった2015年ころまでは、店頭で見ても結構、中国製やトルコ製でデザイン性の高い商品を作って高速回転させていた印象だったのですが、今は、各国での価格競争上、店頭商品は圧倒的にバングラディッシュやカンボジアあたりが増えましたよね。

これらの原産国は比較的ベーシックなものに強味があり、また発注から仕上がり、そして、東南アジア、西南アジアからは欧米への輸送に時間がかかりますから、
例えコスト的には競争力があっても、必然的にファストファッションにとっては在庫リスクが高くなる、
長いリードタイムと在庫日数の長期化という課題と向き合わなければならなくなるのです。

これは実は他人事ではなく、安い人件費を求めて産地を遠く、遠くに持って行っている日本のファッション流通企業も気をつけなければならない課題ではないでしょうか?

さて、社長が代わられて、

これから効率を落としての大量出店の見直し、ファッションストアとしての在庫の適正化の問題

の改革を進めるH&M社。

製品のサステイナブル性ももちろん大事ですが・・・サステイナブルな経営のためにどんな舵取りをするのか?
21世紀、世界の「ファッションの民主化」を旗手として、一時代をつくった同社のリ・ブランディングを見守ることと致しましょう。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 25, 2020

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

4cimg0441 世界の大手アパレル専門店各社の2019年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。
 円建て比較にあたり、為替レートは2020年1月末の €=120.3円、スウェーデンクローナ=11.32円、US$=109.06円、英国£=142.87円で換算しています。 

 尚、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライスストア、また、昨年まで1年遅れの売上高で掲載していた欧州の非公開大手アパレルチェーンC&Aの売上高が掴めませんでしたので、今回から除外しております。

(右の画像は2014年9月訪問時のインディテックスグループ本社正門)

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2020.1期) 3兆4028億円 +8% 5740億円 16.9% 7,469 ZARA
2位 H&M (瑞;2019.11期) 2兆6347億円 +11% 1963億円 7.5% 5,076 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2019.8期) 2兆2905億円 +8% 2576億円 11.2% 3,589 UNIQLO
4位 GAP (米;2020.1期) 1兆7867億円 -1% 626億円 3.5% 3,919 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2020.1期) 1兆4084億円 -2% 281億円 2.0% 2,920 Victoria's Secret
6位 プライマーク (愛;2019.9期) 1兆1132億円 +4% 1304億円 11.7% 373 Primark
7位 ネクスト (英;2020.1期) 6230億円 +3% 1102億円 17.7% 498 NEXT
8位 アセナリテール (米;2019.7期) 5990億円 -16% -742億円 赤字 3,445 Ann Taylor,Justice
9位 しまむら (日;2020.2期) 5219億円 -4% 229億円 4.4% 2,214 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2020.1期) 4698億円 +7% 254億円 5.4% 1,095 AEO

                                  

以下、ランキングは昨年と大きく変わりはありませんが、1位から5位及び気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

安定の増収、二けた増益を達成しました。
約65%の売上シェアを占めるZARAの店舗の世界的なスクラップ&ビルドと世界202か国に販売できるオムニチャネルのプラットフォームは整い、2019年度はこれから数年間の飛躍が見込まれるであろう時期の初年度でしたが、あいにく期末に発生した新型コロナショックの拡大とそれによって見込まれる店舗休業、売上減、過剰在庫増に対応して、2019年度に稼いだ利益から在庫評価損を338億円計上しました。これだけの評価損を計上しても、10%を超える利益を上げるのは同社の収益力から来る余裕に他なりません。

2位のH&Mは

屈辱的な3年連続の減益後、二けた増収増益で歯止めをかけました。しかし、その前年増益の営業利益高も、売上高が半分だった10年前の水準にも及ばず、という状態です。2015年くらいを期に、グローバルでも成熟期に入ってしまったと思われるH&M。
新社長(女性)に変わって、これから、ようやく店舗のスクラップ&ビルドとEC強化が進むことになりそうですが、
欧州と中国の苦戦にどう対処するのか、課題は山積みのようです。

3位のファストリは

3年連続の増収増益を好調の中国事業とGUの復活で成し遂げました。
成熟市場のユニクロ国内事業の既存店は辛くも微増、国内の成長はEC次第となります。

4位のGAPは

減収減益、GAPとバナリパのリストラが続きます。
オールドネイビーの分社化を中止し、オールドネイビー出身の女性新社長に今後を委ねます。
リストラ中に関わらず店舗が増えたのは、オールドネイビーの出店と買収したJanie & Jack(キッズ)の店舗が増えたためです。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラと事業売却失敗もあり、減収大幅減益です。
売上の6割を占めるVSは既存店-7%で事業赤字。
一方、ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(BBW)は既存店+10%増、営業利益率23%と絶好調。
今後、BBWの分社化を計画しているようです。

以下、めぼしいところを付け加えますと、

6位のプライマークは

増収増益維持も既存店売上は2年連続の減収中と、規模は拡大中も、陰りが見られます。
ドイツが不調、南欧はまずまずの模様。
店舗の増床、減床を行いながら個店の収益体制を整え、ライフスタイル部門の拡充に力を入れています。ちなみに同社はSNSは活用するが、ECはやらないと宣言しています。

7位のネクストは

採算のよい店舗は増床しながら、店舗を減らし、既存店(店舗)売上は‐5.7%も、ECの12%増が寄与して増収増益。
全体の売上に占めるEC比率はほぼ50%となり、営業利益に関してはECの構成比は52%に。
店舗をスクラップ&ビルドをしながら、ECの利便性を強化するとともに、オンライン注文の店舗受け取りであるクリック&コレクト比率は50%を誇ります。
ECと店舗を活かし、他社の商品も運ぶ、自社インフラを生かした物流プラットフォーム化への取り組みに力を入れている段階です。

今回も、ランキングを作成するにあたって目を通させて頂いた、各社の決算書から学ぶべきことは、
インディテックスとNEXTのように、

顧客購買行動の大転換の時代に・・・

出店だけに頼る成長ではなく、

いかに、既存店をスクラップ&ビルドで、
儲かる店舗、役目を果たせる店舗として残すか?
そして、ECと店舗を融合させ、いかに、
店舗を持っている強味を発揮できるか?

更に、構築したオンラインとオフライン(店舗)、そして物流網を・・・
いかに、更なる顧客購買行動の変化を先取りして、利便性の高いプラットフォームとして磨き上げるか?
ということでしょう。

ユニクロも、しまむらも店舗網を持ち、物流をコントロールできる「プラットフォーマー」としてのビジョンを描くごとができれば、
まだまだ国内での伸び代はありそうです。

さて、来年の2020年度のランキングですが・・・アメリカの大手アパレルチェーンはアメリカンイーグルを除いて、業態の成熟期~衰退期という局面とアマゾン・エフェクトもあり、不振業態の整理(バイアウト)、既存店スクラップの嵐です。
そこに2月以降の世界的なコロナショックがのしかかります。
来年は、ランキングが大きく変わることが予想されます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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いつもお読み頂きありがとうございます。

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May 18, 2020

百貨店アパレル大手、レナウンが民事再生法を申請

東証一部上場の老舗アパレル企業、レナウンが15日に民事再生法を申請し、
そのニュースは、週末から、業界のみならず、経済界を駆け巡りました。

厳密に言うと、同社自身ではなく、債権を持つ、子会社が申請したことや、
中国の親会社の役員による不服申し立ての可能性もあり、
民事再生法適用、スポンサー探しにあたっても、複雑な事情があることが日経新聞に詳しく書かれています。

レナウン経営破綻 社長「不在」、四半世紀の悲劇

かつて、ベストセラーになったビジネス本「誰がアパレルを殺すのか」の主旨は、

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①百貨店アパレルのライセンスビジネス依存と

②商慣習である委託販売(その後、消化仕入)によって、在庫所有権者自身(アパレル)が在庫および損益をコントロールしづらい構造が

90年代以降、百貨店および百貨店アパレルを時代遅れにし、ダメにした、とブログ筆者は読み取りましたが・・・

そのビジネスモデルによって日本一のアパレル企業であった、という過去の成功体験が強すぎて、
最もそこから抜け出せなかったメーカーの一つがレナウン社だったのではないか?と思います。

拙著「アパレル・サバイバル」(2019年2月)でも述べましたが、

90年以降、ファッションビジネスのカギとなる現場は

バイヤーと営業の商談の場(百貨店、量販店時代)から

2000年代には直営店の店頭(SPA、ファストファッション時代)へと移り、

今や、顧客のスマホの中(デジタルシフトの時代)にある

というように、10年単位で顧客行動とビジネスモデルを見直さなければならなかった、
ファッション流通市場が変貌した今となっては、再生はそう簡単ではないでしょう。

ファッション流通のジャーナリストである松下久美さんが今回の報道を受けて書かれている記事

民事再生法を申請したレナウン、30年間のリストラの歴史と、4つのタラレバを考える

の中でブログ筆者が一番、痛かったと思うのは、

最終的には400億円を投じたという、そもそも高額過ぎたアクアスキュータムの買収判断と、それを活かせなかったことですが

当ブログの過去(2013年)にアクセスをたくさん頂いた投稿

世界市場を勝ち抜くには布帛(ふはく)が重要

の中で、

多くのアパレルメーカーさんと80年代から90年代にかけてものづくりのお手伝いをさせて頂いた経験から述べさせて頂いたように、

同じアパレルメーカーと言っても、どんな品種、製造方法、採算の採り方が企業体質の根底にあるのか? 

そんな出自の違い、しみついたDNAもビジネススタイル、財務体質、企業の耐久性に表れるものだと思っています。

コロナショックは、あくまでも弾きがねのひとつに過ぎず・・・

これから、いままで溜まっていたもの、そして、いずれは下さなければならなかったさまざまな結論に覚悟して向かい合うことを各社に迫る時代の幕開けに過ぎないように思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 02, 2019

顧客が求める価格でどこまで品質、価値を上げることができるかにチャレンジする

ようやく梅雨が明けたところですが、夏のバーゲンもピークを過ぎ、
店頭の服の価格も在庫も乱れる時期ですね。

お盆を過ぎれば秋の新作プロパー品を店頭に並べ始めるところが増えますが、
当然、すぐに売れるわけではありません。

売れない理由を残暑のせいにするかも知れませんが、
そもそも立ち上がりの秋のプロパー価格が
夏のバーゲン価格よりも各段に高いわけで・・・

来店するお客さんたちは、気温以上にその価格差に対して、
拒絶反応を示していることも売れない大きな要因だと毎年感じるものです。

ですから、どんなに「いい商品」をつくって並べようが・・・
バーゲン価格商品を店頭から引き揚げてから
少なくとも2週間は間を置かないと秋物は売れ始めないというのが
長年、店頭現場や販売データを見てきて感じるところです。

7月29日の日経MJにワークマンの小浜社長の商品開発に関するインタビュー記事が掲載されていました。

記事は価格政策、プライスポイント(最多価格帯)の話から始まります。

(以下「   」内 引用)

小浜社長は「作業服屋としてのプライスポイントがある」と語り、

「Tシャツで最も売れるプライスポイント(最多価格帯)は500円、販売価格が1500円になると売上が急激に落ちる。」

「数を売りたいのだから当然プライスポイントを狙って行く」

「レインウエアーであれば数が売れるのは1900円、2900円、そこで差別化しようとしても限界がある。
 いくらまでならいけるかというと、過去のデータでは5800円ですごく(売上数)が落ちる。
 でも4900円だったら魅力があれば選んでもらえるギリギリのライン。
 じゃあその4900円でどこまで良い物ができるか挑戦したのが、『R006』という今売れているカッパなんです」

と続けます。

(以上 「  」内 引用)

 確かに、以前、ワークマンプラスの店頭で、このレインウエアーR006を手に取ったことがありますが、

 R006 透湿レインスーツSTRETCH

 名の知れたアウトドアブランドであれば20,000円は下らないだろうクオリティに感心をしたのを覚えています。

 今回の記事を読んで、

 当たり前のことかも知れませんが、顧客に支持されているチェーンというのは、

 ただ安さを追求するのではなく・・・

 品種別に顧客が求める価格、プライスレンジ、プライスポイントを分析・検証した上で、

 その設定に対してベストを尽くしているのだな。とあらためて感じたものでした。

 

 価格政策と言えば・・・

 2017年に拙著「ユニクロ対ZARA」の中国語翻訳版が中国本土で出版されたおかげで、昨年、今年と中国の大手、中堅アパレルチェーン幹部の方々向けの研修講師としてアパレルチェーン本社が集中する中国の杭州や広州に呼んで頂くことが多くなりましたが、

 丸2日間の研修の中で、聴講者から最も反応がよいコンテンツのひとつが ユニクロとZARAの価格設定に対する考え方です。

 中国では、「定倍率」と言って、

 原価の4倍とか、5倍とか、コストに一定倍率をかけて販売価格を設定することが多いようです。

 一方、ユニクロやZARAのような人気チェーンストアは、
 例え「ファッション」と言えども、

 品種別に顧客が自ブランドに対して求めているプライスポイント(最多価格帯)を把握し、商品開発の前にまず、売値=販売価格を先に決めます。(決め方はユニクロとZARAで違います)

 そのプライスポイントをお客様との暗黙の「約束価格」と定め、毎シーズン、ブラさない

 そして、その販売価格=プライスポイントの範囲内で、どうしたらお客さんに満足してもらえる品質や価値を実現しながら、企業側としても利益もしっかり残せるかを考えながら商品開発に入る

 という手順を原則としています。 

 言わずと知れた、チェーンストアの「プライスポイント戦略」です。

 もし、販売価格を定めずに、商品開発から先に入り、

 コストプラス(販売価格をコストの何倍にするか?)的に原価積み上げ式で販売価格を決めて・・・

 毎シーズン 作り手の都合でプライスポイント(最多価格帯)が変わる、

 時にはお客様に手が出しづらい、あるいは、
 
 ちょっと高くて迷わせてしまう価格になってしまう。

 原価がそうなったのだからしかたない、と決め込んで販売する。

 そうすると、顧客は期待よりも価格が高いので、手が出ない、

 企業は売上が芳しくないため、値下げを始め、ようやく顧客が納得する価格になった時に売れ始める

 顧客はすぐに値下げになると考え、ブランド側は値下げしても利益が取れる、原価率の低いもののつくり方を考える。

 そんなことを今でも繰り返しているアパレル専門店は中国に限らず、日本でも少なくないようです。

 これに対して、最初から顧客が望む、納得して買える価格設定をしてその制約の中でベストを尽くしながら商品開発を始めるチェーンの方が、断然コスパが良く感じられ、結果、値下げ総額は少なく済む、というのはZARAやユニクロなど、勝ち組チェーンストアが実証しているようです。

 今でも、タイムセールやクーポンやバーゲンセールなど値下げ販促施策に耐えるために安い原価(低原価率)でつくることを考え、
結果、商品の品質を下げて、値下げをしなければ売れない面(ツラ)の商品を店頭やオンラインに並べてしまう悪循環に陥っているブランドが絶えないようです。

 そうではなく、まずは、顧客が望む(アフォーダブル)価格を探り、その顧客との暗黙の「約束価格」で

 どれだけ良い商品をつくれるかにチャレンジしてみる。

 それこそが、今、サバイバル時代に求められている商品開発手法の王道ではないか、

 とあらためて感じる今日この頃です。

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。

 

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